目次
はじめに
本資料の目的
本資料は、愛犬に安全で栄養バランスの良い手作りご飯を作るためのガイドです。栄養配分やカロリー目安、使いやすい食材の選び方、微量栄養素の管理まで、実践的に役立つ情報を分かりやすくまとめています。
誰に向いているか
・市販フードだけで足りているか不安な飼い主さん
・特別な配慮が必要な犬(体重管理、食物アレルギーなど)のケアを考えている方
・毎日の食事を手作りに切り替えたいが、何から始めればいいか迷っている方
進め方と注意点
手作りご飯は愛情が伝わりますが、栄養が偏ると健康被害を招きます。まずは獣医師や動物栄養士に相談することをおすすめします。食材の加熱や保存、アレルギーの観察を習慣にしてください。急な変更は避け、少しずつ切り替えます。
本書の構成
第2章で基本的な栄養バランスを説明し、第3章で体重別のカロリー目安を示します。第4章はタンパク質源の選び方と分量の目安、第5章は野菜と炭水化物の選び方です。各章は実践的なレシピや注意点も含みます。
犬の手作りご飯の基本的な栄養バランス
基本の割合
犬の手作りご飯で基本にする目安は、材料の比率で「タンパク質:野菜:炭水化物=1:1:0.5〜1」です。別の考え方では、材料配合を「タンパク質40%、野菜50%、炭水化物10%」とする方法もあります。エネルギー比では1日に必要なカロリーのうちタンパク質25%、脂肪15%、炭水化物60%を目安にすることが多いです。これらは互いに補完する考え方です。
栄養の役割と食材例
- タンパク質:筋肉や免疫の維持に重要。鶏胸肉、赤身肉、白身魚、卵、豆腐などが使いやすいです。必ず中心まで火を通してください。
- 野菜:ビタミン・食物繊維補給。にんじん、ほうれん草、ブロッコリー、かぼちゃなどを刻んで加えます。
- 炭水化物:エネルギー源。白ごはん、さつまいも、じゃがいもが消化しやすいです。
- 脂質:エネルギーと必須脂肪酸。調理に少量の油や魚油を使います。
実際の組み立て方(例)
1食を300gにする場合、40:50:10の目安だとタンパク質120g、野菜150g、炭水化物30gになります。比率1:1:0.5〜1を使うと、タンパク120g、野菜120g、炭水化物60〜120gのように調整できます。
調整のコツと注意点
栄養は数日単位で整えればよく、毎食完璧である必要はありません。体重、年齢、運動量で量と比率を調整してください。成長期や疾患がある場合は獣医師に相談し、必要に応じてカルシウムやビタミンの補助を加えます。食材は計量し、急な変更を避けて少しずつ切り替えてください。
犬の体重別カロリー目安と給餌量
1日のカロリー目安
犬に必要な1日のカロリー量は体重で大まかに分かれます。代表的な目安は次の通りです。
- 1kg: 約110kcal
- 2kg: 約190kcal
- 4kg: 約320kcal
- 10kg: 約630kcal
これらはあくまで目安です。個々の犬の活動量や代謝で調整が必要です。
給餌量の求め方(手作りご飯の場合)
手作りご飯のエネルギー密度(100gあたりのkcal)を調べ、次の式で給餌量を出します。例:手作りご飯が100gあたり150kcalで、体重10kg(630kcal必要)の場合、630÷150×100=420gが目安です。
活動量・年齢・避妊去勢の影響
活動的な犬は追加で10〜30%必要になることがあります。子犬は成長期で大人より20〜50%多めに、老犬や活動量が少ない犬、避妊去勢後の犬は10〜20%程度減らすことが多いです。
おやつと全体のバランス
おやつは1日の総カロリーの10%以内を目安にしてください。与えすぎると肥満になります。
実践のコツと注意点
月に1回は体重と体型(肋骨の触り具合、ウエストのくびれ)を確認し、5〜10%の変動で給餌量を調整します。体重増減が続く場合は獣医師に相談してください。
タンパク質源となる食材と給餌量
タンパク質の役割
犬は動物性タンパク質を効率よく消化吸収します。筋肉維持や免疫、被毛の健康に不可欠です。手作りご飯では良質な動物性タンパク質を中心に考えます。特に成犬の維持期は全エネルギーの約20〜30%をタンパク質で補う目安にしてください。個別の必要量は年齢・活動量で変わります。
主な食材と特徴(100gあたりの目安)
- 鶏むね肉:タンパク質約23g。脂肪少なめで消化が良いので初心者向けです。
- 鶏もも肉:タンパク質約17g。風味がありカロリーがやや高めです。
- ささみ:タンパク質約28g。低脂肪で高タンパク、療法食にも使われます。
- 豚肉:タンパク質約20g前後。ビタミンB群が豊富で疲労回復を助けます。脂身に注意してください。
- 白身魚:タンパク質約18〜22g。DHAや良質な脂が取れ、カルシウム源と合わせやすいです。
- 鹿肉:タンパク質約24g前後。高タンパク・低脂肪でアレルギーが起きにくいとされます。
体重別・1日に必要なタンパク質の目安(概算)
(目安:体重1kgあたり約2〜3gのタンパク質)
- 5kgの犬:10〜15g/日
- 10kgの犬:20〜30g/日
- 20kgの犬:40〜60g/日
- 30kgの犬:60〜90g/日
例:10kgの犬が鶏むね肉(100gで23g)を主タンパク源にする場合、約90〜130gのむね肉で1日のタンパク質を満たします。
与え方のポイント
- 1食に複数の動物性タンパク質を混ぜるより、まずは1種類で様子を見ます。アレルギーや消化の確認がしやすくなります。
- 生肉は細菌リスクがあるため加熱を推奨します。加熱しすぎると栄養損失が出るので、蒸す・茹でるなど短時間の調理が安全です。
- 骨は調理済みの状態で与えると割れて危険なので、加熱した骨は避け、生骨も慎重に扱ってください。
- 特別な状態(子犬、妊娠期、高齢、疾患)がある場合は獣医師に相談してください。
野菜と炭水化物の選び方
はじめに
野菜や果物に含まれる食物繊維は消化を助け、腸内環境を整えます。手作りご飯にはバランスよく取り入れることが大切です。ここでは安全で使いやすい食材と調理の工夫をわかりやすく説明します。
野菜の選び方と具体例
- さつまいも:水溶性と不溶性の食物繊維をバランスよく含み、消化しやすいです。加熱してマッシュにすると食べやすくなります。
- かぼちゃ:ビタミンが豊富でやわらかくなるので消化に良いです。
- 葉物(ほうれん草、小松菜など):鉄分やビタミンが摂れますが、量を多くしすぎないようにします。
- 豆腐:低カロリーで良質なタンパク質・カルシウム・鉄分があり、消化に良い補助食材です。
炭水化物の選び方
犬は炭水化物の消化が苦手な面があるため、手作りご飯ではやや少なめに加えます。白米やおかゆ、さつまいも・かぼちゃなど消化しやすいものを選び、よく加熱して柔らかくして与えます。
調理のポイント
- 必ず加熱する(蒸す・茹でる・煮る)。生で与えないでください。
- 味付けは一切しない。塩分や油分は避けます。
- 小型犬や消化が弱い犬はすり潰すか裏ごしして与えると負担が減ります。
与える量の目安と注意点
- 目安として野菜はご飯全体の10〜20%、炭水化物はやや控えめに10〜20%を基本にし、主にタンパク質を中心にします。体重や活動量で調整してください。
- 与えてはいけない食材:玉ねぎ・にんにく・ネギ類・ぶどう・レーズン・アボカドなど。じゃがいもは芽や緑色部分を除き、よく加熱してから使います。
安全で消化にやさしい食材を中心に、少しずつ試して愛犬の様子を見ながら調整してください。