犬用フード・おやつ

老犬の栄養補給で健康維持する食事の基本知識

はじめに

本資料の目的

本資料は、高齢犬(老犬)の栄養補給について、信頼できる情報をわかりやすくまとめたものです。老犬に必要な栄養素や消化しやすい食材、適切な市販フードやサプリメントの活用法、食欲低下時の対応、手作り食の注意点などを多角的に解説します。実践しやすいポイントを重視しました。

誰に向けているか

犬を長く一緒に暮らしてきた飼い主さん、介護に携わる家族やペットトリマー、獣医師からの助言を求める方にも役立ちます。専門用語は少なめにし、具体例で説明します。

使い方

各章は独立して読めます。食事の基礎から実践例まで順に読むと理解が深まります。すぐに試せる工夫や注意点を多く盛り込みました。

大切な心構え

老犬の体調は個体差があります。栄養管理は獣医師と相談し、少しずつ様子を見ながら変えてください。些細な変化も見逃さないように観察を続けましょう。

老犬に必要な栄養素と食事の基本

なぜ栄養が重要か

老犬は消化力や筋肉量が落ちます。栄養不足になると体重や体力がさらに低下します。適切な栄養で筋肉を守り、免疫や皮膚・被毛の健康を支えます。

主要な栄養素とその役割

  • 良質なタンパク質:筋肉維持に必須。鶏肉、白身魚、卵、豆腐など消化しやすいものを選びます。
  • 脂質:エネルギー源ですが量は控えめに。青魚のオメガ3は炎症を抑え関節に良いです。
  • 炭水化物:消化しやすい米やさつまいもでエネルギー補給。
  • ビタミン・ミネラル:免疫や代謝に関与。ビタミンEやB群、カルシウム・リンのバランスに注意します。

関節や抗酸化のサポート

グルコサミン・コンドロイチンやフィッシュオイルは関節の働きを助けます。抗酸化にはビタミンEが有効です。必要なら獣医と相談してサプリを活用します。

食事の基本ルール

  • 高栄養密度で少量を回数多めに与える。
  • 噛む力が弱ければふやかす・刻む・ペースト状にする。
  • 体重と被毛・筋肉の状態を定期的にチェックする。

注意点

新しい食材やサプリは少量から試し、体調変化があれば獣医に相談してください。

消化しやすい食材と与え方の工夫

はじめに

老犬は消化力が落ちます。食べやすく、胃腸に負担をかけない食材と調理法が大切です。ここでは具体的な食材と与え方の工夫を紹介します。

タンパク質(魚・肉)

  • 魚:タンパク質に加えカルシウムやDHA・EPAが豊富で、脳や認知機能の維持に役立ちます。骨は必ず取り除き、蒸す・煮るなど柔らかく調理します。
  • 肉:脂肪が少ない部位(鶏ささみ、鶏胸肉、赤身の牛肉など)を選びます。茹でるか蒸して脂を落とし、細かく裂くか挽いて与えます。

野菜の選び方と調理法

  • 推奨:キャベツ、かぼちゃ、さつまいも、にんじん、アスパラガスなど。ビタミンや食物繊維が摂れます。
  • 与え方:皮や硬い芯を取り、薄切りか細かく刻んで柔らかく茹でるか蒸します。ペースト状にすれば消化が楽になります。

発酵食品の活用

  • ヨーグルト(無糖・無添加)や納豆は腸内環境を整えます。少量から試し、下痢やアレルギー反応がないか観察します。

与え方の工夫

  • 食事は温かめ(体温より少し低め)で出すと嗜好性が上がります。
  • 固いドライフードはぬるま湯や出汁でふやかして柔らかくします。
  • 一度に多量を与えず、回数を分けて少しずつ与えると胃腸の負担が減ります。
  • ミキサーで滑らかにする、すり潰すなどで飲み込みやすくします。

注意点

  • 玉ねぎ、ネギ、チョコレート、ぶどうなど犬に有害な食品は絶対に与えないでください。脂肪分の高い食材や塩分・香辛料も避けます。
  • 新しい食材は少量から始め、体調の変化をよく観察してください。

市販フード・介護食・サプリメントの活用

市販のシニア用フードの特徴

シニア用は高齢犬の体に合う栄養バランスで作られています。総合栄養食の表示があれば、基本的な栄養はサプリなしで賄いやすいです。体重管理や腎臓、関節ケアなど用途別の商品も増えています。

タイプ別の選び方

  • ドライ:歯の状態が良ければ日常使いに便利。歯に負担があればふやかすと消化しやすくなります。
  • 半生・ウェット:食欲が落ちたときや水分補給に向きます。香りが強く食いつきが良いです。
  • 流動食(ペースト・スープ):飲み込みや嚥下が難しい犬に有効。使う前に獣医師と相談してください。

サプリメントの役割と代表成分

関節や脳のケア、心血管のサポートなど目的別に使います。よく使われる成分例:
- グルコサミン、コンドロイチン(関節)
- DHA・EPA(脳・炎症)
- CoQ10(エネルギー代謝)
- GABA、イチョウ葉(認知・落ち着き)

選び方と注意点

愛犬の年齢・既往症・薬の有無で必要性が変わります。過剰投与は逆効果になることがあるので、まず獣医師に相談しましょう。併用時は成分の重複に注意し、症状の変化を記録して様子を見てください。

導入と保管のコツ

新しいフードやサプリは数日かけて少しずつ切り替えます。保存はパッケージ表示に従い、湿気や直射日光を避けてください。

食欲低下・水分補給への対応

食欲低下の原因と観察ポイント

老犬は嗅覚や歯の問題、痛み、内臓の不調、認知症などで食欲が落ちます。まずは食べる量・回数・好き嫌いの変化、体重の変化、口臭やよだれを観察してください。脱水や発熱、嘔吐があれば早めに獣医に相談します。

食欲を刺激する具体的な工夫

  • 少量頻回で与える(1回量を減らし1日数回に分ける)。
  • フードを人肌程度に温めて香りを立たせる。お湯を少量かけるだけでも効果的です。
  • 硬いものが噛みにくい場合はふやかす、ペースト状にする。
  • 香りの強いウェットフードやトッピング(無塩スープ、蒸し鶏少量)を併用する。

水分補給の方法と注意点

  • フードをふやかす、ウェットフードやスープを取り入れる。水分の多いゼリーも使えます。
  • 犬用の電解質補助液を獣医と相談して使うと安全です。市販の人用スポーツドリンクは塩分が合わない場合があるので避けます。

寝たきりや極端に食欲が低下した場合

  • シリンジややわらかいスプーンで少量ずつ与える。無理に大量を押し込まず、ゆっくり与えて誤嚥を防ぎます。
  • 食事時は頭をやや高くして、首を伸ばさない姿勢にする。抱きかかえて寄りかからせると安全です。

観察と受診の目安

  • 24〜48時間で食事をほとんど取らない、脱水や元気消失、嘔吐・下痢が続く場合は受診を。体重減少や食べ方の急変も早めに相談してください。

食事管理のポイントと注意事項

原材料と成分表の確認

まず袋の表示を見てください。第一原材料が肉類であること、人工着色料や保存料が少ないことが望ましいです。粗タンパク・脂質・カロリーの量が、犬の体型や活動量に合っているかを確認します。AAFCOなどの栄養基準に適合している表示があると安心です。

カロリーと体重管理

年を取ると基礎代謝が下がりやすく、太りやすくなります。体重を月に一度は測り、太りすぎや痩せすぎを早めに見つけてください。フードの給餌量はパッケージを目安にしつつ、体重変化に合わせて調整します。

病気・体調に応じた調整

腎臓病、心臓病、糖尿病など持病がある場合は、タンパク質や塩分、糖質の調整が必要です。自己判断で大きく変えるのは避け、必ず獣医師と相談してください。

与え方と保存の注意

硬い食べ物が苦手ならふやかす、少量ずつ回数を増やすなど工夫します。フードは直射日光を避け、密閉して冷暗所で保存し、賞味期限を守ってください。

投薬との関係とアレルギー

薬と食事の時間帯で影響が出ることがあります。新しい食材を試すときは少量から始め、吐き気や下痢、かゆみが出たら中止し獣医へ連絡してください。

獣医師との連携

体調や血液検査の結果をもとに、適切な食事指導を受けると安全です。気になる変化は早めに相談しましょう。

手作り食のメリット・注意点

メリット

  • 消化しやすさと嗜好性の向上: 素材をやわらかく煮る、細かく刻むなどで胃腸にやさしくなります。好きな味や匂いに合わせて調整でき、食欲が回復しやすいです。
  • 原材料の管理がしやすい: 添加物や塩分を抑え、アレルギーに合わせた食材選びができます。硬さや水分量も調整しやすく介護に適します。

注意点

  • 栄養バランスの偏りに注意: カルシウムやビタミン、必須脂肪酸などが不足しやすいです。毎回完璧にするのは難しいので、獣医師と相談してサプリメントで補うと安心です。
  • 与えてはいけない食材: 玉ねぎ、にんにく、チョコレート、ぶどう・レーズンなどは中毒を招くため与えないでください。
  • 調理と保存の工夫: よく加熱して細かくし、塩や調味料は使わないでください。冷凍保存は小分けにし、再加熱は中心まで温めます。
  • 導入はゆっくりと: 新しい食事は少量から混ぜて慣らします。便の状態や体重、食欲を観察し、変化があれば獣医師に相談してください。

獣医師との連携

定期的な体重測定や血液検査で栄養状態をチェックします。目的(腎臓病、体重維持など)に合わせたレシピ作りを一緒に行うと安全です。

老犬栄養補給の実践例

はじめに

犬用スープやゼリー、流動食は水分と栄養を同時に補給でき、食欲が落ちた老犬に適しています。ここでは手軽に作れる例と使い方、注意点を具体的に示します。

簡単スープレシピ(鶏ささみスープ)

材料:鶏ささみ100g、水600ml、にんじん少量、かぼちゃ少量。作り方:全てを柔らかく煮て、ささみは細かくほぐし、野菜は潰してから漉す。味付けは不要です。冷ましてから小分けにして与えます。温めると香りが立ち食欲を刺激します。

ゼリー・ペーストの作り方

無味のゼラチンをだし汁で溶かし、容器で冷やし固めます。食べやすく切るか潰して与えます。ゼリーは水分補給に優れ、薬を包むのにも便利です。

流動食・ペーストの実践

市販の介護食を使うか、茹でた肉・野菜・ご飯をブレンダーで攪拌し、だしで濃度を調整します。栄養が偏らないよう、週に数回は主成分を変えます。飲み込みやすいと判断したら、少量ずつ頻回に与えて体重を保ちます。

脱水ケア用ゲルの活用

脱水が疑われる場合は獣医師の指示の下で専用品を使います。経口での補水が難しいときの短期対処として有効ですが、基礎疾患があれば必ず相談してください。

与え方の注意点

・温度はぬるめに。熱すぎると粘膜を傷めます。
・玉ねぎ、にんにく、塩分の多い調味料は厳禁。
・普段と違うものを与える際は少量から始め、下痢や嘔吐が出たら中止し獣医へ。
・薬を混ぜる場合は味や形を変えすぎないよう配慮します。

上手に組み合わせると、水分とカロリーを同時に補えます。愛犬の様子を見ながら無理なく続けてください。

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