目次
はじめに
5ヶ月の子犬がご飯を食べないと、不安になりますね。まずは慌てずに状態を確認し、環境やフード、与え方を見直すことが大切です。この章では本書の目的と読み方、最初に確認してほしいポイントをやさしく説明します。
この章の目的
- 相談や受診の前に自宅でできる初期確認を示します。
- 病院へ急ぐべきかどうかの判断材料を用意します(詳しくは第2章へ)。
最初に見てほしいポイント
- 元気や遊びたがる様子:ぐったりしていないか確認してください。
- 嘔吐・下痢・発熱の有無:体調不良があれば早めの受診を検討します。
- 水を飲むかどうか:水分摂取があるかは重要です。
- 食事の変化期間:いつから食べないのか日数を記録してください。
- フードや皿、置き場の変化:新しいフードや環境ストレスがないか確認します。
- 口の中や歯の状態:歯の生え変わりで痛がることがあります。
この章を読み終えたら、第2章で「すぐ病院へ行く目安」を確認してください。長く様子を見すぎず、異変が続く場合は早めに受診しましょう。
すぐ病院へ行く目安
症状が出たらすぐ受診してください
次のような症状が1つでもあれば、できるだけ早く動物病院を受診してください。時間が命に関わる場合があります。
- 下痢・嘔吐(繰り返す、止まらない)
- 血便・血尿(鮮血や黒っぽい血)
- 元気がなくぐったりしている、反応が鈍い
- 震える、痙攣(けいれん)や意識が朦朧としている
- 動きたがらない・立てない
- 水も飲まない、極端に食欲がない(おやつにも反応しない)
- 急激な体重減少
特に危険なサイン(すぐ救急を)
呼吸が苦しそう、歯茎が白っぽい・青っぽい、持続的な嘔吐や下痢で脱水が疑われる場合は救急受診をおすすめします。
受診前にできること(簡単な準備)
- 落ち着かせて安全なキャリーやタオルで包む
- 吐いた物や便の一部をビニールに入れて持参する(検査に役立ちます)
- 起きた時間、症状の始まり、食べたものや薬、誤飲の心当たりをメモする
- すぐ行けない場合は電話で症状を伝え、指示を仰ぐ
早めの受診が回復のカギになります。迷ったら電話で相談してください。
5ヶ月で食べなくなる「よくある原因」
生後5ヶ月ごろは成長のリズムが変わり、食欲が一時的に落ちることがあります。ここではよくある原因をわかりやすくまとめます。
成長のペース変化
骨や筋肉の成長スピードが変わる時期です。以前と同じ量を必要としなくなることがあり、食べる量が減る場合があります。例:急に運動量が増えた後は食欲が復活することもあります。
フードの量が多すぎる
与えすぎで満腹になっていると食べません。目安より少なめにして様子を見ると改善することがあります。
運動不足
体を動かしていないと消化も進まず、食欲が落ちます。短い散歩や遊びを増やすと効果的です。
環境ストレス
引っ越しや来客、大きな音などで落ち着かず食べないことがあります。静かで安心できる場所を用意してください。
フードの味や硬さが合わない
成長に伴い好みが変わります。粒の大きさや嗜好性を変えると食べるようになることがあります。
口や歯の不快感、消化器の不調
歯が生える痛みや口内炎、吐き気などがあると食べにくくなります。よだれや吐く、痛がる仕草があれば注意してください。
その他の要因
食事の時間が不規則、他の個体に取られる、食べ慣れない新しいフードを急に変えた、なども影響します。
家でできる対処のポイント
短い導入
まず緊急の症状がないことを確認した上で、無理をさせずにできる工夫を試しましょう。少しの工夫で食欲が戻ることがあります。
食事の工夫
- 1回量を減らして回数を増やす:例えば1回量を半分にして、1日4~6回に分けます。胃への負担が少なくなります。具体例:朝・昼・夕・夜のおやつ代わりに少量ずつ。
- フードをぬるま湯でふやかす・温める:ぬるま湯(人肌約37℃)でふやかすと香りが立ち、食べやすくなります。電子レンジで温める場合はよくかき混ぜて温度を確認してください。
環境の工夫
- 落ち着いた場所で決まったリズムにする:騒がない静かな場所で、毎回同じ時間に出すと安心します。
- 食器や置き場所を変えてみる:高さを変えたり、別の食器を使うだけで興味を示すことがあります。
行動の工夫
- 軽い運動を取り入れる:食事前に5~15分の短い遊びや散歩で空腹感を促します。年齢や体調に合わせて行ってください。
- 手から与える・トッピングを少量使う:好きなものを少量混ぜるか、指先で与えて関係づくりをします。ただし偏食につながらないよう注意します。
観察ポイントと注意
- 水分摂取と排泄をチェック:水を飲めているか、尿や便の状態を見てください。変化があれば受診を検討します。
- 無理に食べさせない:強く押し付けるとストレスになります。食べない時間が長引く場合は受診が必要です。
何日様子を見ていいか
目安
元気があり、水を飲み、排泄も普段通りであれば、丸1日程度様子を見ることが可能です。ただし、食べない時間が長引くなら早めに行動してください。
子犬の場合の短い目安
成犬よりも短めに考えます。半日ほとんど食べない、あるいは2回連続の食事でほとんど口をつけない場合は、早めに動物病院に相談してください。子犬は体力と水分が急に落ちやすいです。
早めに受診したほうがよいとき
・ぐったりしている、繰り返す嘔吐や下痢がある
・水をまったく飲まない、口の中や歯茎が白っぽい
・呼吸が速い・苦しそう、震える、出血がある
これらの症状があるときは観察で延ばさず受診してください。
家での観察ポイント
数時間おきに様子と摂取量を記録します。体温が高い・低い、嘔吐や排泄の様子、元気の有無をチェックしてください。記録は受診時に役立ちます。
医師に相談する目安
判断に迷うときは早めに電話で相談しましょう。短時間の様子見で命に関わるリスクを避けられます。
受診時に伝えるとよい情報
- いつから・どのくらい食べていないか
- 発症のタイミングや経過を具体的に。例:3日前の夜から半量、昨日の朝から全く食べない。
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食べる量を数字で記録しておくとわかりやすいです(例:一回につき10g→0g)。
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フードの種類・量・与え方の変化
- ブランド名、ドライ・ウェット・手作りの別、トッピングの有無。
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新しいフードに替えた/温めて与えたなどの変化を伝えてください。
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便や尿の状態
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回数、量、色、形(軟便・下痢・血便など)。尿の回数や量の変化も重要です。
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嘔吐の有無
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回数、吐いたもの(餌・胆汁・血)、時間帯を具体的に伝えてください。
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元気の有無・行動の変化・体重
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遊ぶか、歩くか、眠りがちか、飲水量の変化。最近の体重や急な減少があれば記録を見せてください。
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薬・既往歴・アレルギー
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現在服用中の薬(名前・用量・与えている時間)、慢性疾患、ワクチン接種歴、食物アレルギーの有無。
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受診時に持っていくとよいもの
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いつものフード少量(診断の参考になることがあります)、便のサンプル、投薬メモ、普段の食べる量を書いたメモ。
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メモの書き方例(そのまま渡せます)
- 「発症:4/2夜~。食事量:通常30g→現在0g。嘔吐:あり(4/3朝1回、黄色い液体)。便:軟便2回、血はなし。薬:なし。体重:6.2kg→5.9kg。」
これらを簡潔にまとめておくと、獣医師が状況を把握しやすくなり、診断や治療方針の決定がスムーズになります。