犬用フード・おやつ

老犬の消化不良を理解し健康維持に役立てる方法

はじめに

目的

本書は、老犬の消化不良について分かりやすく整理したガイドです。原因、症状、関連疾患、食事や薬の影響まで幅広く扱い、日常の観察や対応に役立てていただくことを目的とします。

対象読者

獣医師だけでなく、普段犬の世話をする飼い主さんやトリマーなど、老犬の健康に関わる方すべてに向けています。専門用語は最小限に抑え、具体例を交えて説明します。

本書の構成と読み方

全7章で、基礎知識から具体的な症状、感覚機能の衰え、薬物療法まで順を追って解説します。まずは観察ポイントを押さし、その後に原因や治療法を確認すると実践しやすいです。例えば「食べムラ」や「口のにおい」など身近な変化を手がかりにしてください。

注意点

ここでの情報は一般的な説明です。気になる症状があれば早めに獣医師に相談してください。

老犬の消化機能低下の基本知識

消化機能は年齢でどう変わるか

老犬では胃や腸の働きが徐々に弱くなります。胃の動きが遅くなり食べ物の停滞が増え、消化酵素の分泌が減るため栄養吸収が下がりやすくなります。腸の粘膜も薄くなり、バリア機能が低下して敏感になります。肝臓や腎臓の働きも落ちるため、薬や老廃物の処理が遅れる点も重要です。

具体的に起こりやすい問題

  • 胃炎や消化不良
  • 腸の蠕動(ぜんどう)の低下による便秘や吸収不良
  • 腸が敏感になり下痢やガスが出やすい
  • 歯や口の問題で噛めずに飲み込みが悪くなる
    これらは単独で起きることもあれば、複数同時に起きて悪化します。

どんな症状に注意するか

食欲減退、嘔吐、下痢、腹部の張り、体重減少、便の変化(粘液や血が混じる)などが出ます。行動の変化や元気の低下も重要なサインです。重い症状が続く場合は早めに獣医師に相談してください。

飼い主ができる初歩的なケア

少量を回数多く与える、消化に優しいフードに変える、水分を十分に取らせる、歯のケアをする、薬の管理を慎重に行うことが有効です。定期検診で肝腎機能や体重の変化を確認し、早めに対応してください。

消化不良の主な原因

序文

老犬の消化不良は一つの原因だけで起きることは少なく、複数の要素が重なって症状を引き起こします。ここでは、日常で気づきやすい主な原因を具体例を交えてわかりやすく説明します。

腸胃機能の低下

年齢とともに胃腸の運動性や血流、消化酵素の分泌が減ります。結果として食べ物が胃に長くとどまりやすく、吐き気や腹部の不快感が出ます。例えば以前は問題なかったドライフードがもたれるようになるケースが多いです。

食べ方と特定の食材

早食いは空気を多く飲み込み、膨満やガスを招きます。対策は小さな食器や給餌パズルで「時間をかけて食べさせる」ことです。大豆や乳製品は消化しにくい場合があり、乳糖不耐症の犬では下痢を起こします。じゃがいもやさつまいもはでんぷんが多く、量が多いと胃にもたれることがあります。新しい食材は少量ずつ試してください。

口腔(こうくう)健康の問題

歯周病や抜けた歯、歯の痛みで十分に噛めないと、粗いまま飲み込んで胃に負担がかかります。硬いおやつや大きな塊は避け、柔らかく煮た食事やペースト状のフードを与えると負担を減らせます。

その他の要因

ストレスや環境の変化、薬の副作用、誤飲した異物や食物アレルギーも消化不良を引き起こします。持病がある場合は消化症状が悪化しやすいので注意が必要です。

日常でできる注意点

食事は回数を増やして少量ずつ与える、食材を変更したら記録をつけて反応を観察する、口腔ケアを定期的に行う、気になる症状は早めに獣医師に相談する、などの対策が有効です。

消化不良に関連する疾患

急性腸胃炎

老犬に多い消化不良の原因です。腐った食べ物を口にしたり、ゴミを漁ったり、脂っこい人間の食べ物を与えたりすると起こります。急なフード変更、食物アレルギー、ウイルスや細菌、寄生虫、ストレスも誘因です。嘔吐や下痢、元気消失が見られたら早めに休ませ、水分補給を心がけます。

肝臓・腎臓・膵臓の機能低下

これら臓器の働きが落ちると、栄養や老廃物の処理が滞り、消化不良や食欲不振を招きます。例えば慢性腎不全では口臭や多飲多尿、肝機能低下では黄疸や体重減少が見られます。血液検査で原因を調べることが大切です。

胃拡張・腸炎

ガスが溜まる胃拡張や腸壁の炎症(腸炎)は食欲低下や腹部膨満を引き起こします。激しい腹痛や腹部の張り、嘔吐を伴う場合は緊急受診が必要です。

異物閉塞と便秘

異物を飲み込むと腸が詰まり、嘔吐や排便困難になります。毛玉や骨片、プラスチック片が原因になることが多いです。便秘は便の量や硬さの変化で気付けます。

対応のポイント

・原因の特定に獣医の診察と検査が重要です。 
・家庭では脱水対策と安静を優先し、刺激物は避けます。 
・異物の誤飲や激しい症状がある場合は直ちに受診してください。

消化不良の症状と警告信号

主な症状

  • 食欲減退:いつも好むご飯を残す、食べる量が明らかに減る。例として、空腹そうにしているのに口をつけないことがあります。
  • 嘔吐:一度きりの吐き戻しと短期間で繰り返す嘔吐は意味が違います。嘔吐物に胆汁や血が混じる場合は注意が必要です。
  • 下痢:軟便から水様便、粘液や血の混入まで様子はさまざまです。回数が増えるほど脱水のリスクが高まります。
  • 腹部膨満(張り):お腹が膨れて硬くなる、触ると痛がる様子が見られます。

特に注意すべきサイン

  • 空腹なのに食べない(いつもは食べるのに急に食べなくなる)。
  • 嘔吐と下痢を同時に繰り返す場合。
  • 継続的な嘔吐(短時間に何度も、または24時間以上続く)。
  • 脱水症状(元気がなく、口や歯茎が乾く、皮膚の弾力が低下する)。
  • 血便、黒っぽい便、血の混じった嘔吐物。
    これらは消化器の深刻な問題や慢性疾患の兆候であり、速やかな受診が必要です。

家庭での観察ポイント

  • いつから、どのくらいの頻度で症状が出ているか記録してください。
  • 吐いた物や便の色・形・におい、量を写真で残すと診察で役立ちます。
  • 食事内容やおやつ、拾い食いの可能性、薬の投与歴を確認してください。
  • 水を飲む量や元気の有無、排尿の様子も観察してください。

獣医師に伝えると良い情報

  • 発症日時と経過(初めて見た時からの変化)。
  • 食べたもの・与えた薬・既往歴。
  • 吐いた・下した回数や写真。
    これらが診断を早め、適切な処置につながります。

緊急受診の目安

  • 意識が薄い、呼吸が苦しそう、激しい腹痛を示す場合。
  • 継続する嘔吐や止まらない下痢で脱水が疑われる場合。
  • 血が混じる場合や便が黒い場合。
    これらはすぐに獣医師の診察を受けてください。

感覚機能の衰退と食欲への影響

嗅覚の衰え

老犬は嗅覚が弱くなり、食べ物の香りを感じにくくなります。普段好む缶詰やドライフードでも興味を示さず、匂いで食べ物を探す行動が減ります。嗅覚低下は「まずそうに見える」だけでなく、食欲そのものの減少につながります。

味覚の変化

味を感じる細胞も年齢で衰えます。塩味や甘味の違いが分かりにくくなり、味付けが薄く感じることがあります。これによりご飯が単調に感じられ、食べる量が減ります。

行動と栄養への影響

食欲低下は摂取カロリー不足を招き、体重減少や筋肉量の低下につながります。胃腸の働きが弱いと消化吸収も悪くなり、悪循環に陥ります。

実践的な対処法

  • 温める:温めると香りが立ち、興味を引きます。少量ずつ温めて提供してください。
  • トッパーを使う:鶏ささみや低脂肪の缶詰など、匂いが強いトッピングを少し混ぜます。
  • 食事環境を整える:静かな場所で、落ち着いて食べられる器を用意します。
  • 少量頻回:一回量を減らし回数を増やすと負担が減ります。
  • 獣医へ相談:口内の痛みや嗅覚障害がないか確認し、必要なら栄養補助や検査を受けましょう。

感覚の衰えは見落としがちですが、早めに対応すれば食欲の改善につながります。したがって、日々の様子をよく観察してください。

薬物療法と慢性疾患の影響

薬が消化に与える影響

高齢犬は慢性疾患のため長く薬を飲むことが多いです。痛み止めや心臓の薬、利尿薬、ホルモン薬、抗てんかん薬などは味覚を変えたり、胃の不快感を招いたりします。吐き気、下痢、便秘といった消化の乱れが起きやすくなります。

味覚と食欲の変化への対応

薬で味を嫌がる場合、食事を温めて香りを立たせる、缶詰やふやかしたフードに変える、小分けにして与えるなど工夫します。おやつを少量混ぜて食べやすくする方法も有効です。

副作用の見分け方と記録

食欲低下や嘔吐、頻回の下痢が出たら日付や薬の名前、症状を記録します。症状が続く場合は自己判断で薬を止めずに獣医に相談してください。

獣医と相談すべきこと

薬の種類や量の見直し、別の薬への切り替え、吐き気止めや胃を保護する薬の追加、血液検査の定期実施などを相談します。複数薬を併用する場合は相互作用の確認が重要です。

家庭でできるサポート

少量頻回の食事、消化にやさしい食事への切替え、温かい食事で香りを出す、散歩や軽い運動で胃腸の動きを助けるといった方法を試してください。サプリを使う場合は必ず獣医に確認します。

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