犬用フード・おやつ

腎臓が悪い犬のための食事と栄養管理のポイント

はじめに

概要

本調査は、腎臓病を抱える犬に対する適切な食事療法について分かりやすくまとめたものです。腎機能の負担を軽くする食事の基本、タンパク質やリン、塩分の管理、推奨食材と避けるべき食材、野菜やおやつの選び方、水分管理までを順に解説します。

対象読者

腎臓病と診断された犬を飼っている方、予防を考える方、獣医師やトリマーなど犬のケアに関わる方に役立ちます。専門用語は少なく、実践的な情報を優先しています。

本書の目的

飼い主様が日々の食事選びで迷わないように、具体的な例と理由を示します。個々の犬の状態で対応は変わりますので、最終的な判断は獣医師と相談してください。

使い方と注意点

各章は独立して読めますが、基本原則から順に読むと理解が深まります。食事を急に大きく変えると食欲不振や消化不良を招くことがあるため、少しずつ切り替えてください。

腎臓病の犬の食事療法の基本原則

はじめに

腎臓病の犬には、食事が治療の重要な一部です。腎臓の負担を減らすことで症状の進行を遅らせ、生活の質を保ちます。

基本の考え方

主な方針は「低リン」「低塩分」「適度なタンパク質」です。リンや塩分が多いと腎臓に余分な負担がかかります。タンパク質は量だけでなく質を重視し、良質なたんぱく源を適量与えます。

具体的なポイント

  • タンパク質:良質なものを少なめに。例として鶏胸肉や白身魚など消化しやすいものを選びます。
  • リン:骨や加工食品、内臓はリンが多いので控えます。市販の腎臓療法食はリンが調整されています。
  • 塩分:味付けや人の食べ物は与えないでください。塩分はむくみや高血圧の原因になります。
  • エネルギー確保:体重が落ちないように、嗜好性を工夫して必要カロリーを保ちます。

与え方と注意点

食事は回数を分けて与え、体重・飲水量・排泄の変化を日々チェックします。病気の進行度や個体差で最適な配分は異なるため、必ず獣医師と相談して食事計画を立ててください。手作りを考える場合も獣医師や栄養士の指導を受けると安心です。

タンパク質管理の重要性

概要

腎臓病の犬では、タンパク質の量と質を適切に管理することが大切です。過剰な制限は筋肉量の減少や栄養失調につながるため、良質で適量のタンパク質を与える必要があります。一般にタンパク質比率を20%以下に抑えた低タンパク質の食事が推奨されますが、脂肪が増えてしまう場合は注意が必要です。

なぜ重要か

タンパク質は筋肉や免疫に不可欠です。腎臓の負担を減らすために量を調整しますが、足りないと体力が落ちます。体重や筋肉の状態を見ながら調整します。

良質なタンパク質の例

  • 鶏むね肉(脂肪が少ない)
  • 白身魚(消化しやすい)
  • 卵の白身
  • 豆腐やヨーグルト(植物性・乳製品の補助)

実際の対策

  • 総エネルギーが不足しないように他の栄養で補う。
  • 食事のタンパク質量を徐々に調整する。
  • 体重や筋肉量を定期的に確認する。
  • 獣医と相談して個別の目標を設定する。

注意点

低タンパク質食が高脂肪にならないよう気をつけてください。食事だけでなく、おやつや手作り食も含めて管理します。

推奨される食材

概要

腎臓病の犬には、良質で消化しやすい動物性タンパク質を中心に与えると安心です。量と質を意識しながら、腎臓への負担を減らす食材を選びます。

推奨されるタンパク質

  • 鶏むね肉(皮なし): 脂肪が少なく消化しやすいです。茹でて余分な脂やリンを落とします。
  • 白身魚(タラ、ヒラメなど): 低脂肪でタンパク質が良質です。切り身を茹でるか蒸します。
  • 卵白: 脂肪やリンが比較的少なく、良い補助食材になります。卵黄は量に注意してください。

調理のポイント

肉や魚は茹でることでリンをある程度減らせます。皮や血合い部分は取り除き、味付けはしないでください。塩や調味料は使わないようにします。

避けるべき食材

  • 赤身肉(牛肉、豚肉)や魚の血合い部分(まぐろ、かつお): タンパク質とリンが高めで腎臓に負担がかかります。
  • 鶏ささみ: 一部で避けるべきとされるため注意してください。

注意点

食材の切り替えや量は獣医師と相談して決めます。アレルギーや好みに合わせ、バランスよく与えてください。

リン摂取の制限

リンが腎臓に与える影響

リン(リン酸)は腎臓病で特に問題になります。血中リンが高くなると腎臓の負担が増え、体内のカルシウムと結びついて血管や臓器に沈着しやすくなります。元気がなくなったり、骨や心臓に影響が出ることがあります。

避けるべき食材(具体例)

  • チーズや全脂乳製品
  • ほうれん草、しらす、煮干し、魚卵(イクラ・タラコ)
  • 大豆製品(豆腐、納豆、味噌)
  • 加工食品や塩漬けの魚(保存料でリンが多いことがあります)

低リンの代替食材

白身魚や皮を取った鶏むね肉、白米、さつまいも、りんご、キャベツなどが比較的低リンです。卵は卵白が低リンで、卵黄はリンが多い点に注意してください。

リン吸着剤の併用

獣医師が処方するリン吸着剤は、食事中のリンを結びつけて排泄を助けます。食事と一緒に与えることが重要です。薬の種類や量は獣医師の指示に従い、血液検査で効果を確認してください。自己判断で中止しないでください。

調理と与え方のポイント

茹でて湯を捨てると、野菜の一部のリンを減らせます。市販の療法食を使う場合はラベルの「リン」や「P」の表示を確認してください。定期的な血液検査でリンの値を見ながら、獣医師と相談して調整しましょう。

塩分管理

塩分の役割と腎臓への影響

塩分は体の水分バランスを保ちますが、腎機能が落ちた犬では塩分の処理が難しくなります。塩分が多いとむくみや血圧上昇を招き、腎臓への負担を増します。だから塩分を控えることが大切です。

塩分が少ない食材と調理のポイント

無塩の鶏むね肉や白身魚を中心に与えます。野菜はキャベツ、にんじん、かぼちゃなどを茹でるか蒸してから与えます。調理は味付けを一切しないでください。煮汁に塩分が移ることがあるので、茹でた後は水気を切って冷ましてから与えます。

避けるべき食品

人間の食事、漬物やハム、ベーコン、チーズなどの塩漬け食品、スナック菓子、塩分の多い缶詰や加工品は避けます。市販のおやつや缶詰でも食塩相当量が高いものがありますから注意してください。

ラベルの読み方と選び方

ペットフードや缶詰は「食塩相当量」や「ナトリウム」表示を確認します。数値が低い製品を選び、同じタイプで比較して一番少ないものにします。無塩表示や低ナトリウムの明記があると分かりやすいです。

与え方の注意点

味付けを絶対にしないこと、塩分を減らした食事に切り替えるときは少しずつ行って様子を見ます。むくみや食欲低下、呼吸が速いなど気になる症状が出たら獣医に相談してください。

野菜の選択と調理方法

序文

腎臓病の犬には、カリウムが少なめで消化しやすい野菜を選ぶと安心です。ここでは具体的な食材と調理のコツをわかりやすく説明します。

選ぶべき野菜

  • キャベツ:やわらかく煮ると食べやすく、カリウムが比較的少なめです。
  • にんじん:甘みがあり消化に優れます。薄く切って火を通すと良いです。
  • カリフラワー:茹でて細かく刻むと与えやすくなります。

避ける食材

バナナ、アボカド、ほうれん草、さつまいも、じゃがいもはカリウムが高めです。これらは量を控えるか獣医と相談して下さい。

おすすめの調理方法

  • 茹でる:カリウムは水に溶けやすいため、たっぷりの湯で茹で、茹で汁は捨てます。これで含有量を減らせます。
  • 刻む・すり潰す:茹でた野菜を細かく刻むかピューレ状にすると消化が楽になります。小さくして混ぜることで食べやすくなります。
  • 蒸す・焼くは避けがち:蒸すと成分が残りやすく、焼くと水分が飛んで濃縮することがあります。

量と与え方の目安

少量を主に考えてください。野菜は全体の一部として、1回あたり小さじ〜大さじ程度から試し、便や食欲を観察します。体重や腎機能で適量は変わるので、必ず獣医と相談してください。

調理時の注意点

塩や調味料は使わないでください。玉ねぎやにんにくは犬に有害ですので絶対に与えないでください。冷ましてから与え、食後に体調の変化がないか確認しましょう。

第8章: おやつの選択

おやつ選びの基本

腎臓病の犬にはおやつも治療の一部と考え、慎重に選びます。おやつは量を控え、主食の療法食を優先してください。おやつに含まれるリンや塩分、たんぱく質量を意識します。

推奨されるおやつ

  • 少量のりんご(皮をむき、種を除く)
  • 療法食メーカーの低リン・低ナトリウムおやつ
  • 療法食のドライフードを少量トリートとして使う方法

避けるべきおやつ

  • ジャーキー類(塩分・添加物が多い)
  • 乳製品(チーズ、ヨーグルトは控える)
  • 人間用のクッキーやパン(塩分や砂糖が多い)
  • 内臓肉や高リンの加工品

与え方のポイント

  • おやつは1日の摂取カロリーの一部として数えます。
  • 訓練用は小さく切り、回数を増やしても総量を少なくします。
  • 新しいおやつを試すときは少量から始め、体調の変化を観察してください。

相談のすすめ

個々の病状で適切なおやつは変わります。獣医師と相談して、愛犬に合った選択をしてください。

水分摂取の重要性

なぜ水分が大切か

腎臓は血液をろ過して老廃物を出します。十分な水分があるとその働きが保たれ、腎臓への負担を減らします。水分不足だと老廃物が体内にたまりやすくなり、症状が悪化します。

日常でできる工夫

  • 常に新鮮な水を複数箇所に置く(家の中と寝床近くなど)。
  • 水をこまめに替え、清潔な器を使う。陶器やステンレス製の器が衛生的です。
  • 自動給水器や流れる水に興味を示す犬もいます。試してみてください。

食事で水分を補う方法

  • ウェットフードやぬるま湯でふやかしたドライフードを使うと摂取量が増えます。
  • 低塩の鶏ガラスープや水で薄めたスープを少量与えるのも有効です。味が濃くならないよう注意してください。

水分不足のサインと対処

  • 口の中が乾く、ぐったりする、皮膚の弾力が落ちるなどが見られたら量を増やし、すぐに獣医師に相談してください。自宅で無理に大量に飲ませるより、専門家の指示を仰ぐ方が安全です。

獣医師に相談するタイミング

  • 飲水量が急に減った、尿の量や色が変わった、元気がない場合は早めに受診しましょう。飲水管理は腎臓病の治療で重要な要素です。

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