犬用フード・おやつ

子犬のご飯の量を正しく計算して健康管理する方法

はじめに

目的

この文書は、子犬にあげるご飯の量を正しく計算する方法を丁寧に解説します。獣医領域で用いられるRER(安静時エネルギー要求量)とDER(1日のエネルギー要求量)を使い、月齢・体重別の目安だけでなく、愛犬一頭一頭に最適な量を求める手順を示します。

誰のために

子犬を飼っている方、これから迎える予定の方、動物看護師やトリマーなど、実務で子犬の体重管理に関わる方に役立ちます。獣医師ほど専門的でない方にも分かりやすく説明します。

本書の使い方

第2章で計算する理由を説明し、第3章で全体の流れを示します。第4〜6章で実際の計算をステップごとに丁寧に解説します。実例と計算式を使って、最後には1日のご飯のグラム数まで求められるようになります。

本書で使う用語

  • RER:安静時に必要なエネルギーの目安(簡単に言うと“基礎のエネルギー”です)。
  • DER:一日に必要な総エネルギー(活動や成長を含めた値です)。

注意点として、計算は目安です。個体差や獣医師の判断を優先してください。

なぜ“計算”して子犬のご飯量を決めるべきか

子犬期は成長が早く、栄養のバランスが直に影響します

子犬は短期間で体重と骨格が大きく変わります。必要なエネルギーが不足すると発育不良や免疫力低下につながり、過剰に与えると肥満や関節の問題を招きやすくなります。成長期の食事は大人と同じ感覚では管理できません。

市販フードの目安は「参考値」にすぎません

パッケージに書かれた給餌量は平均的な目安です。フードのカロリー表示(kcal/100g)が違えば、同じグラム量でも摂取エネルギーは変わります。例えば高カロリーのフードでは少量で十分な一方、低カロリーのものは量が増えます。

必要量は個体差で変わります

体重、月齢、性別、去勢避妊の有無、活動量、フードのカロリー密度――これらで必要エネルギーは変動します。体重が同じでも月齢が違えば増量の割合が変わるため、定期的な見直しが必要です。

RERとDERで「個別に」計算する利点

動物栄養学で使うRER(基礎的エネルギー要求量)と、それに係数をかけたDER(実際の一日必要量)を使うと、個体ごとに必要量を見積もれます。多くの獣医師や専門サイトが推奨する方法で、過不足を減らし成長を適切にサポートできます。

計算することで得られること

過少給餌や過剰給餌を防げます。成長曲線に合わせて調整しやすく、フード変更時も対応できます。体重変化を見ながら定期的に計算すれば、健康的な成長管理が可能です。

子犬のご飯量計算の全体フロー(3ステップ)

子犬の給餌量を求める方法は、シンプルな3つのステップで進めます。順番に計算すると、その子の体重・月齢・使っているフードに合った1日の総量が分かります。

ステップ1:体重からRER(安静時エネルギー要求量)を出す

RERは“安静時に必要なエネルギー”です。計算式は一般的に次の通りです。

RER(kcal/日) = 70 × 体重(kg)^0.75

例:体重5kgの子犬なら、70 × 5^0.75 ≒ 234 kcal/日となります。これは基礎となる数字です。

ステップ2:RERに活動係数をかけてDERを求める

DERは1日に必要な総エネルギー量です。月齢や活動量に応じた係数をかけます。目安は次の通りです(個体差あり)。

  • 生後0〜4ヶ月:RER × 約3.0
  • 生後4〜12ヶ月:RER × 約2.0〜2.5
  • 成犬の維持:RER × 約1.6(参考)

例:先の5kg・3か月の子犬ならDER ≒ 234 × 3 = 702 kcal/日。

ステップ3:DERをフードのカロリーからグラムに換算する

お使いのフードのエネルギー表示(たとえば「350 kcal/100 g」)を使い、必要量をグラムに直します。

計算式:1日のグラム量 = DER × 100 ÷(フードのkcal/100 g)

例:DER 702 kcal、フードが350 kcal/100 gなら、702 × 100 ÷ 350 ≒ 201 g/日。

この3ステップで、まずRERを出し、次に個体に合う係数でDERを決め、最後にフードの表示からグラムに換算します。体重や体調を定期的に確認し、必要なら量を調整してください。

ステップ1 – 子犬のRER(安静時エネルギー要求量)の計算

RERとは

RER(安静時エネルギー要求量)は、犬が安静にしているときに1日に必要なエネルギー(kcal)です。成長や運動を考慮する前の基礎値とお考えください。

計算式(主に2種類あります)

1) 正式式:RER = 70 × 体重(kg)^0.75
2) 簡易式:RER = 30 × 体重(kg) + 70

どちらも日常の目安として使えますが、正式式の方が体重変化に対して理論的に精密です。

計算の手順(実際にやってみる)

  • 体重を正確にkgで測ります。小数点1桁まで測れる体重計が望ましいです。
  • 電卓で式に当てはめます。端数は5〜10kcal程度で四捨五入して問題ありません。

例:体重3kgの子犬
- 正式式:70 × 3^0.75 ≒ 70 × 2.28 ≒ 159.6 → 約160 kcal
- 簡易式:30 × 3 + 70 = 160 kcal
両者はほぼ同じ値になります。

使い分けと注意点

  • 生後間もない子、極端に小さい・大きい体重の子は正式式を優先してください。
  • 体重が変わればRERも変わります。成長期は数週間ごとに再計算してください。
  • RERは基礎値です。次のステップで活動係数をかけて実際の1日の必要量を出します。

ステップ2 – RERに活動係数をかけてDERを計算

要点

DER(1日に実際に必要なエネルギー量)は、RER(安静時エネルギー要求量)に「活動係数」をかけて求めます。

式:
DER = RER × 活動係数

活動係数の目安

  • 生後4か月未満:3.0
  • 生後4〜9か月:2.5
  • 生後10〜12か月:2.0

これらは成長段階の平均的な目安です。個体差や品種、避妊・去勢の有無で調整が必要です。

計算の手順(実際の例)

  1. まずステップ1で求めたRERを用意します(例:体重3kgのRERは約160kcal)。
  2. 年齢に合った活動係数を選びます(例:3か月=3.0)。
  3. 掛け算でDERを求めます。
    例:RER 160kcal × 3.0 = 480kcal(1日あたり)

メモと注意点

  • 求めたDERは目安です。体重の増え方や体型(やせ気味・太り気味)を見て給餌量を調整してください。
  • 成長が早い大型犬や肥満傾向の犬は係数を少し下げることがあります。獣医師と相談してください。
  • 日々の体重を記録し、週に1回程度チェックすると変化に早く対応できます。

次は、このDERを使って1日のご飯の量(グラム)を求めます。

ステップ3 – DERから1日のご飯の量(g)を計算する

計算の基本式

フードの100gあたりのカロリー(kcal/100g)がわかれば、1日の給餌量は次の式で計算できます。

1日の給餌量(g) = DER(kcal/日) ÷ (フードのkcal/100g) × 100

実際の計算例

  • 例1: DER = 480 kcal、フード = 350 kcal/100g
    480 ÷ 350 × 100 ≒ 137 g
  • 例2: 体重4kgの子犬でDER = 316 kcal、フード = 300 kcal/100g
    316 ÷ 300 × 100 ≒ 105 g

小数点と四捨五入

計算結果は扱いやすい単位に丸めます。小さい子犬は少量の誤差が体重に影響するため、1〜5g単位で調整してください。

給餌回数と分割

1日の量を複数回に分けて与えます。子犬は胃が小さいため、2〜4回に分けると消化も安定します。朝・昼・晩に均等に分けるか、獣医の指示に合わせてください。

実務上の注意点

  • フードの表示が「kcal/100g」でない場合(たとえば「kcal/カップ」)は、袋の裏やメーカーに換算方法を確認してください。
  • 活動量や成長段階で必要カロリーは変わります。体重の増減を週に1回チェックし、必要なら給餌量を調整してください。

これでDERから具体的なグラム量を出せます。計算して与え、様子を見ながら微調整してください。

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