目次
はじめに
概要
犬の胆泥症は、胆のう内に粘性のある胆汁(胆泥)がたまる状態です。軽い場合は無症状でも進行すると嘔吐や食欲不振、黄疸などが現れます。本章では、食事管理の基本方針とこの記事全体の目的をわかりやすく説明します。
胆泥症と食事の関係
胆汁は脂肪の消化を助けます。脂肪摂取が過剰だと胆のうに負担がかかりやすくなります。一方で栄養が不足すると免疫力や体力が落ちます。食事は病気の進行を抑える大切な要素です。
本書の方針(簡潔に)
- 低脂肪で高たんぱく、消化にやさしい食事を基本にします。例:皮を除いた鶏肉、白身魚、消化の良い炭水化物。
- 症状や他の病気(膵炎や肝疾患など)に合わせて調整します。
- 食事の変更は主治医と相談しながら行います。
この記事の読み方
第2章で基本の食事方針、第3章で具体的なフードと食材、第4章で避けるべきもの、第5章で日常管理のポイントを順に解説します。ご家庭の状況に合わせて、主治医と一緒に実践してください。
基本の食事方針
目的と基本方針
目的は消化に負担をかけず、必要な栄養をしっかり取れる食事を続けることです。脂肪をできるだけ抑え、たんぱく質は極端に減らさずに必要量を確保します。主食は栄養バランスの取れた総合栄養食を基本にします。
脂肪の管理
- 目安:市販のドライフードなら脂質7〜10%程度が一般的。療法食ではさらに低めのものがあります。
- 選び方:パッケージの成分表示や獣医師の指示を確認してください。
- 実践例:肉は皮を取る、揚げ物や脂身は与えない、おやつは低脂肪のものにする。
たんぱく質の扱い
- タンパク質は体の修復や免疫に重要です。肝不全など特別な病気がない限り、不要な強い制限は避けます。
- 例:鶏むね肉や白身魚などの良質で消化しやすいタンパク源を選びます。
フードの種類と選び方
- 総合栄養食(療法食や獣医師推奨のフード)を主にする
- 消化に良い処方食や低脂肪のウェット・ドライを用途に応じて使い分ける
与え方の実践ポイント
- フードを変えるときは数日〜1週間かけて少しずつ切り替える
- 一日量は体重や活動量に合わせて調整し、体重と便の状態を観察する
- 水分補給を忘れずに。気になる点は早めに獣医師へ相談してください。
適したフード・食材
療法食(基本)
胆泥症や膵炎の治療では「低脂肪」「消化器サポート」タイプの療法食が基本です。市販の具体名は病状や体質で変わるため、必ず主治医と相談して決めてください。ラベルで「低脂肪」「消化性に配慮」などを確認します。
たんぱく源(トッピングとして)
脂肪の少ない鶏むね肉・ささみ、白身魚(タラなど)を少量トッピングに使うことがあります。加熱して脂や骨を取り除き、味付けはしないでください。療法食の設計を崩さない範囲で、量を控えめにします。
野菜・おやつ
キャベツ、ブロッコリー、かぼちゃ、サツマイモ、少量のりんごなどが使われます。いずれも茹でるか蒸して与え、糖質の多いものは量を制限します。おやつは療法食と合うものを選び、脂肪・塩分に注意してください。
与え方の注意点
食材は人間の調味料を使わず、少量ずつ試して下痢や嘔吐がないか確認します。療法食のカロリーや脂肪量が重要ですので、勝手に大量に追加しないでください。長期の変更は必ず獣医師に相談しましょう。
控えたい・避けたいもの
はじめに
病気や体調管理をする上で、与えないほうがよい食べ物があります。ここでは具体例と理由、代替案をやさしく説明します。
脂身の多い肉・揚げ物
ベーコン、豚バラ、揚げ物(フライドチキン、コロッケなど)は脂肪分が高く消化に負担をかけます。膵炎や体重増加のリスクがあるため控えてください。
高脂肪のおやつ・トッピング
ジャーキー類、チーズ、人間用のお菓子、脂っこいトッピング(油やバターをかけたもの)は要注意です。療法食を食べている場合は特に、勝手に追加しないでください。
炭水化物中心の手作りごはん
白米やイモ類(じゃがいも・さつまいも)を大量に使ったごはんは、状況によっては負担になります。栄養の偏りや血糖値の変動が起きるため、配分は獣医師と相談して決めましょう。
そのほか避けたい食品(代表例)
チョコレート、玉ねぎ・にんにく、ブドウ・レーズン、キシリトールを含む食品は中毒の危険があるため与えないでください。
実践のコツ
低脂肪の茹で鶏肉やかぼちゃなどを少量のごほうびにしましょう。新しい食材は少量から試し、下痢や嘔吐が出たら中止して獣医師に相談してください。療法食の指示は必ず守り、安全を優先しましょう。
日常管理のポイント
基本の守り方
1日の給与量をきちんと守ることが最も重要です。過食は肥満につながり、肥満は胆泥(胆のうの汚れ)の悪化リスクを高めます。フードは計量カップよりキッチンスケールで量ると正確です。おやつも1日の総カロリーに含めて調整してください。
回数と分け方
1日2~3回に小分けにして与えます。少量を複数回に分けると消化器への負担を減らせます。食事の間隔が長すぎると空腹で吐くことがあるため、規則正しい給餌を心がけましょう。
症状が出たらすぐ受診を
嘔吐が続く、下痢が24時間以上続く、著しい食欲不振、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などが見られたらすぐに受診してください。受診時には最近の食事内容、回数、嘔吐や便の写真や時間を伝えると診察がスムーズです。
検査結果に合わせた相談
エコー検査や血液検査の結果に基づき、食事内容は獣医師と都度相談してください。症状や検査値によっては療法食や脂肪制限、消化にやさしい処方に切り替える場合があります。
日々の管理のコツ
- 体重は週1回、同じ時間帯に計測して記録する。簡単な体型チェック(肋骨が触れるか、ウエストがくびれているか)も行う。
- フードは湿気や酸化を防ぎ、指示通りに保存する。
- 水は常に新鮮にしておく。水分摂取が減っていれば早めに相談を。
毎日のちょっとした観察と記録が早期発見につながります。変化に気づいたら迷わず主治医に相談しましょう。