目次
はじめに
本書の目的
本資料は、老犬に適した手作りご飯について分かりやすくまとめたガイドです。とくに野菜を上手に取り入れ、消化や体調の変化に配慮した食事作りのポイントを丁寧に解説します。毎日の食事で元気を支えたい飼い主さんに向けた内容です。
対象となる犬と飼い主さん
高齢期に入り食欲や消化が変わってきた犬、体重管理や腎臓・肝臓のケアが必要な犬、手作り食を始めたい方に適しています。獣医師の診察を受けている方は、その指示に沿って調整してください。
本書で扱うこと
- 野菜を中心にした栄養バランスの考え方
- 老犬におすすめの野菜とその特性
- 比率や調理法(消化に優しい調理)
- 実践的なレシピ例(シンプル・玄米・お粥)
注意点
個体差がありますので、体調や既往症は必ず確認してください。与えてはいけない食材(ネギ類・チョコレート・ぶどう・アボカドなど)には特に注意しましょう。初めての食材は少量から試し、変化があれば獣医師に相談してください。
この章以降で、具体的な栄養配分や調理のコツ、使いやすいレシピを順にご紹介します。どうぞ無理なく取り入れてください。
老犬向け手作りご飯の基本的な考え方
なぜ手作りが向くのか
年を取ると消化力や筋肉量が変わります。手作りなら素材を選びやすく、消化しやすい食材や高品質の動物性たんぱくをしっかり使えます。味付けを薄めにして水分を多めにすると、食べやすくなります。
基本の優先順位
- たんぱく質:鶏肉、白身魚、卵を中心に。筋肉を維持します。
- 炭水化物:おかゆ、じゃがいも、さつまいもなど消化しやすいものを控えめに。
- 野菜:にんじん、かぼちゃ、ほうれん草などでビタミンと食物繊維を補う。
- 水分:水分量を増やして飲み込みやすくする。
調理の工夫
- 調理時間を短くするために、肉はまとめて茹でて小分け冷凍します。
- 野菜は柔らかく煮て、刻むかすり潰すと食べやすくなります。
- 塩・香辛料は使わず、だしは薄めにするか使わないでください。
注意点と観察
- 体重や便の状態、食欲を日々確認してください。
- 糖尿病や腎臓病など持病がある場合は、必ず獣医に相談してください。
- 新しい食材は少量から試し、アレルギー反応を観察してください。
栄養バランスと食材の割合
基本の割合
犬の手作りご飯では、タンパク質:野菜:炭水化物=1:1:0.5~1を基本の目安にします。肉や魚を主にし、同量の野菜を取り入れ、炭水化物は体格や活動量に合わせて半分〜同量に調整します。
簡単な目安(家庭向け)
調理を簡単にするなら、肉7割・野菜3割の組み合わせが分かりやすいです。家にある大根、白菜、ブロッコリーなどを自由に組み合わせて構いません。大根の代わりに人参やじゃがいも、白菜の代わりにキャベツも使えます。
食材の選び方と注意点
肉:鶏、豚、牛、魚などをローテーションすると栄養が偏りにくくなります。内臓(レバーなど)は栄養豊富ですが、与えすぎに注意し、全体の約10%以内に抑えると安全です。
野菜:繊維やビタミン源として重要です。よく火を通すと消化しやすくなります。玉ねぎは犬に有害なので必ず避けてください。
炭水化物:白米、玄米、さつまいも、じゃがいもなど。肥満気味なら量を減らして調整します。
体調や体重に合わせた調整
肥満や食べ過ぎが気になる場合は炭水化物を減らし、低脂肪の肉や野菜を増やします。便秘や消化不良があるときは、繊維の多い野菜や加熱の具合を見直すと改善することがあります。カルシウムなど微量栄養は必要に応じて獣医と相談してください。
おすすめの野菜食材と特性
キャベツ
食物酵素やビタミンCが豊富で、消化の助けになります。芯は硬いので取り除き、細かくみじん切りにして短時間茹でるか蒸してから冷まして与えてください。ガスがたまりやすい子もいるので、初回は少量から様子を見ます。
アスパラガス
ビタミンや食物繊維が含まれます。筋が多いので下処理をして、先端は柔らかくなるまで茹でます。硬い茎は刻んで使うと食べやすくなります。塩や調味料は使わないでください。
ニンジン
βカロテンが豊富で視力や皮膚の健康に良いです。生でも加熱でも与えられますが、老犬には薄切りかすりおろして消化しやすくしてください。糖分は天然のものですが多量は避けます。
カボチャ
食物繊維とビタミンが多く、便の調整に向きます。皮と種は取り除き、柔らかくなるまで煮るか蒸してから与えます。量を守れば栄養補助になります。
調理と与え方のポイント
・必ず無塩・無油で調理する。
・大きさは刻んで消化しやすくする。
・初めては少量から始め、便や元気を確認する。
・ネギ類、アボカドなど犬に有害な食材と一緒にしない。
これらの野菜は、肉や穀物と組み合わせて栄養バランスを整えると効果的です。
実践的なレシピ例(1)- 基本的なシンプル組み合わせ
はじめに
ここでは老犬に優しい、簡単で作りやすい3つのレシピをご紹介します。味付けは控えめにして、柔らかさを重視してください。
1. 野菜ビーフスープ
- 材料(2〜3日分・小型犬向け): 牛薄切り肉100g、人参中1/2本、じゃがいも小1個、キャベツ葉2枚、水400ml
- 作り方: 材料を食べやすい大きさに切る。鍋に水を入れて沸かし、肉と野菜を入れて弱火で20〜30分煮る。具が柔らかくなったら火を止め、粗熱を取ってから犬用に取り分ける。
- ポイント: 塩は加えない。汁ごと与えると水分補給になります。歯が弱い子は具を潰してください。
2. 魚と野菜の焼きパック(カレイや鯛)
- 材料: 白身魚切り身1枚、じゃがいも小1個、人参少量、オリーブオイル小さじ1
- 作り方: アルミホイルに薄切り野菜と魚を並べ、オリーブオイルを少量かけて包む。180℃のオーブンで20分ほど焼き、骨があれば取り除いてから与える。
- ポイント: 骨は必ず取り除く。皮や脂が気になる場合は取り除いてください。
3. サーモンと野菜のピューレ
- 材料: サーモン切り身60〜80g、じゃがいも1/2個、ブロッコリー少量
- 作り方: サーモンはオーブンまたはフライパンで中まで火を通す。じゃがいもとブロッコリーを柔らかく茹でて、サーモンと混ぜ潰してピューレ状にする。
- ポイント: 生は避け、骨を完全に取り除く。脂が多い場合は少量に抑えてください。
保存と与え方のコツ
作りすぎたら小分けして冷凍保存し、与える前に自然解凍か弱火で温める。人間用にする場合は犬分を取り分けてからコンソメ等で味付けしてください。食後に体調が変わったらすぐに獣医に相談してください。
実践的なレシピ例(2)- 玄米を使ったご飯
材料(小型犬1〜2食分の目安)
- 玄米:100g(洗って30分浸す)
- サーモン(皮を取り一口大):80g
- シメジやマイタケ:50g(ほぐす)
- 水:玄米の目安量+少し(炊飯時の調整用)
下ごしらえ
- 玄米を洗い、30分ほど水に浸しておきます。これで柔らかく炊けます。
- サーモンは皮と骨を取り、食べやすい大きさに切ります。骨は危険なので必ず除去してください。
- キノコは小房にほぐします。
作り方
- 鍋に浸した玄米と水を入れ、サーモンとキノコを上にのせます。
- 中火で蓋をして加熱し、沸騰したら弱火にして15〜25分ほど炊きます(玄米の硬さで調整)。
- 火を止めて5分蒸らし、全体を軽く混ぜて粗熱を取ります。
与え方のコツ
- 人肌程度に冷ましてから与えてください。熱いと口内を傷つけます。
- 初めての食材は少量ずつ与え、胃の様子を確認してください。
栄養と効果
- サーモンの良質な脂は皮膚や毛並みを整え、老化対策にも役立ちます。
- キノコは低カロリーで食物繊維があり、体重管理に向きます。
- 玄米はビタミンやミネラルが豊富ですが、消化に時間がかかるため柔らかく炊くと食べやすくなります。
代替と注意点
- 白米や米麹を使っても構いません。白米は消化が良く、米麹は風味が優しいです。
- 塩や調味料は不要です。味付けは犬の健康に悪影響を及ぼすことがあります。
- 持病や特別な食事制限がある場合は獣医師に相談してください。
実践的なレシピ例(3)- お粥ベースのご飯
材料(1回分の目安)
- 米:30g(小型犬)〜150g(中型犬)
- 水:米の7〜10倍(柔らかめが好まれる老犬向け)
- 鶏むね肉、かぼちゃ、人参など:お粥全量の約1割を目安に細かく切る
作り方
- 米を軽く洗う。鍋に米と水を入れる。
- 沸騰したら弱火にして30〜60分煮る。とろとろに柔らかくなるまで煮てください。
- 別鍋で具材を柔らかくなるまで煮て、細かく刻むかほぐす。
- お粥と具材を混ぜる。滑らかにしたい場合はブレンダーで軽く撹拌してもOKです。
与える量の目安
- 小型犬:30〜60g
- 中型犬:150〜250g
犬の体重や活動量で調整してください。
注意点・保存
- 味付けは不要。塩や調味料は与えないでください。
- アレルギーがある食材は避ける。
- 保存は冷蔵で2〜3日、冷凍なら小分けして1か月程度。
ポイント:柔らかさと温度に注意し、飲み込みやすくしてから与えてください。