犬用フード・おやつ

犬の栄養学で学ぶ健康維持と食事の基本ポイント

はじめに

この文書の目的

この文書は、犬の栄養学の基本をわかりやすくまとめたガイドです。毎日のごはんで大切な栄養や役割、年齢ごとの注意点、手作りごはんとドッグフードの選び方、避けるべき食材について順を追って説明します。

誰に向けているか

初めて犬を飼う方、栄養に不安がある方、手作りごはんを始めたい方に向けています。専門的な用語はなるべく避け、具体例を交えて丁寧に解説します。

読み方のポイント

各章は独立して読めますが、栄養バランスの理解には第2章と第3章の連携が役立ちます。疑問があれば獣医師や動物栄養士に相談してください。

大切にしてほしいこと

食事は見た目や嗜好だけで選ばず、栄養の質を優先しましょう。犬の体重、年齢、運動量に合わせた調整が長く健康を保つ鍵です。

犬に必要な栄養素 ― 5大栄養素と6大栄養素

見出しと概要

犬が健康に暮らすために特に大切な栄養は「たんぱく質」「脂質」「炭水化物(糖質)」「ビタミン」「ミネラル」の5つです。さらに「水」を加えて6大栄養素と呼ぶこともあります。

たんぱく質

筋肉や皮膚、免疫を作る材料です。鶏、牛、魚、卵などの動物性たんぱく質は消化・吸収が良く、必須アミノ酸を含みます。子犬や活動的な犬は特に必要量が増えます。

脂質

エネルギー源であり、皮膚・被毛の健康を保ちます。魚の油に含まれるオメガ3脂肪酸は炎症を抑え、ツヤを良くします。ただし過剰は肥満の原因になります。

炭水化物(糖質)

主にエネルギー源です。消化しやすいごはんやさつまいも、繊維質は腸の調子を整えます。犬は人ほど炭水化物を必須としませんが、適量は重要です。

ビタミン

代謝や免疫、視力などを調整します。ビタミンA、D、Eは脂溶性で過剰に注意、B群やCは水溶性で体外へ出やすいです。バランスよく取ることが大切です。

ミネラル

骨や歯を作るカルシウム、リン、体内の電解質バランスを保つナトリウム、カリウムなどがあります。特にカルシウムとリンの比率は重要です。

体の約60%を占め、消化や体温調節、老廃物の排出に不可欠です。新鮮な水をいつでも飲めるようにしましょう。

日々の食事では、これらを偏らせずに取り入れることが基本です。品質の良いたんぱく質と適切な脂質、ビタミン・ミネラルを含むバランスの良い食事を心がけてください。

各栄養素の役割と犬における特徴

たんぱく質

たんぱく質は筋肉や内臓、皮膚、被毛の材料になります。成犬では体重(除水分)の約50%を占め、成犬で18%以上、子犬で22%以上が目安です。良質な動物性たんぱく質は必須アミノ酸のバランスが良く、消化吸収も高いです。成長期や運動量の多い犬はより多く必要になります。

脂質

脂質は効率の良いエネルギー源で、細胞膜やホルモンの材料になります。皮膚や被毛の健康にも重要で、オメガ-6(例:リノール酸)やオメガ-3(例:EPA・DHA)のような必須脂肪酸は食事から摂る必要があります。適度に含めると毛艶や体温維持に役立ちます。

炭水化物

炭水化物は必須ではありませんが、消化の良い炭水化物はエネルギー源や便の調整に役立ちます。食物繊維は腸内環境を整え、血糖の急上昇を抑える助けにもなります。

ビタミン・ミネラル

これらは代謝や酵素の働きを助けます。ビタミンCは犬が体内で合成できますが、他のビタミンやミネラルは食事で補う必要があります。特にカルシウムとリンのバランスは成長期の骨の発育に重要で、偏りは骨疾患の原因になります。

水は生命活動の基本です。体温調整や栄養素の運搬、老廃物の排泄に欠かせません。新鮮な水をいつでも飲めるようにしておくことが大切です。

(各栄養素は互いに関係し合って働きます。バランスを意識した給餌を心がけてください。)

年齢やライフステージごとの必要量と注意点

全体の考え方

犬は成長や活動量、体調によって必要なエネルギーや栄養バランスが変わります。体重だけでなく「体型(ボディコンディションスコア)」を見て調整してください。

子犬(成長期)

  • タンパク質・エネルギーを多く必要とします。筋肉や臓器、骨が急速に作られるためです。
  • カルシウムやリンのバランスに注意。特に大型犬は過剰なカルシウムで骨の発育不良を招くことがあります。
  • 食事回数を1日3回以上に分け、急激な体重増加を避けます。

成犬(維持期)

  • エネルギーは子犬より少なめで、たんぱく質は良質なものを確保します。
  • 運動量に合わせてカロリーを調整。過食で肥満にならないよう定期的に体重を計ります。

シニア犬(高齢期)

  • 基礎代謝が下がるためカロリー過多に注意します。
  • 筋肉量維持のため良質なたんぱく質は確保しますが、消化しやすさも重視します。
  • 関節や心臓、腎臓の配慮が必要な場合があります。EPA・DHAやグルコサミンなどの補助を検討します。

妊娠・授乳期・運動量が多い犬

  • 妊娠後期と授乳期はエネルギーとたんぱく質を大幅に増やします。獣医と相談して段階的に増量します。

与え方のコツと注意点

  • 食事はゆっくり切り替え、一週間ほどかけて新しいフードにします。
  • 体重と体型を定期的に確認し、食事量を微調整します。
  • 病気や特別な状態がある場合は獣医に相談して個別に対応します。

手作りごはん・ドッグフードの選び方と注意点

ドッグフードの選び方

  • 「総合栄養食」と表示された商品を選んでください。これは主食として必要な栄養が基準を満たすことを意味します。
  • 成分表示を見て、主なタンパク源(肉や魚)が明記されているか確認します。原材料は前方に書かれたものが多く含まれます。
  • 年齢や体重に合ったライフステージ(子犬用、成犬用、シニア用)を選びましょう。
  • 保存性や賞味期限、メーカーの品質管理(ヒューマングレード基準や第三者検査)も参考になります。

手作りごはんのポイント

  • 栄養バランスを意識してください。主食だけで必要な栄養を満たすのは難しいため、獣医師や栄養士の指導を受けることをおすすめします。
  • 良質のタンパク質と適度な脂質を確保し、炭水化物は消化しやすいものを選びます。
  • ビタミン・ミネラルは不足しがちです。市販の犬用サプリを利用するか、指導のもとで補ってください。
  • 衛生管理を徹底し、食材は十分に加熱してから与えます。

注意点(共通)

  • 人間用の味付けは避けてください。塩分や香辛料、糖分は犬に負担をかけます。
  • チョコレート、玉ねぎ、ぶどうなど中毒になる食材は絶対に与えないでください。
  • 食事の切り替えは徐々に行い、体調や便の状態を確認します。

獣医師と相談しながら、犬に合った食事を選んでください。飼い主が気をつけることで、長く健康に過ごせます。

犬に与えてはいけない食材や栄養バランスのリスク

危険な食材と症状

  • チョコレート:テオブロミンが中毒を起こし、嘔吐・下痢・震え・痙攣や致命的なことがあります。少量でも体重の小さい犬は危険です。
  • ネギ類(玉ねぎ、にんにく、長ネギなど):赤血球を傷つけ、貧血を引き起こします。症状は元気消失や呼吸数の増加です。
  • ぶどう・レーズン:急性腎不全を起こすことがあり、少量で重篤になる報告があります。
  • キシリトール(人工甘味料):短時間で低血糖や肝障害を引き起こします。ガムや一部のお菓子に含まれます。
  • アルコール・カフェイン・生の肉や魚の一部(寄生虫や細菌のリスク)も注意が必要です。

誤食したときの対応

すぐに獣医に連絡してください。家で無理に吐かせず、摂取量や時間、食べた物の写真を伝えると診断が早まります。

栄養バランスのリスク

  • カルシウムとリンの過不足:成長期にカルシウム過多は骨の変形を招き、過少は発育不良に。成犬では両者の不均衡が腎臓や骨に負担をかけます。
  • タンパク質や脂肪の過剰:腎臓や肝臓に負担をかけ、肥満や膵炎の原因になります。既往症がある犬は特に注意してください。

食物繊維の扱い方

水溶性繊維は腸内細菌のエサになり便通改善に役立ちます。難消化性の繊維は便の容積を増やしますが、過剰だと栄養の吸収を妨げることがあります。さつまいも・かぼちゃなどを適量与えると良い例です。

実際の対策

市販フードは基準に沿っていますが、手作りやサプリを使う場合は獣医と相談してください。疑わしい物を食べたら早めの受診を心がけることが大切です。

まとめ ― 犬の健康を守るために大切なこと

  • はじめに:犬の健康は日々の食事から作られます。栄養の基礎を理解し、年齢や体格、活動量に合わせた調整が必要です。

  • 基本の心がけ:

  • バランスを優先する:たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルを偏らせないようにします。
  • 適正カロリー:肥満も栄養不足も病気の元です。体重を定期的に量り、増減をチェックします。

  • ライフステージ別の配慮:子犬は成長を支える高タンパク・高エネルギー、成犬は維持、シニアは消化にやさしい食事と関節ケアがポイントです。

  • 手作りと市販の使い分け:手作りは新鮮ですが栄養バランスに注意が必要です。市販フードは栄養基準に基づく製品を選び、表示を確認しましょう。

  • 避けるべき点:犬に有害な食材(玉ねぎ、チョコレート、ぶどう等)を与えないこと。極端なダイエットや一種類だけの食材に頼らないこと。

  • 健康管理の習慣:定期的な体重測定、便のチェック、必要なら血液検査を受けること。予防接種や寄生虫対策も含め、総合的に管理します。

  • 専門家との連携:疑問や不安があるときは獣医師やペット栄養の専門家に相談してください。症状があるときは自己判断せず受診することが安心です。

最後に:日々の小さな配慮が、愛犬の長く健やかな暮らしにつながります。食事は変化に気づく良い手がかりですから、変化を見逃さず、早めに対処しましょう。

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