目次
はじめに
この記事の目的
老犬が「ご飯を食べないのに水は飲む」「下痢をしている」といった状況は、多くの飼い主が直面する心配ごとです。本章では、この記事全体の目的と読んでいただくことで得られることを分かりやすくお伝えします。
対象となる症状
- 食欲が落ちている、または拒食する
- 水は飲むが固形のご飯を食べない
- 軟便や下痢が続く
- 活力の低下や元気がないと感じる
なぜ早めに気づくことが大切か
老犬は消化機能や免疫力が若い頃より弱くなります。そのため、食事が取れない期間が続くと栄養不足や体重減少、脱水につながりやすいです。また下痢は体の異常を示すサインで、放置すると悪化します。
この記事でできること
本記事では、老犬の食欲不振と下痢について考えられる原因の見方、水分摂取との関係、家庭でできる初期対応、そしてどのタイミングで獣医師に相談すべきかを順を追って分かりやすく説明します。状況に応じて早めの受診を検討する際の目安もお伝えしますので、ぜひ次章以降もご覧ください。
老犬の食欲不振と下痢の原因
概要
老犬は加齢で消化機能が落ち、腸内環境が乱れやすくなります。これが下痢や食欲不振の大きな原因です。ここでは主な原因を分かりやすく説明します。
1. 消化機能の衰え
年をとると胃や腸の動きが鈍くなり、消化酵素の分泌も減ります。その結果、消化しにくい食べ物で下痢になったり、食後に不快で食べたがらなくなります。例えば脂っこいものや大量の食事が負担になります。
2. 腸内環境の変化
善玉菌が減り、悪玉菌が増えると便の状態が悪くなります。抗生物質の使用や急な食事変更も腸内バランスを崩します。具体例として、フードを急に切り替えたときに下痢を起こすことがあります。
3. 食事内容と与え方
高脂肪や刺激の強い成分、量の急な増減が原因になります。食事の回数を増やして量を少なくする、消化に良いフードに変えるなどで改善することが多いです。
4. ストレス・環境の変化
引っ越しや来客、飼い主の不在などで緊張すると胃腸に影響します。腸は精神の影響を受けやすく、下痢や食欲低下を招きます。
5. 病気や薬の影響
腎臓病、肝臓病、内分泌の異常、腸の感染症や腫瘍などが原因で下痢や食欲不振が起きます。常用薬の副作用も考えられます。症状が続く場合は獣医師の診察が必要です。
水分摂取と下痢の関係
なぜ水分が重要か
老犬は体内の水分量が若い犬より少ないことが多く、下痢になると短時間で脱水に陥りやすくなります。水分は体温調節や栄養の運搬、老廃物の排泄に必要です。下痢のときは便とともに水分や電解質が失われるため、こまめな補給が必要になります。
脱水のサイン(家庭で見つけやすいもの)
- 口の中や歯ぐきが乾いている
- 元気がない、ぐったりしている
- 皮膚を軽くつまんで戻りが遅い(皮膚の弾力低下)
- おしっこの量が減る
これらの兆候が見られたら早めに対応してください。
家でできる水分補給の工夫
- 少量を頻回に与える:一度に大量に飲ませようとせず、こまめに与えます。
- 温度や容器を調整:冷たい水が苦手な子は常温、浅めの器にすると飲みやすくなります。氷を入れておやつにする方法もあります。
- ウェットフードやスープで補う:水分量が多い食事に切り替えると自然に摂取量が増えます。
- 無理に飲ませない:嫌がる場合は注射器(シリンジ)で少量ずつ与えますが、窒息に注意して慎重に行います。
電解質と市販の補液について
単なる水だけでなく、電解質を含む補液(人用の経口補水液や動物用の製品)を薄めて少量ずつ与えると効果的です。ただし、糖分や塩分が多い製品は慎重に使ってください。
受診の目安
- 下痢が24時間以上続く、または血が混じる場合
- 脱水のサインが見られる場合
- 食欲が著しく落ち、元気がない場合
これらの場合は獣医師に早めに相談してください。病院では点滴や検査で適切な処置を受けられます。
対処法
食事の見直し
食事内容を優先的に見直します。消化に配慮したシニア犬用フードを選び、脂肪が少なく高品質のたんぱく質、適度な繊維を含むものが望ましいです。急な切り替えは避け、7〜10日かけて少しずつ移行します。短期間の応急処置としては、茹でた鶏胸肉と白ごはん、またはかぼちゃ(缶詰のピューレ)を少量ずつ与えると便が落ち着きやすいです。人の食べ物や乳製品、脂っこいおやつは控えてください。
水分補給
下痢では脱水が心配です。少量ずつ何度も水を与え、飲めない場合は食事に水を加えて摂取量を増やします。市販の犬用電解質やハイポトニック飲料を使うと効率よく補給できます(使用前に表示や獣医に確認してください)。氷を舐めさせたり、ぬるま湯を用意するのも有効です。
獣医師への相談
下痢や食欲不振が24〜48時間以上続く、血便や嘔吐、著しい元気消失、脱水の兆候がある場合はすぐ受診してください。事前に便のサンプルや与えている食事の記録、服用薬を用意すると診断がスムーズです。獣医は検査で原因を特定し、点滴や処方食、薬(整腸剤や消化管の薬)を提案します。
その他の注意点
体重や排泄の回数・性状を記録し、変化を見逃さないようにします。人用の薬を安易に与えないでください。予防的な検診やワクチン、寄生虫駆除を定期的に行うと、下痢のリスクを減らせます。