目次
はじめに
目的
本章では、犬が未消化の食べ物を吐く現象について全体像をやさしく説明します。なぜ起きるのか、どんな場合に心配すべきかを理解できるようにします。
なぜこのテーマが大切か
犬が食べ物を吐くのは飼い主にとって不安です。原因は軽い問題から重い病気まで幅があります。早めに見分ければ、不要な心配を減らし、必要なときに早く動けます。
本ドキュメントの範囲
主な原因（早食い、食べ過ぎ、消化不良、ストレス、腸内環境の乱れ、加齢など）と、吐出と嘔吐の違い、元気がある場合の判断、病気が疑われるサインを扱います。専門用語は最小限にし、具体例を多く示します。
読者へ
普段のケアや受診の判断に役立ててください。疑問が残る場合は獣医師に相談することをおすすめします。
犬が未消化の食べ物を吐く主な原因
1. 食べ過ぎ・早食い
短時間で大量に食べると胃に入る量が多すぎて消化前に吐き出します。多頭飼いで競争して食べる、フードを床に置いて放任するなどが原因です。早食いは空気も一緒に飲み込みやすく、胃が膨らんで不快になり嘔吐につながります。
2. 消化不良（食事内容の問題）
消化酵素が追いつかない場合や、急に食事を変えたときに起こります。脂肪分が多い人間の食べ物、香辛料や乳製品で下痢や嘔吐になることがあります。新しいフードは数日〜1週間かけて少しずつ切り替えてください。
3. ストレスや不安
引っ越し・来客・大きな音などで犬の胃腸が乱れ、未消化のものを吐くことがあります。お散歩前の興奮や分離不安も影響します。安定した生活リズムと落ち着ける場所が重要です。
4. 腸内環境の乱れと加齢
腸内細菌のバランスが崩れると消化がうまくいきません。年を取ると消化能力が落ち、以前は平気だった食べ物でも吐くことがあります。歯が悪くてよく噛めない場合も消化不良を招きます。
5. その他の注意点
未消化の嘔吐が続く場合は、異物誤飲や中毒、慢性疾患の可能性があります。血便、元気消失、繰り返す嘔吐、体重減少がある場合は速やかに獣医師へ相談してください。
簡単な対処法
- 少量を回数多く与える
- 遅食器やパズルフィーダーを使う
- 食事は徐々に切り替える
- 落ち着ける環境を作る
症状が続くときは自己判断せず獣医師に見てもらってください。
吐出と嘔吐の違い
定義と仕組み
吐出（としゅつ）は、食べたものが消化される前に食道から出てくる現象です。多くは飲み込みや食道の問題が原因で、未消化のエサや泡がそのまま出ます。嘔吐（おうと）は胃や腸の運動や中枢の反応で、消化が進んだ内容や液体、胆汁、血が混ざることがあります。
見た目とタイミングの違い
吐出は食後すぐ、あるいはごく短時間のうちに起きます。吐いたものは形がはっきりしていて未消化です。嘔吐は食後数時間経ってからや、食べていない時にも起き、内容がどろっとしていることが多いです。
原因の違い（具体例）
吐出の例：
- 早食いで空気とともに戻す
- 食道に異物があり押し戻される
- 先天的な食道の拡張（巨大食道症）
嘔吐の例：
- 胃腸炎や寄生虫による炎症
- 食中毒や有害物質の摂取
- 膵炎や肝疾患など内臓の病気
行動と元気の具合での見分け方
吐出後は犬が普段通りに元気で食欲もあることが多いです。一方、嘔吐後はぐったりしたり元気がない、下痢を伴うことが多く注意が必要です。吐く前のそぶり（えづき方や重い呼吸）も観察ポイントです。
受診の目安
- 吐いたものに血が混じる、回数が多い、元気がない場合はすぐ受診してください。
- 吐出で元気があり、頻度が少なければ食べ方の工夫や異物チェックを試してください。
上記を参考に、どちらの可能性が高いか観察すると受診の判断がしやすくなります。
元気がある場合の判断基準
はじめに
犬が未消化のものを吐いても、吐いたあとの様子が良ければ自宅での経過観察で対応できることが多いです。ここでは、見るべきポイントと家庭でできる対処を分かりやすく説明します。
観察ポイント
- 活力（遊んだり歩いたりするか）
- 食欲（いつも通り食べるか）
- 排泄（下痢がないか、便の色や形）
- 吐く頻度（1回だけか、短時間で繰り返すか）
- 吐いた物に血が混じっていないか
- 口やおなかを痛がる仕草がないか
家庭でできる対処
- まず数時間（4〜12時間）だけ絶食して胃を休めます。水は少しずつ与えて脱水を防ぎます。
- 絶食後は消化にやさしい食事（茹でた鶏肉とごはんなど）を少量から与えます。
- 小分けにしてゆっくり食べさせ、早食い対策をします。
- 温かい安静な環境で様子を見てください。
受診の目安（すぐに相談してください）
- 吐く回数が増える、または繰り返す
- 吐いたあと元気がなくなる、ぐったりしている
- 下痢を伴う、血が混じる
- 食欲がない、体重減少が続く
- 腹部が膨れている、触ると痛がる
経過観察の目安
多くの場合、24〜48時間で改善します。改善が見られない場合や上記の異常があれば早めに獣医師に相談してください。
病気が原因の嘔吐
概要
未消化物を吐く場合でも、単なる食べ過ぎや早食いだけでなく、さまざまな病気が原因となります。早めの観察と受診が大切です。
消化器系の主な病気と特徴
- 胃炎：食後すぐの吐き気や胃酸の混ざった吐物。食欲低下や腹痛を伴うことがあります。
- 膵炎：急な嘔吐、腹痛、元気消失。重症化すると脱水やショックに進みます。
- 腸閉塞：異物や腫瘍で腸が詰まると繰り返し吐き、排便が少なくなります。緊急手術が必要な場合があります。
- 炎症性腸疾患・大腸炎：慢性的な下痢や血便、体重減少を伴うことがあります。
- 巨大食道症：食べ物が食道に残りやすく、吐くほか誤嚥（ごえん）で咳が出ます。
- 胃拡張・胃捻転：お腹の膨満と激しい嘔吐で急変します。命にかかわる緊急状態です。
消化器以外の病気
- 肝機能障害や胆嚢炎：黄疸や元気消失を伴うことがあります。
- 腎不全：吐き気、口臭、尿量の変化が見られます。
- 尿路結石や子宮蓄膿症：痛みや血尿、発熱などを伴い嘔吐が出ることがあります。
異物誤飲の注意点
犬は布やおもちゃ、石などを飲むことがあります。吐いて出れば済むこともありますが、腸閉塞や穿孔（せんこう）を起こすと危険です。誤飲が疑われる時は早めに獣医に相談してください。
受診の目安と処置
- すぐ受診：持続する嘔吐、血の混じった吐物、腹部の膨満、重度の元気消失や脱水。これらは緊急です。
- 動物病院での検査：血液検査、尿検査、レントゲン、超音波、内視鏡など。
- 治療例：点滴で水分補給、制吐薬や抗生剤、内視鏡で異物除去、必要なら手術。
家庭での一時対応は、食事を一時中止して清潔な水を少量与え、安静に保つことです。自己判断で吐かせる処置は避け、獣医の指示を仰いでください。