はじめに
概要
本書は、犬の尿路結石の予防と改善を目的とした手作り食の情報をまとめています。尿路結石は種類によって原因や対策が異なります。本書では種類ごとの栄養管理のポイント、推奨食材、避けるべき成分、そして実際に作れるレシピを詳しく解説します。
本書の目的
犬の健康を食事で支える具体的な方法を提供します。獣医師の診断や薬が必要な場合でも、日々の食事でサポートする知識を身につけられます。
対象読者
初めて手作り食を作る飼い主さん、尿路結石で悩む犬のケアを始めたい方、獣医師の指導に沿って食事管理を行いたい方に向けています。
本書の使い方
各章で基礎知識から具体的な食材選び、レシピまで順に学べます。実践しやすいように分量や調理ポイントを丁寧に示します。
注意点
食事は一つのケア方法です。体調や検査結果に応じて、必ず獣医師と相談してください。生の食材やサプリの使い方にも注意が必要です。
犬の尿路結石ケアにおける手作りご飯の重要性
はじめに
尿路結石は食事内容と水分管理で経過が大きく変わります。手作りご飯は一頭ずつ状態に合わせて調整でき、予防や再発防止に有効な選択肢です。
手作りご飯の主な利点
- 水分量を増やしやすい:スープや煮汁を使って尿量を増やせます。
- 個体差に合わせる:嗜好や体重、既往症に応じた量や栄養配分に調整できます。
- 添加物を避けられる:市販食の余分な塩分や保存料を減らせます。
水分管理がしやすい理由
ウェットな食事やぬるま湯でふやかすなど、日々の水分摂取を自然に増やせます。尿が薄まると結石の形成リスクを下げやすく、膀胱炎の予防にもつながります。
栄養バランスの調整
タンパク質やミネラル(カルシウム、リン、マグネシウム)を意識して調整します。高タンパクすぎると一部の結石で悪影響なため、獣医師の指示に沿って量を決めましょう。野菜や炭水化物でカロリー調整し、過度な塩分は避けます。
実践上の注意点
- 療法食が必要かは獣医師の診断で決めること。手作りが適さないケースもあります。
- 段階的に切り替え、体重や尿検査をこまめに確認してください。
- 食材の保存や調理衛生に気を配り、栄養不足にならないように計画を立てましょう。
病院との連携
定期的な尿検査や血液検査で効果を確認し、必要なら処方食や薬と併用します。獣医師と相談しながら、安全で効果的な手作り食を続けてください。
尿路結石の種類と栄養管理のポイント
種類の概要
犬の尿路結石は主にストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石の二つに分かれます。ストルバイトはリンとマグネシウムが結合してできやすく、アルカリ性の尿で成長しやすいです。シュウ酸カルシウムはカルシウムとシュウ酸が結びついてでき、酸性・中性の尿でも形成されます。
ストルバイト結石の栄養管理ポイント
- リンとマグネシウムの過剰を避ける:肉や魚の一部、ミネラルの多いサプリに注意します。具体例はレバーや魚の骨ですが、完全に除く必要はなく量を管理します。
- 尿を酸性に保つ:クランベリーやビタミンCを使う例がありますが、効果や安全性は個体差があります。主治医と相談してから導入してください。
- 水分を増やす:ウェットフードやぬるま湯でふやかす、こまめに水を飲ませる工夫をします。水分増加は溶解を助けます。
シュウ酸カルシウム結石の栄養管理ポイント
- カリウムを意識する:カリウムは尿量を増やし、尿中でカルシウムと結合しにくくします。カリウムの多い食材はバナナやさつまいもなどですが、与え方は獣医と調整してください。
- カルシウム量の極端な制限は避ける:過度に減らすと逆に体内でのシュウ酸生成が増えることがあります。バランスを重視します。
- 水分確保が重要:量をしっかり増やすことで結石形成を抑えます。
実践的な注意点とモニタリング
- 食事変更は段階的に行い、体重や排尿の回数、血尿の有無を観察します。
- 長期間の栄養管理は獣医と連携してください。薬や特殊療法が必要な場合もあります。
- 手作り食にするときは成分の過不足が起こりやすいので、レシピは獣医や栄養士の指導を仰ぎましょう。
推奨される食材と避けるべき成分
推奨される食材
- 鶏肉(むね肉・ささみ)
- 脂肪が少なく消化しやすいので主たんぱく源に向きます。茹でるか蒸すのがおすすめです。
- 鶏レバー
- 鉄分やビタミンが豊富ですが、与え過ぎに注意。週に少量を目安にしてください。
- 生卵
- タンパク質と脂溶性ビタミンを補えます。鮮度と衛生に注意し、子犬や高齢犬は軽く加熱(半熟程度)すると安全です。
- 野菜(ブロッコリー、小松菜、にんじん、ピーマン、白菜、たけのこ)
- 食物繊維やビタミン源になります。細かく刻むか短時間蒸して消化を助けます。
- 穀類(白米、玄米、うどん)
- エネルギー源として使いやすいです。白米は消化が良く、玄米はミネラルが多めなので量を調整します。
- わかめ
- ミネラルや食物繊維を補えますが、与え過ぎるとミネラル過剰になることがあるため少量にします。
- バナナ、無糖ヨーグルト
- バナナはカリウム源、無糖ヨーグルトは腸内バランス維持に役立ちます。量を守ってください。
避けるべき食材・成分
- 豚肉・牛肉・羊肉
- ヒト用の脂分やミネラル量が高めで、尿路結石ケアでは避けることが多いです。脂肪が多いと体重管理もしにくくなります。
- マグネシウムとリンの過剰摂取
- 結石の種類によってはこれらの過剰が悪化要因になります。サプリや一部の魚介、加工食品に注意してください。
- 塩分・調味料
- 余分な塩分は腎臓に負担をかけるため、無添加で調理します。
調理と与え方の注意点
- 食材はよく加熱して雑菌を減らすか、鮮度管理を徹底します。
- 肝臓や海藻は少量にとどめます。長期間続けて大量に与えないでください。
- サプリやミネラル強化フードは獣医師と相談して使用します。
具体的な手作りレシピ集
レシピ1:レバーごはん(ストルバイト結石対応)
材料:とりレバー、たけのこ、にんじん、きゅうり、乾燥わかめ、白米、水、えごま油
作り方:1) とりレバーは一口大に切り、軽く下ゆでして血合いを取ります。2) たけのこ、にんじんは薄切り、きゅうりは薄めの輪切りにします。3) 白米を水とともに鍋で煮て、野菜とレバーを加えます。4) 火が通ったらわかめを入れ、軽く混ぜてアクを取ります。5) 粗熱を取り、食べる直前にえごま油を少量かけます。
注意:味付けはしません。わかめは少量にして塩分過多を避けます。
レシピ2:ストルバイト結石ケア用バランス食(体重4kg成犬1日分)
材料:生卵、鶏レバー、炊いた白米、うどん、ブロッコリー、ピーマン、バナナ、サラダ油、サプリメント
作り方:1) うどんは食べやすい長さに折ります。2) 卵は炒り卵にし、サラダ油は少量だけ使います。3) 鶏レバーと野菜は柔らかくなるまで煮ます。4) 炊いた白米、うどん、卵、煮た材料を混ぜ、冷めたら獣医指定のサプリメントを加えます。
注意:一日量を守り、サプリメントは獣医指示に従ってください。
レシピ3:納豆と玄米のご飯
材料:納豆、たけのこ、白菜、赤ピーマン、玄米、粉チーズ、オリーブオイル
作り方:1) 玄米は炊いておきます。2) たけのこ、白菜、赤ピーマンは柔らかく煮ます。3) 玄米に煮た野菜と納豆を混ぜ、粗熱を取ってから粉チーズとオリーブオイルを少量混ぜます。
注意:納豆は消化を見ながら少量から与えてください。
レシピ4:バナナヨーグルト(シュウ酸カルシウム結石対応)
材料:無糖ヨーグルト、バナナ
作り方:1) 無糖ヨーグルトを器に入れ、輪切りにしたバナナを添えます。2) 冷たすぎない温度で与えます。
注意:果物は与え過ぎないようにします。