はじめに
本書の目的
本書は、犬のために安全でおいしい手作りおやつを作りたい方のためのガイドです。材料の選び方や注意点、実際のレシピまで、段階を追ってわかりやすく紹介します。初心者でも始めやすいよう、手順はできるだけ簡単にしています。
誰に向けているか
普段からペットの食事に関心がある方、既製品の成分に不安を感じる方、愛犬と一緒におやつ作りを楽しみたい方に向けています。専門知識がなくても読めるよう工夫しています。
本書で学べること
- 安全な材料の選び方と避けるべき食材
- 基本の作り方と失敗しないコツ
- 電子レンジや簡単な道具を使った時短レシピ
- 犬と猫の両方が食べられるレシピや、人間も一緒に楽しめる上級レシピ
おやつ作りの心構え
手作りおやつは愛情表現の一つです。ただし、量や頻度を守り、犬の体調をよく観察してください。新しい材料を試すときは少量から始め、アレルギー反応がないか確認しましょう。
手作りおやつの基本知識
なぜ手作りおやつが良いのか
手作りおやつは添加物や保存料が少なく、素材の質を自分で選べます。たとえば鶏ささみやかぼちゃ、りんごなど、シンプルな材料なら安心して与えられます。市販品よりも香りや味が自然なので食いつきが良いことが多いです。
与える量と頻度の目安
おやつは1日の総カロリーの10〜15%が目安です。体重5kgの成犬なら1日あたり約40〜60kcalが適量です。カロリーの高いもの(チーズ、ピーナッツバターなど)は小さく切って回数を分けて与えてください。子犬やシニア犬は消化力が弱いため、さらに少量にします。
カロリー管理の工夫
材料のカロリーを把握し、低脂肪の素材(さつまいも、かぼちゃ、茹で鶏)を多用します。おやつをごはんの代わりにしないことが大切です。
保存と衛生
手作りは傷みやすいので冷蔵で2〜3日、冷凍なら1ヶ月が目安です。手を清潔にし、調理器具や保存容器も清潔に保ってください。
与え方のコツ
ご褒美は小さく切り、訓練用はさらに小さく。初めての材料は少量ずつ様子を見てアレルギーや下痢が出ないか確認します。
犬が食べてはいけないNG食材
はじめに
手作りおやつを作る前に、まず危険な食材を知っておきましょう。少量でも犬に重篤な症状を起こすものがあります。以下は特に注意が必要な食材とその理由、あやしいときの対処法です。
危険な食材一覧と注意点
- ネギ類(玉ねぎ、長ねぎ、にら等)
- 赤血球が壊れて貧血を起こす恐れがあります。加熱しても危険です。
- チョコレート・カフェインを含む食品
- 中毒症状(興奮、嘔吐、下痢、痙攣、心拍異常)を起こします。少量でも注意が必要です。
- アルコール
- 酩酊や呼吸抑制、低体温など重篤になります。少しでも避けてください。
- アボカド
- 一部の犬に消化不良や中毒を起こすことがあります。果肉でも種でも注意。
- ナッツ類(特にマカダミア)
- 中毒を起こし、脱力や嘔吐、歩行障害が出ることがあります。
- ぶどう・レーズン
- 腎不全を引き起こす可能性があり、絶対に与えないでください。
- じゃがいもの芽
- ソラニンなどの有毒成分を含み、嘔吐や下痢を招きます。
- 香辛料・塩分の多い加工食品
- 胃腸障害や塩分中毒を引き起こします。人間用の調味料は避けましょう。
- 人間用に作られた加工食品
- 糖分・塩分・脂肪が多く、肥満や内臓障害の原因になります。
猫と一緒に飼っている場合の注意
猫にとっても毒になる食材(例:桃の種やチョコレート)と重なる部分があります。猫用に安全でも犬には毒な場合や、その逆もありますので、置き場所や分け方を工夫してください。
万が一食べてしまったら
落ち着いて、食べた物の名前や量、時間を確認します。可能なら包装や写真を持って動物病院に連絡してください。症状が出ている場合は直ちに受診をおすすめします。
初心者向け簡単レシピ
ささみジャーキー(基本)
材料:ささみのみ(犬の体重に合わせて量を調整)
作り方:ささみを横半分にスライスし、ラップをかけて麺棒で薄く延ばします。160℃に予熱したオーブンで約30分焼きます。水分がなくなりカリッと乾燥すれば完成です。
ポイント:タンパク質が多いので少量ずつ与えてください。厚さや焼き時間はオーブンによって変わりますので、様子を見ながら調整してください。保存は冷蔵で数日、冷凍で長期保存できます。
さつまいもボール(超簡単)
材料:さつまいも、無塩バター少量、犬用ミルク(または犬用フードのミルク代替)
作り方:さつまいもを加熱して柔らかくし、皮を取り潰します。無塩バターと犬用ミルクを混ぜて丸めるだけです。子犬やシニア犬、消化の弱い犬には裏ごしして繊維を取り除くと負担が軽くなります。
ポイント:味付けをしないでください。小さく丸めておやつのサイズに合わせます。
野菜ジャーキー(さつまいも・レンコン)
作り方:野菜を薄くスライスし、ささみと同様に薄く延ばして160℃前後のオーブンで乾燥させます。水分が抜けてしっかり乾燥すれば保存が利きます。
りんごジャーキー・干し芋スティック(乾燥機を使う場合)
作り方:りんごは芯と種を除き薄切りに、さつまいもは細長く切ります。食品乾燥機があれば短時間で大量に作れます。乾燥機がない場合はオーブンの低温でも代用可能です。
注意点:塩・砂糖・香辛料は使わないでください。ブドウ、玉ねぎ、ネギ類、チョコレートは与えないでください。与える量は犬の体格と普段の食事に合わせて調整してください。
第5章: 電子レンジで作る時短レシピ
電子レンジを使うと短時間で安全なおやつが作れます。卵や砂糖を使わないレシピを中心に、忙しいときに便利な方法を紹介します。
1. オートミールクッキー(約6枚)
材料: 熟したバナナ1本、オートミール40g、(お好みで無糖ピーナッツバター小さじ1)
作り方: バナナをフォークでつぶしオートミールと混ぜます。スプーンで小さく丸めて耐熱皿に並べ、600Wで90〜120秒加熱します。表面が固まったら取り出して冷まし、しっかり冷めてから与えます。
2. ジャーキー風(市販ペーストアレンジ)
材料: 無添加の犬用鶏ペーストまたは加熱済み鶏ささみ
作り方: ペーストを薄く伸ばすか、ささみを薄切りにして並べます。600Wで1分ごとに様子を見ながら乾くまで加熱します。高温にならないよう短い時間で繰り返すと焦げにくいです。
3. 材料1つ:さつまいもチップス
材料: さつまいも1本
作り方: 皮を洗い薄切りにします。重ならないよう並べ、600Wで3〜6分(途中で裏返し)加熱し、冷ましてから与えます。甘みがあり無添加で喜ばれます。
安全ポイント: 塩や砂糖を加えない、調理後は十分に冷ます、焦げは避ける、初めて与えるときは少量で様子を確認してください。保存は冷蔵で2〜3日、長期は冷凍をおすすめします。
犬猫共通で食べられるレシピ
梨のミルクプリン
- 材料(小型犬・猫向け2〜3個分)
- 梨(または好みのフルーツ)100g(すりおろす)
- 犬猫用ミルク200ml
- 粉ゼラチン5g
- ビーツパウダー少々(着色用、無くても可)
- 作り方
- 鍋にミルクを入れ軽く沸騰させたら火を止める。
- すりおろした果物と粉ゼラチンを加え、よく混ぜ溶かす。
- 好みでビーツパウダーを少量入れて色を整え、容器に流す。
- 粗熱を取って冷蔵庫で約1時間冷やす。食べる前に必ず冷たさと硬さを確認してください。
- ポイント/保存
- 砂糖は不要です。フルーツの自然な甘みで十分です。
- 冷蔵で2〜3日保存可。与える量は体格に合わせて調整してください。
かぼちゃのワッフル
- 材料(小型犬2〜3枚分)
- かぼちゃ(茹でて潰す)120g
- 卵1個
- 米粉80g
- ココナッツオイル大さじ1(加熱用)
- はちみつ小さじ1(任意。猫には省くことをおすすめします)
- 作り方
- 卵を溶き、少しずつココナッツオイルを加えてよく混ぜる。
- 茹でたかぼちゃをペースト状にして加える。
- 米粉とはちみつを入れて滑らかに混ぜる。
- ワッフルメーカーで焼く。無ければフライパンで両面を中火で焼いてください。
- ポイント/保存
- はちみつは少量に留めるか、猫には使わない方が安心です。
- 焼き上がりは冷ましてから与えてください。冷蔵で2日、冷凍保存は1か月が目安です。
どちらも基本は少量ずつ与え、初めての食材はアレルギーに注意して様子を見てください。
人間も一緒に食べられる上級レシピ
概要
バナナマフィンはバナナの自然な甘味が感じられ、人と愛犬が一緒に楽しめるおやつです。カロリーが高めなので、子犬や体重管理が必要な犬には小さく切って与えてください。
材料(6個分)
- 熟したバナナ 2本(約200g)
- 卵 1個
- プレーンヨーグルト(無糖) 50g
- 全粒粉またはオートミール粉 150g
- ベーキングパウダー 小さじ1
- ココナッツオイル(または植物油) 大さじ1
- (人用)メープルシロップ 大さじ1〜2(お好み)
※ピーナッツバターを使う場合はキシリトール不使用のものを少量にしてください。
作り方
- オーブンを180℃に予熱します。型にカップを敷くか薄く油を塗ります。
- バナナをフォークでつぶし、卵、ヨーグルト、油を混ぜます。
- 粉類とベーキングパウダーを合わせ、2に加えてさっくり混ぜます。少しダマが残る程度で十分です。
- 型に等分に入れ、170〜180℃で約18〜22分焼きます。中心に竹串を刺して生地がつかなければ焼き上がりです。
与え方の目安
- 小型犬:一度に1/6〜1/4個程度
- 中型犬:1/4〜1/3個程度
- 子犬や肥満傾向の犬:さらに小さく切って間食に少量を与えてください。
頻度は週に1〜2回程度が目安です。
保存方法
冷蔵で3日程度、冷凍なら1ヶ月を目安に保存できます。与える前は常温に戻してください。
注意点
- チョコレート、ぶどう、レーズン、キシリトールは絶対に使わないでください。
- 新しい食材を使うときは少量から様子を見てください。アレルギーや消化不良が見られたら獣医に相談してください。
アレンジ案
- 人はトーストしてバターや蜂蜜を少量かけても美味しいです(犬には蜂蜜は少量に)。
- りんごやかぼちゃのピューレを混ぜて季節感を出せます。
上手に作って、人も犬も一緒に安心して楽しんでください。