はじめに
目的
この章では、本書の目的と読み方を簡単にお伝えします。本書は、ドッグフードの主な材料とそれぞれの役割、栄養成分、添加される機能性成分、表示の見方、選び方の目安を分かりやすく整理したガイドです。専門用語を最小限にし、具体例を交えて説明します。
誰に向いているか
- 初めてドッグフードを選ぶ飼い主さん
- 今使っているフードの成分が気になる方
- 愛犬の健康管理に役立てたい方
本書の構成と読み方
全6章で構成します。第2章以降で、肉・魚などのタンパク源、穀類、野菜・果物、油脂類、ビタミン・ミネラル類、機能性成分を順に解説します。まずは材料の特徴を押さえ、その後に表示の読み方と選び方の目安に進んでください。
読むときのポイント
成分表示だけでなく、原材料の順や配合のバランスを見ると選びやすくなります。本書を通じて、普段の選択に自信を持てるようになることを目指します。
主な原材料
動物性タンパク質(肉・魚・卵)
犬や猫の体を作る主役です。鶏肉、牛肉、豚肉、魚、卵などが当てはまり、筋肉や内臓、被毛、免疫の材料になります。高品質な動物性たんぱく質はアミノ酸バランスが良く、成長期や回復期の栄養に重要です。アレルギーがある場合は原料の種類を確認してください。
穀類・イモ類(エネルギー源)
米、大麦、トウモロコシ、サツマイモなどは主にエネルギーを供給します。消化しやすい炭水化物は日常の活動や体温維持に役立ちます。穀類の割合が高いとエネルギー中心の食事になりやすいので、運動量や体重管理に合わせて選びます。
野菜・果物(ビタミン・ミネラル・食物繊維)
ニンジン、カボチャ、ほうれん草、リンゴなどはビタミンやミネラル、食物繊維を補います。消化器の調子を整えたり、皮膚や被毛の健康を支えたりします。素材は加熱や加工で吸収が良くなることがあります。
その他の原材料(脂質・補助成分)
油脂は効率の良いエネルギー源で、皮膚や被毛のツヤに寄与します。ミネラルやビタミンの混合、保存料や酸化防止剤なども原材料に含まれることがあります。成分表を見て、不要な添加物が過剰でないか確認すると安心です。
栄養成分としての材料
はじめに
成分表にはタンパク質、脂質、炭水化物、粗繊維、灰分(水分とは別)などがパーセンテージで並びます。これらは食品が体にどんな役割を果たすかを示します。
タンパク質
役割:筋肉や臓器、皮膚・毛などの材料になります。免疫にも関わります。
例:鶏肉や魚、豆類などが多く含みます。%の高さで量は分かりますが、良質かどうかは原材料名(動物性か植物性か)も確認してください。
脂質
役割:エネルギー源で、脂溶性ビタミンの吸収や皮膚・細胞の健康を支えます。魚油や植物油が代表的です。脂質が高いとカロリーも高くなります。
炭水化物と粗繊維
炭水化物:すばやく使えるエネルギー源です。穀物やイモ類に多く含まれます。
粗繊維:腸の働きを助けます。多すぎると消化吸収を妨げることがあります。
灰分(ミネラル)
カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄などが含まれます。骨や歯の形成、血液や神経の働き、筋肉機能に重要です。特にカルシウムとリンはバランスが大切です。
水分
含水量が高いと保存性や食べごたえが変わります。ウェット製品は水分が多く、ドライ製品と単純比較すると数字の見方が変わります。
実用的な見方のヒント
・パーセンテージは量の目安です。配合原料を見ると中身の質が分かります。
・ミネラルの過不足は健康に影響します。極端に高い数値や偏りに注意してください。
・ドライとウェットは水分の差を考えて比較すると分かりやすいです。
添加される栄養・機能性成分
概要
ペットフードや健康補助食品には、基本の原材料に加えて栄養や機能性を補う成分が添加されます。目的に応じてビタミン、アミノ酸、ミネラル、さらに関節や腸内環境をサポートする成分が使われます。
ビタミン類(A・B群・C・D・E・K)
- ビタミンA:視覚や皮膚の健康を保ちます。過不足で問題が出ます。例:魚肝油に含まれる。
- B群:代謝を助け、エネルギーを作ります。疲れやすさに影響します。
- ビタミンC:抗酸化や免疫に関与します(犬では体内合成能がある場合も)。
- ビタミンD:カルシウムの吸収を助け骨を強くします。
- ビタミンE:抗酸化で細胞の健康を守ります。
- ビタミンK:血液の凝固に関係します。
アミノ酸・タンパク質関連
必須アミノ酸は筋肉や被毛の材料です。猫にはタウリンが必須で、欠乏すると目や心臓に影響します。L-カルニチンは脂肪代謝を助ける例です。
ミネラル(例:リン酸カルシウム、硫酸鉄)
- リン酸カルシウム:骨や歯の主要成分です。
- 硫酸鉄:貧血予防に使います。
亜鉛やマグネシウムも皮膚や神経に重要です。
関節・腸内サポート成分
- グルコサミン・コンドロイチン:軟骨の材料で、関節の健康維持に使います。特に高齢のペットに多く配合されます。
- 乳酸菌(プロバイオティクス)・オリゴ糖(プレバイオティクス):乳酸菌は腸内で善玉菌を増やし、オリゴ糖はそれを育てます。例:ラクトバチルス属、フラクトオリゴ糖。
添加時の注意点
成分は目的に応じて役立ちますが、過剰摂取や相互作用のリスクがあります。特にビタミンAやミネラルは過剰が問題になります。持病がある場合や特異な栄養要求がある場合は、獣医や専門家に相談してください。
表示を見るときのポイント
原材料欄の基本
原材料は使用量が多い順に並びます。いちばん先にあるものが主原料です(例:鶏肉、大麦、玄米など)。まずは先頭の素材を確認しましょう。
肉や魚の表記に注目
「肉類」「動物性たん白」など曖昧な表記より、鶏肉・牛肉・鮭など具体的に書かれた商品が中身をイメージしやすく安心です。複数の肉が混ざる場合は具体名が先に来ているか見てください。
割合表示(%)の見方
パーセント表示や「肉○%」とあれば、どれだけ使われているか分かります。メイン素材が先頭でも割合が低いと期待と違う場合があります。単一素材名の後に調味料や添加物が続く形が理想です。
水分や副原料に注意
「チキンミール」「副産物」といった表記は原料の一部を示します。缶詰やウエットは水分が多く見えるため、たん白や脂質の保証数値(成分表)も合わせて確認しましょう。
添加物や栄養成分表示
保存料や着色料が入っているか、ビタミン・ミネラルがどの程度補強されているかは表示で分かります。目的(体重管理、アレルギー対策など)に合った成分が入っているか確認してください。
その他のチェック項目
原産国や製造場所、AAFCOなどの飼料基準適合表示、給与量や対象年齢の記載も参考になります。表示を総合して、自分の目的に合うか判断しましょう。
ざっくり選び方の目安
基本のチェックポイント
- 主原料が良質な動物性タンパク(鶏肉、魚、牛など)かを確認します。原材料は多い順に表記されるため、最初に肉類の名称が来ている商品を選びます。
原材料の見方
- 「○○ミートミール」や「副産物(副産物ミール)」より、明記された生肉や乾燥肉のほうが分かりやすく安心です。
- 穀物が多すぎないかをチェックします。穀物が主原料として上位にあるとタンパクが不足しがちです。
成分表のポイント
- 粗タンパク・脂質・繊維・灰分の割合を確認します。種類や年齢によって理想は変わりますが、タンパクが明確に高めのものは良質です。
- ビタミン・ミネラルやオメガ3、プロバイオティクスなど、必要な機能性成分がバランスよく配合されているかを見ます。
実用的な選び方の目安
- 成分表示が具体的で、肉の種類が明記されている商品をまず候補にします。
- 添加物が極端に多くないものを選び、特定のアレルギーや年齢に合わせて調整します。
- 表示が不明瞭な場合はメーカーに問い合わせるか、信頼できるブランドを選びます。