目次
はじめに
この資料は、犬の健康維持や体調改善に役立つ「栄養価の高い食べ物」を分かりやすくまとめた入門ガイドです。肉類、魚類、野菜・果物、発酵食品・乳製品、海藻類、そして高栄養価のドッグフードまで、各章で特徴や主な栄養素、与え方のポイントを丁寧に解説します。
対象は、普段の食事を見直したい飼い主さん、年齢や病気で栄養管理が必要な犬、体調回復を目指す犬などです。専門的な言葉はできるだけ使わず、具体的な食材や与え方の例を示しますので、初めてでも取り組みやすい構成にしています。
使い方のポイント
- 各章で紹介する食材は「補助的」に使う視点でご覧ください。主食の切り替えやサプリメントの導入は獣医師と相談することをおすすめします。
- 新しい食材は少量から試し、便や食欲、皮膚の状態を観察してください。アレルギーや消化不良が出たら中止し、必要なら受診してください。
- 中毒になる食材(チョコレート、ぶどう・レーズン、玉ねぎ、ニンニクなど)は絶対に与えないでください。
本書を通して、愛犬に合った安全で栄養バランスの良い食事選びの手助けができれば幸いです。次章から具体的な食材と栄養の説明を始めます。
肉類:良質なタンパク質源
概要
肉類は犬にとって重要な良質なタンパク質源です。筋肉や臓器、被毛、免疫に必要な必須アミノ酸を多く含み、成長期・高齢期・回復期いずれにも役立ちます。ここでは代表的な肉ごとの特徴と調理・与え方のポイントをわかりやすくまとめます。
鶏肉・鶏ささみ
低脂肪で消化吸収が良い点が最大の魅力です。必須アミノ酸が豊富で、子犬やシニア犬、体重管理中の犬、消化器が弱い犬にも適しています。調理は骨や皮を取り、味付けせずに茹でる・蒸すのが基本です。冷ますときは薄く裂いて与えると消化しやすくなります。
豚肉
ビタミンB群が豊富で、筋肉や皮膚・被毛の健康維持に役立ちます。脂身が多い部位はカロリーが高いので赤身を選び、しっかり加熱して寄生虫や細菌のリスクを減らしてください。加熱後は余分な脂肪を取り除くと安心です。
鹿肉
低脂肪・高タンパクの代表格で、ダイエット中や膵臓に負担をかけたくない犬におすすめです。鉄分が豊富で貧血予防にも有効です。クセが少ないものを選び、基本は加熱して与えます。
羊肉
消化吸収が良く、オメガ3脂肪酸やビタミン、ミネラルを含みます。アレルギーがある犬の代替タンパクとして使われることもあります。脂の部分は控えめにし、加熱してから与えてください。
調理と与え方の基本
いずれの肉も塩や香辛料は使わず、骨は危険なので必ず取り除きます。茹でる・蒸す・ゆっくり焼くなど、余分な脂を落とす調理法を選んでください。初めて与える肉は少量で様子を見て、アレルギーや下痢がないか確認します。量は体重や活動量、年齢に応じて調節してください。
魚類:DHA・EPAと高タンパク
魚の栄養価
まぐろやさば、鮭などの魚はタンパク質が豊富で、筋肉や臓器の維持に役立ちます。特に青魚にはDHA・EPAと呼ばれる不飽和脂肪酸が多く含まれ、健康面でのメリットが期待できます。
DHA・EPAの主な働き
- 脳の働きを助ける:記憶や学習、神経の健康を支えます。
- 皮膚・被毛の健康:つややかな毛並みや皮膚のうるおいに貢献します。
- 抗炎症作用:関節や皮膚の炎症を和らげる助けになります。
与える際の注意点
- 骨を必ず取り除く:小骨は喉や消化器を傷つける危険があります。丸ごと与えないでください。
- しっかり加熱する:生魚は寄生虫や細菌のリスクがあるため、十分に火を通してください。
- 水煮の缶詰は便利だが、塩分を確認する:油漬けや味付けのものは避けます。
- 大型魚の水銀に注意:まぐろなどは頻度を控えめにしましょう。
調理の例と頻度
茹でる・蒸す・オーブンで焼くなど、味付けをせずに調理します。適量は年齢や体重で変わるため、普段の食事に週1~2回程度の割合で取り入れ、詳しくは獣医師に相談してください。
野菜・果物:ビタミン・食物繊維の補給
さつまいも
さつまいもはβ-カロテンやビタミンC、食物繊維が豊富で抗酸化や免疫力の維持に役立ちます。糖分が多いので、与えすぎに注意してください。調理は蒸すか茹でて冷ましたものを小さく切って与えると消化しやすくなります。
キャベツ
キャベツはビタミンC・Kや食物繊維が多く、消化を助けて腸内環境を整えます。生だと消化しにくい場合があるため、軽く茹でてから細かく刻むとよいです。大量に与えるとガスがたまりやすいので量を調整してください。
もやし・ブロッコリー
もやしは低カロリーでビタミンやミネラルが補えます。ブロッコリーは食物繊維とビタミンが豊富で便通改善に有効です。どちらも蒸すか茹でて冷ましてから与えてください。ブロッコリーは芯を小さく切ると食べやすくなります。
かぼちゃ・色の濃い野菜
かぼちゃ、にんじん、ほうれん草など色の濃い野菜はβ-カロテンやカルシウム、ビタミン類が豊富で栄養価が高いです。柔らかく煮てマッシュにすると消化しやすくなります。
果物の扱いと注意点
果物はビタミン補給に便利ですが糖分が多いので量を控えめにしてください。リンゴは芯と種を取り、バナナは小さめに切って少量なら与えられます。一方でぶどうやレーズンは危険なので絶対に与えないでください。
与え方の目安と調理法
野菜・果物は主食の補助として少量ずつ与えます。目安は普段の総量の約10%程度から始め、体調や便の様子を見ながら調整してください。塩や油、香辛料は使わず、シンプルに加熱して冷ましたものを与えることをおすすめします。
発酵食品・乳製品
発酵食品・乳製品がもたらす効果
ヨーグルトや納豆などの発酵食品は、乳酸菌や納豆菌などの良い菌が腸内環境を整えます。腸の調子が良くなると消化や栄養の吸収がスムーズになり、食欲が落ちた時でも負担を軽くして食べやすくなります。乳製品はカロリーやカルシウムを補え、シニア犬の栄養補助に向きます。
具体的な食品と与え方
- ヨーグルト:無糖・プレーンのものを選びます。小型犬はティースプーン1〜2杯、中型犬は大さじ1〜2杯、大型犬は大さじ2〜4杯を目安に、普段のごはんに混ぜて与えます。甘味料(特にキシリトール)は絶対に避けてください。
- 納豆:少量から始め、好みや消化具合を確認します。納豆はたんぱく質やビタミンも補えます。匂いが強いので嫌がる犬もいます。
- 犬用ミルク・発酵乳:犬専用に調整されたミルクや低乳糖の発酵乳は、牛乳が苦手な犬にも使いやすい栄養補助食品になります。ぬるめに温めて与えると飲みやすくなります。
- 甘酒(米麹のノンアルコールタイプ):エネルギー源として使えます。糖分が多いので少量にとどめ、与える前に成分を確認してください。
与えるときのコツ
少量から始めて、1〜2日様子を見ながら量を調整します。乾いたドライフードには混ぜてふやかすと食べやすくなります。風味が苦手な犬には少量を他の好物と混ぜて慣らすと良いです。
注意点
- 牛乳は乳糖不耐症の犬では下痢を起こすことがあります。犬専用乳製品を優先してください。
- 加糖や人工甘味料が入っている製品は避けます。特にキシリトールは中毒を起こします。
- 納豆に含まれる成分は、特殊な薬を服用している犬では注意が必要です。持病や投薬がある場合は獣医師に相談してください。
発酵食品や乳製品は上手に使えば腸の健康や嗜好性の改善につながります。まずは少量から試して、愛犬の反応をよく観察してください。
海藻類
海藻が持つ主な栄養
ワカメや昆布、海苔などの海藻は、水に溶ける食物繊維(アルギン酸やフコイダンなど)を多く含みます。これらは腸の調子を整え、便通を助けます。さらにビタミンA・Kやカルシウム、鉄、ヨウ素などのミネラルも補えます。具体例として、ワカメはカルシウムと食物繊維、昆布はミネラルとだしのうま味が豊富です。
犬への与え方のポイント
- 加熱や短時間の水戻しで塩分や海の臭いを落とします。市販の味付け海藻は塩分や調味料が強いので避けてください。
- 量は少なめから始めます。小〜中型犬なら乾燥ワカメならティースプーン1/2〜1、混ぜ物として週に数回が目安です。大型犬でも過剰摂取は避けます。
- 細かく刻んで普段のごはんに混ぜると食べやすく、腸内環境の改善が期待できます。
注意点
- 海藻はヨウ素を多く含むため、甲状腺疾患のある犬には与える前に獣医師に相談してください。
- 塩蔵や味付けのものは塩分過多になります。必ず無添加のものを選び、十分に水で戻してから与えてください。
- 一部の海藻は特定のミネラルが多い場合があるため、常食にする前に少量から様子を見てください。
高栄養価・高カロリードッグフード
特長
主原料が良質な動物性タンパク質(鶏肉、馬肉、鹿肉など)で、人工添加物が少ない製品を推奨します。カロリーと脂質が高めの配合は、体重増加やエネルギー補給が必要な犬に向きます。ドライタイプの高カロリーフード、ウェットタイプのトッパー、栄養密度の高い缶詰などが選択肢です。
どの犬に向くか
痩せ型、食欲不振、回復期の犬、活動量が多い犬に適します。子犬で成長が早い個体や、老犬で体重維持が困難な場合にも有効です。持病がある場合は獣医師に相談してください。
選び方のポイント
- 原材料表示で最初に動物性タンパクが来ているか確認してください。
- 人工着色料や保存料が少ないものを選びます。
- 脂質が高い分、消化不良を起こす犬もいます。少量から試して様子を見ます。
サプリメントと注意点
高栄養フードでも不足しがちな栄養(オメガ3油、ビタミン類、ミネラル)はサプリで補えます。プロバイオティクスや消化酵素を併用すると食欲や吸収を助けます。ただし、人用サプリや過剰投与は危険です。必ず獣医師と相談してください。