はじめに
目的
犬が下痢を起こしたとき、最優先は「回復を助けること」と「悪化を防ぐこと」です。消化に負担をかけない食事を少量ずつ、回数を増やして与えることで腸の負担を軽くし、脱水や栄養不足を防ぎます。本章では基本の考え方と注意点をやさしく説明します。
基本の考え方
・一度に多く与えず、少量をこまめに与えます。胃腸を休ませずに安定させるためです。
・味付けや刺激の強い食べ物は避け、やさしい食材を選びます。具体的な食材は第3章で詳しく説明します。
・急に普段の食事に戻さないこと。徐々に戻すと体が慣れやすいです。
すぐに受診が必要なサイン
血便、血の混じった嘔吐、ぐったりして水も飲まない、発熱、子犬や高齢犬の場合は早めに動物病院に相談してください。
この先の構成
第2章で与え方の手順、第3章でおすすめ食材、第4章で避けるべき食品、第5章で水分補給のポイントを順に解説します。普段のケアに役立つ内容です。
食事の与え方
犬が下痢をしたときは、食事の与え方を工夫して胃腸への負担を減らすことが大切です。ここでは具体的な手順と注意点をわかりやすく説明します。
基本の与え方
普段の食事量をおおよそ半分に減らし、1回の量を少なくして回数を増やします。たとえば朝晩2回の子は、量を半分にして4回に分けると負担が軽くなります。便の状態や元気さを見ながら、数日かけて調整してください。血便や嘔吐、ぐったりが続く場合はすぐに獣医へ相談しましょう。
回数と量の目安
小型犬:1回量を半分にして4〜6回に分ける
中型犬:同様に半分量を3〜4回に分ける
大型犬:一度の量を減らし1日あたり回数を増やす
体重や個体差で変わりますから、犬の様子を優先して判断してください。
ドライフードのふやかし方
ぬるま湯を使ってふやかすと消化に優しくなります。ぬるま湯をかけて5〜10分置き、やわらかさを確認してから与えてください。味付けや塩分は加えないでください。ゆでたささみや鶏の煮汁を少量混ぜると食いつきが良くなることがあります。
元気で食欲がある場合の対応
元気があり食べたがる場合は、完全に食事を止める必要はありません。軽い下痢なら量を減らして消化に良いものを少量ずつ与え、改善を待ちます。療法食があれば獣医の指示に従ってください。
注意点
急に食事を止めたり、自己判断で薬を与えたりしないでください。食べたものや便の状態を記録すると獣医に伝えやすくなります。水分はこまめに与え、脱水に注意してください。
おすすめの食材
高たんぱくで低脂質の食材
白身魚(タラやスズキなど)、鶏むね肉、鶏ささみはおすすめです。消化が良く脂肪が少ないため、下痢で弱った胃腸に負担をかけにくいです。皮や余分な脂は取り除き、骨がないものを使ってください。
食物繊維が豊富な食材
さつまいも、かぼちゃ、キャベツ、やわらかく煮たキノコ類(しいたけやまいたけなど)は腸の調子を整えます。さつまいもとかぼちゃは茹でてつぶすと与えやすく、キャベツは細かく刻んで火を通してください。
調理のポイント
素材は必ず加熱して与えます。味付けはせず、油も使わないでください。柔らかく煮るか蒸して、犬が飲み込みやすい大きさに切ります。初めて与える食材は少量から始め、様子を見ながら量を増やします。
与える量と頻度
下痢のときは一度に多く与えず、回数を分けて少量ずつ与えてください。普段の食事量の7〜8割を目安にし、体重や年齢に合わせて調整します。症状が改善しない場合は獣医師に相談してください。
注意点
加工品や塩分の多いもの、香辛料は避けます。キノコは必ず食用種を使い、野生のものは与えないでください。新しい食材を追加した際はアレルギー反応にも注意してください。
避けるべき食べ物
はじめに
消化に負担をかけやすい食べ物は、体調不良や胃腸のトラブルを招きやすいです。ここでは具体的な種類と理由、代わりに選べるものや注意点を分かりやすく説明します。
1. 脂肪分の多い食材(揚げ物・ベーコンなど)
揚げ物やベーコン、脂身の多い肉は消化に時間がかかります。摂りすぎると胃もたれや下痢を招きやすいです。具体例はフライドポテト、天ぷら、ラードを使った料理など。代替としては蒸す・茹でる調理や、鶏胸肉や白身魚のような低脂肪の食材を選んでください。
2. 乳製品(牛乳・チーズ)
牛乳や濃厚なチーズは脂肪分と乳糖のため消化が重く感じることがあります。乳糖不耐症の方や消化力が弱いと、腹痛や下痢を起こす場合があります。ヨーグルトなど発酵食品は比較的消化しやすいですが、量は控えめにしてください。
3. 香辛料の強い料理(唐辛子・スパイス類)
唐辛子や胡椒、カレーなど刺激の強い香辛料は胃を刺激しやすいです。胃痛や胸やけ、胃酸過多の原因になります。味付けは薄めにし、香り付けはハーブ類で代用すると負担が減ります。
4. 硬い食べ物・乾燥したもの(クッキー・ジャーキー)
硬いクッキーやジャーキーは噛みにくく、のどや歯に負担をかけます。消化にも時間がかかるため、体調が優れないときは避けましょう。どうしても食べる場合は細かく砕くかよく噛んで少量ずつにしてください。
5. 加工品(スナック・ソーセージ・缶詰)
加工品は塩分や保存料、添加物が多く含まれます。これらは胃腸に負担をかけ、長期では体調を崩す原因になり得ます。成分表示を確認し、できるだけ手作りや自然に近い食品を選んでください。
注意点と実践的な対策
・新しい食品は少量から試し、体の反応を観察してください。
・調理は油を控えめにし、蒸す・茹でるを優先してください。
・外食やお弁当は成分表示が分かりにくいので、控えめにするか具材を選んでください。
上記を意識すると消化の負担を減らせます。体調に合わせて無理せず選んでください。
水分補給
重要性
新鮮な水を常に用意することは、体の基本です。水分は消化や体温調節、老廃物の排出に関わります。水が不足すると元気がなくなり、回復が遅れます。
常に飲めるようにする工夫
- 清潔な容器を使い、こまめに水を交換します。朝晩のひと手間で飲みやすさが変わります。
- 家の中に複数の水飲み場を用意すると、飲む回数が増えます。
- 飲み口の位置や容器の素材を変えると飲みやすくなることがあります。
嘔吐があるときの対応
嘔吐がある場合は、まず嘔吐が完全に治まるのを待ちます。落ち着いたら少量ずつ与えます。例えば小さなスプーンや注射器で数口ずつ、5〜10分おきに様子を見ながら与えてください。急に大量を与えると再び吐く恐れがあるため控えます。
水以外の選択肢と注意点
- 薄めたスープや市販の経口補水液は、脱水が心配なときに有効です。濃すぎる味付けは避けます。
- 甘いジュースやアルコール、カフェイン入り飲料は与えないでください。ペットには牛乳が合わないことが多いです。
観察ポイントと受診の目安
口の中や皮膚の乾き、尿の量や元気のなさを確認します。水を飲めない、ぐったりしている、嘔吐や下痢が続く場合は早めに受診してください。