目次
はじめに
本資料の目的
本資料は、犬の貧血に対する食事療法について、研究や臨床の知見を分かりやすくまとめたガイドです。貧血の原因理解、栄養管理の重要性、改善に役立つ食材や栄養素、そして日常で実践できる食事管理法までを網羅します。
対象となる読者
犬の飼い主さん、動物看護師やトリマーなど日常的に犬の健康に関わる方を想定しています。獣医師向けの専門論文ほど難解ではなく、すぐに使える実践的な情報を中心に記載します。
本章で伝えたいこと
まずは本資料の範囲と使い方を明確にします。以降の章で具体的な食材や栄養素、調理例を順に示しますので、まずは「なぜ食事が大切か」「注意すべき点」を理解しておくと読み進めやすくなります。
注意点（必読）
貧血は原因が多岐にわたります。自己判断で食事だけで治そうとすると危険です。必ず獣医師の診断と血液検査を受けてください。特定のサプリメントや人用食品は犬に害を及ぼすことがありますので、与える前に獣医師に相談してください。
犬の貧血と食事の基本的な関係
貧血とは
犬の貧血は、血液中の赤血球やヘモグロビンが不足して酸素運搬が落ちる状態です。元気がない、呼吸が速い、舌や歯ぐきが白っぽいといった症状が出ます。原因は出血、感染、慢性疾患、栄養不足など多岐にわたります。獣医師の診断がまず必要です。
食事が果たす役割
食事は貧血の予防と改善で大きな役割を果たします。特に栄養不足が原因の場合は、必要な栄養素を補うことで赤血球の生成を助けます。急を要する場合や慢性疾患がある場合は、食事だけでなく獣医師の治療と並行して行います。
主な栄養素と具体例
- 鉄：赤身肉、鶏レバーは吸収が良い“ヘム鉄”を含みます。缶詰やドライフードに混ぜると与えやすいです。過剰は避け、獣医師に相談してください。
- ビタミンB12（コバラミン）：魚や肉、レバーに含まれます。吸収に問題がある場合は注射が必要になることがあります。
- 葉酸（葉酸）：ブロッコリーやケールなどに含まれますが、犬は動物性食品からの栄養を優先します。
- タンパク質：卵、鶏肉、牛肉などで赤血球の材料を補えます。消化しやすく調理することが大切です。
- 銅：レバーや一部の魚に含まれ、鉄の利用を助けます。
診断と食事管理の流れ
- 獣医師による血液検査で原因を特定する。2. 原因に合わせた治療と並行して食事を調整する。3. 定期的に検査して効果を確認する。サプリメントや特別療法食は獣医師の指示に従ってください。
注意点
自己判断で鉄サプリを与えると過剰や別の病気を見逃す恐れがあります。まず診断を受け、獣医師と相談して安全に栄養管理を行ってください。
貧血改善に最適な食材別ガイド
レバー（最強の鉄分源）
犬の貧血対策で最も有効なのはレバーです。牛・豚・鶏のレバーはヘム鉄、ビタミンB12、ビタミンAが豊富で吸収率が高いです。与える目安は週1〜2回、体重や状態に合わせて少量から始めてください。過剰なビタミンA摂取は危険なので、毎日大量に与えないよう注意します。
赤身肉・生肉（馬肉など）
牛や鶏の赤身肉は良質なタンパク質とヘム鉄を含みます。馬肉は生で与えられることが多く消化しやすいですが、生食は寄生虫や細菌のリスクがあります。信頼できる供給元のものを選び、必要なら加熱処理を検討してください。
鉄分豊富な野菜
小松菜、ほうれん草、ブロッコリー、かぼちゃなどは非ヘム鉄を含みます。吸収率を上げるため、肉類などのタンパク質と一緒に与え、加熱して細かく刻んでください。消化しやすくなり栄養も取りやすくなります。
海藻類（わかめ、昆布、のり）
ビタミンやミネラル、鉄分が含まれますが消化にやや負担がかかります。刻んでスープに混ぜるなど調理して少量を与えてください。ヨウ素の過剰に注意し、頻度は控えめにします。
貝類・赤身の魚（サーモン、マグロなど）
貝類やサーモンは良質なタンパク質と不飽和脂肪酸を含み、血流改善に寄与します。骨を取り除き、火を通してから与えると安全です。大型魚は重金属の蓄積があるため与える量を調整してください。
与え方のコツと注意点
・栄養バランスを保つため、複数の食材を組み合わせます。
・生食を選ぶ場合はリスクを理解し、衛生管理を徹底します。
・レバーや海藻は与え過ぎないようにして、変化があれば獣医師に相談してください。
栄養素別の重要性
鉄分（ヘム鉄・非ヘム鉄）
- 鉄分はヘモグロビンの材料です。動物性のヘム鉄（レバー、赤身肉、魚、鶏肉）は吸収率が高いです。植物性の非ヘム鉄（豆類、ほうれん草、海藻）は吸収はやや低いですが大切な供給源です。
- 吸収を助けるコツ：非ヘム鉄の食事にはビタミンCを一緒に取ると吸収が良くなります。例えば、豆料理にレモン汁や柑橘類を添えると効果的です。食事直前や直後の緑茶やコーヒーは避けると良いです。
ビタミンB12と葉酸
- ビタミンB12は赤血球の成熟に必要です。動物性食品（レバー、肉、魚、卵、乳製品）に多く含まれます。葉酸は細胞分裂を助けるので赤血球を作る際に重要で、葉物野菜や豆類に多く含まれます。
- 特に偏食や高齢犬では不足しやすいので獣医と相談してください。
タンパク質
- 赤血球や血液成分はタンパク質で作られます。良質な動物性タンパク（鶏肉、牛肉、魚、卵）を適量与えることが大事です。豆類や乳製品も補助になります。
銅
- 銅は鉄の利用を助けます。レバー、貝類、ナッツ、種子、全粒穀物に含まれます。過不足は問題になるため、サプリは獣医に相談のうえ使ってください。
補助的な栄養素と食事の工夫
- ビタミンAやビタミンCは赤血球の健康を支えます。にんじんやかぼちゃ、果物を適量取り入れてください。
- 調理法の例：レバーは週に数回、茹でるか軽く炒めて与えると栄養を取りやすいです。豆類はよく煮て消化しやすくします。
実践的な食事管理方法
食事の基本ルール
貧血のある犬にはまず栄養バランスが大切です。高たんぱくで消化の良い食事を基本に、鉄やビタミンB群を含む食材を意識します。毎回同じ時間に与え、急な食事量の変更は避けてください。
ドッグフードの選び方
成分表示で「たんぱく質」「鉄」「ビタミン」を確認します。年齢や体重に合った総合栄養食を選び、獣医師が推奨する療法食があれば優先します。お試しパックで食いつきを確認するのも有効です。
手作り食のポイント
手作りにする場合は主食・副菜・脂質のバランスを守ります。鉄分はレバーや赤身肉、ビタミンCは茹でたブロッコリーやかぼちゃで補えます。塩分や香辛料は避け、調理はしっかり火を通してください。
食事の頻度と量
成長段階や体重で適切な回数と量を決めます。小型犬は1日2〜3回、中型以上は2回が基本です。体重の変化や便の状態を見て少しずつ調整してください。
補助食品・サプリの使い方
獣医師の指示がある場合のみサプリを使います。鉄剤やマルチビタミンは過剰摂取のリスクがあるため自己判断で与えないでください。与え方や用量は処方通り守ります。
観察と病院との連携
食欲や元気、粘膜の色（歯ぐきの色）を毎日チェックします。吐き気や下痢、急激な元気消失があればすぐ受診します。定期的な血液検査で改善を確認し、食事内容は獣医師と相談しながら見直してください。