目次
はじめに
目的
この記事は、犬が下痢をしたときに「ご飯を抜く(絶食)」という対処法が適切かどうか、その方法と注意点をわかりやすく説明します。獣医師監修の情報をもとに、飼い主が自宅で落ち着いて対応できるように整理しました。
この記事で学べること
- 絶食が向くケースと向かないケース
- どれくらいの期間を目安にするか
- 食事の再開方法とおすすめのメニュー
- 絶食以外の家でできる対処法
- 動物病院を受診すべきタイミング
大切な注意点
子犬や高齢犬、持病(糖尿病や心臓病など)がある犬は絶食が危険になることがあります。嘔吐が続く、血便、ぐったり、脱水の症状がある場合は速やかに獣医師に相談してください。家庭での対処は一時的な応急処置と考え、症状が改善しない場合は受診を優先してください。
本シリーズの構成
全8章で、まず基本的な対処法と絶食の考え方を説明し、再開の方法や受診の目安まで順に解説します。初めての方にも分かりやすい具体例を交えて進めます。
犬が下痢をした時の基本的な対処法
下痢は犬に起こりやすい症状です。短時間で改善することも多いので、まず落ち着いて観察してください。
まず確認すること
- 下痢の持続時間(何時間・何回か)
- 血や粘液が混じっていないか
- 嘔吐の有無、元気・食欲の状態
- 年齢(子犬・老犬)や持病、普段の薬の有無
- 最近の食事や散歩での異物摂取の可能性
- 便を取って獣医に見せられるようにする
家庭での応急処置
- 成人の健康な犬なら一時的に食事を休ませ腸を休めます(目安は12〜24時間)。水分は必ず与えてください。少量をこまめに与えると吸収しやすくなります。
- 嘔吐が続く、または水も受け付けない場合は速やかに受診してください。
- 人用の下痢止めや市販薬は絶対に与えないでください。獣医の指示が必要です。
- 毛布で暖かくし、安静にさせて安らげる場所を用意します。
すぐ受診したほうがよい症状
- 24時間以上改善しない、血便が出る、激しい嘔吐
- 元気・飲水が明らかに低下、脱水の兆候(歯茎が乾く、皮膚の弾力が落ちる)
- 子犬・老犬・妊娠中・持病がある場合
持参すると良いもの
- 最近の食事内容、服用薬、便のサンプル、症状が出た時間の記録
家庭でのケアは回復を助けますが、状態をよく観察して必要なら早めに獣医に相談してください。
絶食が適しているケースと絶食期間
適しているケース
- 生後9ヶ月以上で元気があり、普段通りの遊びや反応がある犬
- 食欲があっても軟便または軽い下痢のみで、嘔吐や血便がない場合
- 発熱や重度のぐったりが見られない場合
絶食が向かないケース(受診を検討)
- 子犬(成長期)、高齢犬、小型犬や体重が少ない犬
- 嘔吐が続く、血便や黒色便、ひどくぐったりしている場合
- 持病がある(糖尿病など)や薬を常用している場合
絶食期間の目安(食事回数に応じた調整)
- 普段1回/日:最大24時間程度を目安に短めの絶食
- 普段2回/日:1回分を飛ばすイメージで約12〜18時間
- 普段3回/日以上:1回分を抜く、約8〜12時間を目安
※ これらはあくまで家庭での目安です。犬の体調や体重で調整してください。
絶食中の注意点
- 絶食中でも必ず新鮮な水を十分に与えてください。絶水は避けます
- トイレの状態、元気さ、吐き気の有無を頻繁に観察する
- 24時間経っても改善しない、あるいは悪化する場合は受診する
受診の目安
- 嘔吐や血便が出た、体温が高い、呼吸が速い、脱水傾向が見られる場合は速やかに獣医へ
絶食後の食事再開方法とおすすめの食事内容
再開の基本ルール
絶食後は少量ずつ・回数を分けて与えます。まずは様子を見ながら、1〜2時間おきにごく少量を与え、嘔吐や下痢がぶり返さなければ量を増やします。消化に負担をかけない軟らかい食事を選んでください。
おすすめの食品例
- ふやかしたドライフード:ぬるま湯で柔らかく戻す。療法食があれば優先します。
- おかゆ:白米を多めの水で煮たもの。消化しやすく胃に優しいです。
- 加熱したささみ・鶏むね肉:脂を取り除き茹でる。細かく裂いて与えます。
- 白身魚:骨を取り加熱したもの。淡泊で消化がよいです。
- 加熱した野菜:さつまいも、かぼちゃ、やわらかく煮たキャベツ。キノコ類は加熱した市販のしいたけ等に限定し、野生のキノコは絶対に与えないでください。
避けるべき食品
ジャーキーや硬いおやつ、脂身の多い肉(豚バラ、牛脂など)、加工食品(スナック、味付けご飯)、香辛料や塩分の高いもの、乳製品、玉ねぎ・にんにくなど中毒になる食材は避けます。体を冷やす生野菜(キュウリやレタス)は控えてください。
食事の切り替え手順と注意点
1日目〜2日目:軟らかい食事のみ、1回量は普段の半分以下を数回に分ける。3日目:通常食に戻す場合は半分ずつ混ぜて様子を見ます(例:初日は軟らか食90%+通常10%、数日で比率を上げる)。便の状態、嘔吐、元気の有無を毎回確認し、悪化があれば直ちに獣医師に相談してください。
絶食や食事調整以外の対処法
環境とストレスの見直し
犬は環境変化や来客、騒音で下痢を起こすことがあります。まずは刺激を減らし、普段と同じ生活リズムに戻すよう心がけてください。具体例:大きな音を避ける、見知らぬ人の出入りを控える、食器や寝床の位置を元に戻す。
静かな場所での安静
落ち着ける静かな場所で休ませます。ケージやクッションに柔らかい毛布を敷き、無理に動かさないでください。安静は回復を早めます。
過度な運動の制限
激しい運動は消化器に負担をかけます。散歩は短めにし、遊びは控えめにしてください。年齢や体調に応じて無理のない運動量に調整します。
お腹を冷やさない工夫
冷えは腸の働きを乱します。寒い季節は腹部を覆う服を着せる、寝床に湯たんぽ代わりの温かいパッドを入れるなど温める工夫をしてください。ただし熱すぎないよう注意します。
下痢止めや薬の扱い
市販の下痢止めは犬に合わない場合があり、誤用で症状悪化の危険があります。薬の使用は必ず獣医師に相談してください。
衛生管理と水分補給
排泄物は早めに片付けて衛生を保ちます。脱水予防のため新鮮な水をいつでも飲めるようにします。飲まない場合は少量ずつ与えるなど工夫してください。
観察ポイント(相談の目安)
血便、嘔吐、ぐったり、飲水量の極端な減少・増加があれば獣医師に相談しましょう。変化をメモしておくと診察時に役立ちます。
受診のタイミングと注意点
下痢は多くの場合軽症で自然に治ることもありますが、悪化すると命に関わることもあります。ここでは受診の目安と受診前後の注意点をわかりやすくまとめます。
緊急性の目安
- 下痢が2〜3日続く場合は受診を検討してください。
- 元気が急に低下したり、食欲がない場合は早めに受診してください。
すぐ受診すべき具体的症状
- 嘔吐が続く、または嘔吐と下痢が同時にある
- 血の混じった便や粘液便
- 明らかな脱水(口の中が乾いている、皮膚が戻りにくい)
- ぐったりして立てない、痙攣、高熱
子犬・老犬・持病のある犬の注意点
子犬や老犬、心臓病・腎臓病・免疫抑制薬を服用している犬は、軽い症状でも早めに診察を受けてください。抵抗力が弱いため経過が急変しやすいです。
受診前にしておくこと
- 便の状態(色・血の有無)や頻度、初発時刻、食べたものの記録を用意してください。
- 可能なら便サンプルや便の写真を持参してください。検査がスムーズになります。
- 水は少量ずつ与えて脱水を防ぎます。人用の薬は与えないでください。
動物病院での対応と伝えるべき情報
- 診察では視診・触診、便検査、必要に応じて血液検査やレントゲン・超音波検査を行います。
- 持参すると良い情報:普段の食事、ワクチン・駆虫の履歴、既往症、最近の外出や拾い食いの有無。
受診のタイミングを迷ったら、電話で動物病院に相談すると状況に応じた指示がもらえます。早めの対応が安心につながります。
よくある疑問Q&A
Q1: 下痢でも水分は必要ですか?
はい。必ず与えてください。少量ずつ頻回に飲ませると、脱水を防げます。コップ一気ではなく、数回に分けて与えるか、シリンジで少量ずつ与えると安心です。嘔吐を繰り返す場合は水も控えて、すぐに動物病院へ連絡してください。
Q2: ご飯を抜くのはかわいそうではないですか?
胃腸を休める目的で短期間の絶食(目安は最大24時間)なら有効です。ただし、子犬、高齢犬、体重の少ない犬、持病がある犬(糖尿病など)は絶食しないでください。様子を見て元気や排便の状態が改善しないときは受診をおすすめします。
Q3: 絶食後はどんな食事を与えればよいですか?
消化に良いものを少量ずつ与えます。具体例:ふやかしたドライフード、おかゆ(薄め)、茹でたささみや鶏胸肉。味付けや油は避け、1回量は普段の半分以下にして数回に分けて与えてください。症状が治まれば、2〜3日かけて通常の食事に戻します。
Q4: 人間の整腸薬や市販薬は使えますか?
使わないでください。人用薬は成分や濃度が犬に合わないことがあります。市販の犬用プロバイオティクスは補助になりますが、まずは獣医師に相談しましょう。
Q5: すぐ受診すべきサインは?
血便、持続する嘔吐、ぐったりして飲めない、発熱、腹痛のサイン(唸る・触られるのを嫌がる)などは早めに受診してください。
関連する食事管理のポイント
ドッグフードの保存方法
ドライフードは湿気・高温を避けて保存してください。密閉容器に入れ、袋の開封日を記載すると管理しやすいです。直射日光や台所の蒸気が当たる場所は避けましょう。
品質チェックと廃棄基準
与える前に匂いや色、カビの有無を確認してください。油っぽい匂いや変色、虫、カビがあれば廃棄します。賞味期限や開封後の目安日数も守ってください。
手作り食の注意点
新鮮な食材を使い、最低限の加熱で消化しやすく調理します。例として、茹でた鶏胸肉、加熱した白身魚、やわらかく煮たかぼちゃやさつまいも、少量の白飯が挙げられます。細かく切るかほぐして与えると消化が楽になります。カルシウムなどの不足しやすい栄養は獣医師と相談してください。
給餌量・回数の工夫
下痢の回復期は一度に多く与えず、少量を回数多めに与えると負担が減ります。体重や年齢に合わせて調整し、普段の量に戻すときも徐々に増やしてください。
食器と衛生管理
食器はステンレス製が衛生的で洗いやすいです。毎回よく洗い、飲水は常に新鮮に保ってください。
食事の変更方法
フードを変えるときは5〜7日かけて新しいものに移行します。急な変更は下痢の原因になります。
常備しておくと便利なもの
茹でた白米や鶏肉、低脂肪の缶詰(消化に比較的やさしいもの)、ペット用の経口補水液を備えておくと安心です。サプリメントや特別食は獣医師と相談のうえで使用してください。