目次
はじめに
本書の目的
本ドキュメントは、犬のチキンアレルギーについて分かりやすくまとめたガイドです。チキンが原因で起きる症状や診断法、日常でできる対処、代替のタンパク源、そしてアレルギー犬向けフードの選び方まで丁寧に解説します。
対象の方へ
愛犬が皮膚をかゆがる、耳を気にする、消化不良を起こすなどの症状がある飼い主さんに向けています。初めてアレルギーを疑う方も、すでに対応を始めた方も役立つ情報を載せています。
なぜ知っておくべきか
チキンは多くの市販フードやおやつに使われています。原因を正しく見極めることで、無駄な食材制限を避けられます。症状を早く改善でき、愛犬の生活の質を守れます。
本書の使い方
各章を順に読むと、原因の理解から具体的な対策、食事の見直しまで段階的に学べます。気になる点は獣医師に相談してください。
犬のチキンアレルギーとは？
定義
犬のチキンアレルギーは、鶏肉や鶏由来成分に対して体が過剰に反応する食物アレルギーです。免疫が鶏のタンパク質を「敵」とみなし、皮膚や消化器にトラブルを起こします。
なぜ起こるのか
最初は何度か食べることで体がその食材に敏感になります。次に食べたときに症状が出る場合が多く、皮膚のかゆみや下痢などにつながります。添加物だけでなく、タンパク質そのものが原因のことが多いです。
注意すべき食品
鶏肉のほか、鶏脂、鶏エキス、鶏由来の副産物を含む加工品にも注意が必要です。ドッグフードやおやつに鶏が使われていることが多いため、原材料表示をよく確認してください。
誰に多いか
年齢や犬種に偏りはありません。何度も同じ食材を与えている犬で発症することが多いので、日ごろの食事履歴を見返すことが役立ちます。
受診の目安
かゆみや下痢が続く場合は獣医師に相談してください。自己判断で食事を変えると診断が難しくなることがあるため、専門家の助言を受けると安心です。
チキンアレルギーでよくみられる症状
皮膚・被毛のトラブル
チキンが原因の食物アレルギーでは、まず皮膚や被毛に変化が出ることが多いです。具体的にはかゆみ、発赤、湿疹、フケ、毛が抜ける、被毛のツヤが失われるといった症状が見られます。長引くと二次感染で膿を持ったり、患部がただれたりします。
常に見られる行動的なサイン
犬が同じ場所を舐め続ける（舐め壊し）・過度にかく・顔や前足をこする、といった行為が目立つときはアレルギーを疑います。特に手足やお腹、脇の下に症状が出やすいです。
耳のトラブル
慢性的な外耳炎（耳が赤く臭う、よく耳を振る、耳垢が増える）は食物アレルギーのサインであることが多いです。耳の状態が繰り返し悪化する場合は背景に食事が関係していることがあります。
消化器症状
下痢、軟便、嘔吐、食欲不振、体重減少といった消化器の不調も報告されます。症状は軽いものから続発性の栄養不足につながるものまでさまざまです。
症状の出方と受診の目安
症状は断続的に出ることもあれば、食べ続けてから徐々に出ることもあります。症状が数週間続く、体重が減る、激しい嘔吐や血便が出る、呼吸が苦しそうといった場合は早めに獣医師を受診してください。
どうやってチキンアレルギーと判断するのか
診察と問診
まず動物病院で獣医師が詳しく聞き取りと診察を行います。いつから、どの部位に、どのような症状が出るかを詳しく伝えましょう。皮膚の赤み、かゆみ、脱毛、消化不良（下痢・嘔吐）などを確認します。
鑑別診断
ノミや寄生虫、皮膚感染、内分泌疾患など他の原因を除外します。自己判断せずに獣医師と一緒に原因を整理することが大切です。
除去食試験（エリミネーションダイエット）
最も信頼できる方法は除去食試験です。手順は一般的に次の通りです。
- 新しい、もしくは加水分解（ハイドロライズド）されたタンパク質を主成分とするフードに切り替えます。
- おやつや人の食べ物、味付きの薬などに含まれるチキンを完全に避けます。
- 最低8〜12週間続け、症状の改善を観察します。
- 改善があれば、獣医師の指導で再びチキンを与え、症状が再発するか確認します（再負荷試験）。
厳格さが診断の成否を左右しますので、自己判断で中断せず獣医師と進めてください。
血液検査や皮内テストの位置づけ
血液検査（抗体検査）は参考になりますが、食物アレルギーの確定診断には限界があります。皮内テストは主に環境アレルギー向けで、食物アレルギーの判定には適しません。
緊急時の対応
呼吸困難や顔の腫れ、チアノーゼ、急激な衰弱が見られたら直ちに動物病院へ連絡してください。
チキンアレルギーへの基本的な対処法
まずは獣医師に相談
チキンアレルギーが疑われる場合は、まず獣医師に相談してください。自己判断での食事変更は避け、症状の記録を持参すると診察がスムーズです。
除去食への切り替え
最も効果的なのは鶏由来成分を完全に除いたフードに切り替えることです。具体的には鶏肉、鶏副産物、鶏脂、チキンエキス、鶏レバーなどが入っていない商品を選びます。穀物や乳製品にも反応がある場合は、グレインフリーや多アレルゲンに対応した製品を選んでください。
切り替えの方法と期間
新しいフードへは7〜10日かけて段階的に移行してください。皮膚やかゆみの改善はおおむね2〜8週間で観察します。経過をノートに記録して定期的に獣医師と確認しましょう。
おやつやトッピングの注意
市販のおやつや手作りトッピングにも鶏由来成分が含まれることがあります。ラベルを必ず確認し、同じ食事環境で交差汚染が起こらないよう気をつけてください。
改善が見られない場合
8週間経っても改善がない場合は再診し、アレルギー検査や加水分解（ハイドロライズド）タンパクの処方食を検討します。急な体調変化があればすぐに受診してください。
チキンの代わりに使える主なタンパク源
チキンを避けたいときに使える主な動物性タンパク源を分かりやすく紹介します。アレルギー対策や皮膚・被毛ケアに向くものを中心に説明します。
- ラム（羊肉）：比較的アレルギーが少ない“新しい”タンパク源です。脂肪が適度で、消化に良い種類のフードが多いです。
- 馬肉：低脂肪で高タンパク、アレルギーのある犬に向くことが多いです。珍しい材料のため新規アレルゲンとして使いやすいです。
- ベニソン（鹿肉）：低脂肪でヘルシー、皮膚の状態を改善する例が多くあります。
- 魚（サーモン、タラ、白身魚、マグロ、イワシなど）：オメガ‑3脂肪酸を含み、被毛と皮膚に良い影響を与えます。魚アレルギーがないか確認してください。
- その他の選択肢：ビーフ・ポーク・ゴート・ラビット・カンガルーなど、シングルプロテインのフードが市販されています。ラビットやカンガルーは“珍しい”タンパク源で、アレルギー管理に有利です。
ポイント：
- アレルギー管理にはシングルプロテイン（原材料が一種の肉）のフードが適します。複数タンパク源を含むと原因特定が難しくなります。
- 脂質やカロリー、原料の鮮度や産地も確認してください。高脂肪のものは膵炎リスクがある犬には不向きです。
- 新しいタンパク源に切り替えるときは徐々に移行し、皮膚や便の変化を観察します。症状が続く場合は獣医師に相談してください。
これらを参考に、愛犬に合った代替タンパクを選んでください。
チキンアレルギー犬向けフードの選び方のポイント
1. 原材料表示を最優先で確認する
まずパッケージの原材料表示を丁寧に読みます。特に「鶏肉」「チキン」「鶏副産物」「チキンミール」「家禽ミール」「鶏エキス」など鶏由来の表記がないかを探してください。原料は重量順に並んでいるので、前の方に鶏があれば避けましょう。
2. 曖昧な表記は必ずメーカーへ問い合わせる
「動物性油脂」「家禽脂」「香料」「肉類」など曖昧な表現は鶏由来の可能性があります。迷ったらメーカーに電話やメールで原料の由来を確認し、「チキン不使用」と明記された製品を選ぶと安心です。
3. シングルプロテイン（単一タンパク源）を選ぶ
ラム、鹿、サーモンなど単一のタンパク源のみを使ったフードは、原因食材の特定や管理がしやすくなります。複数の動物性タンパクが混ざる製品は避けましょう。
4. 製造環境と混入リスクにも注意する
同じ工場で鶏製品を扱っている場合、微量の混入が起きることがあります。パッケージやメーカー情報で「専用ライン」や「交差汚染のリスク」について確認してください。
5. 切り替え方と経過観察
新しいフードは7〜10日かけて少しずつ切り替え、皮膚や便の状態、かゆみの有無を記録します。改善が見られない場合や症状が悪化したら獣医師に相談してください。
6. 獣医師と連携する
重度のアレルギーや判断に迷う場合は獣医師へ。必要ならアレルギー検査や処方食（たとえば加水分解タンパクや療法食）の提案を受けられます。