はじめに
目的
本調査はマルチーズの適切な給餌量と食事管理について、わかりやすくまとめることを目的としています。体型や年齢に応じた給餌の考え方、具体的な計算方法、日常で気をつける点を丁寧に解説します。
対象読者
これからマルチーズを飼う方、既に飼っているが給餌量に不安がある方、獣医師の説明を補う参考情報が欲しい方に向けています。専門用語はできるだけ避け、具体例で補足します。
本書の構成
第2章〜第8章で順に、体型と基本情報、年齢別の食事量と回数、計算方法、給餌量決定のポイント、食事回数とおやつの管理、推奨されるフードの特性、給餌時の注意点を扱います。日常で役立つ実践的な内容を中心にしています。
使い方と注意点
本書は一般的な指針を示します。個体差や健康状態により給餌量は変わりますので、体重変化や体調に注意し、気になる点は獣医師に相談してください。
マルチーズの基本情報と体型
種類とサイズ
マルチーズはJKCの分類で体高20〜25cm、体重3〜4kg以下の小型犬に入ります。成犬の平均体重は2〜3kg程度で、小型犬の中でも特に小さな犬種です。被毛は長く白が基本で、見た目は華奢に見えても筋肉はしっかりしています。
体型の特徴と理想の状態
理想的なマルチーズは、肋骨が軽く触れて確認でき、腰に向かってくびれが見える体型です。触って肋骨が全く分からない場合は太り気味、肋骨が浮いて見える場合はやせすぎのサインです。日常的に体重と触診でチェックしてください。
体格が給餌量に与える影響
小さな体重は給餌量を決める最大の要素です。体重が少ないと1回あたりの食事量は少なくなりますが、体重1kgあたりの代謝は比較的高く、回数を分けて与える必要があります。成長期や高齢期で代謝が変わるため、年齢に応じた調整も重要です。
個体差と注意点
同じ体重でも活動量や体格(筋肉量)で必要量は変わります。避妊・去勢後は必要エネルギーが下がることが多いので注意してください。小さな口と歯の特徴から、フードは粒の大きさや形状を合わせると食べやすくなります。定期的に体重と体格チェックを行い、微調整していきましょう。
年齢別の食事量と回数
子犬期(生後~6ヶ月)
体重や体高が小さい時期は消化器も未熟です。1日3~4回に分けて与えます。フードはお湯でふやかして柔らかくすると飲み込みやすくなります。生後3~4ヶ月は成長が著しいため、食事制限は避け、欲しがるだけ与えて構いません。体重の増え方を毎週確認し、極端な増減があれば獣医に相談してください。
成長期(生後6~8ヶ月)
骨や筋肉が作られる大事な時期です。栄養不足や急激な制限は避け、1日3回に分けて規則正しく与えます。徐々に成犬用に切り替える準備を始めますが、切り替えは少しずつ行ってください。
成犬期(生後8ヶ月~7歳)
基本は1日2回です。マルチーズは胃が小さいため、体調や活動量によっては1日2~3回の少量給餌が向きます。成犬用フードへは数日〜2週間かけて徐々に移行します。体重管理と体型チェックを習慣にしてください。
老犬期(7歳以上)
運動量が減り代謝も落ちます。高タンパクで低カロリーのシニア用フードを検討します。食事回数は1日2回を基本に、消化や食欲に合わせて調整します。塩分や脂肪に注意し、定期的に体重と体調を確認してください。
具体的な給餌量の計算方法
はじめに
具体的な給餌量は「犬が1日に必要とするカロリー(DER)」と「フードのカロリー(100gあたり)」を使って計算します。ここでは手順をわかりやすく示します。
手順
- DERを確認または算出する
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獣医や食事表で示されたDERを使ってください。自己計算する場合は「安静時代謝量(RER)=70×体重(kg)^0.75」を求め、年齢や活動量に応じた係数をかけてDERにします(例:子犬や活動的な犬は係数が大きくなります)。
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フードのカロリーを確認する
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パッケージに「kcal/100g」や「kcal/カップ」で表示があります。100gあたりの数値が分かると計算しやすいです。
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給餌量を計算する
- 計算式:1日の給餌量(g)=DER(kcal) ÷ (フードのkcal/100g)×100
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例:子犬のDERが480kcal、フードが350kcal/100gの場合
480 ÷ 350 × 100 ≒ 137g/日 -
コスト計算の例
- 高品質フード「モグワン チキン&サーモン」の例では、上記の給餌量だと1日あたり約194円、1か月(31日)で約6,014円になります。
- 計算方法:1日量(g)÷100×100gあたりの価格=1日コスト
実用のコツ
- キッチンスケールでグラムを正確に量ってください。少量なら計量スプーンより秤が確実です。
- 体重や体調を週単位でチェックし、増減があれば給餌量を調整してください。
- おやつ分のカロリーも合算して過剰にならないよう管理します。
給餌量決定の重要なポイント
給餌量は「目安」であること
パッケージに書かれた量は一般的な目安です。個々のマルチーズは代謝や生活環境が違うため、書かれた通りに与えても適切とは限りません。
運動量と生活環境に合わせて調整する
散歩や遊びが増えればエネルギー消費も増えます。逆に室内で静かに過ごす時間が長ければ必要量は減ります。目安として運動量が明らかに増えた時は10〜20%増やし、減った時は10%前後減らすと分かりやすいです。
定期的な体重測定と肉付きチェック
週1回〜月1回の体重測定を習慣にしてください。抱っこしての体重差でも構いません。スキンシップで肋骨の触感、腰のくびれを確認すると肉付きの変化に気付きやすいです。
調整の具体的な方法
フードは計量スプーンやキッチンスケールで正確に測り、1回の増減は全体の5〜15%を目安にします。体重が徐々に増えるなら減らし、減るなら増やすというシンプルな対応で大丈夫です。
異常時は獣医師へ相談
急な体重変動、食欲低下、下痢などが続く場合は早めに受診してください。薬や病気で給餌量の調整が必要なことがあります。
おやつ・トリーツの管理
おやつも1日の総カロリーに含めて考えます。与える量を目安の5〜10%以内に抑えると体重管理がしやすくなります。
具体的な観察と小さな調整を積み重ねることで、愛犬に合った適切な給餌量が見えてきます。
食事回数とおやつの管理
概要
マルチーズは基本的に1日2回の給餌が適しています。子犬や高齢犬は回数を増やす必要があります。おやつは愛情表現やしつけに便利ですが、総カロリーに含めて管理します。
年齢別の回数目安
- 子犬(生後2〜6か月):1日3〜4回。成長を支えるために回数を分けます。
- 若成犬〜成犬:1日2回。朝と夕に分けると消化が安定します。
- 高齢犬:1日2〜3回。消化力や食欲に応じて回数を増やします。
給餌時間と間隔の目安
朝・夕は同じ時間帯に与えます。食事間隔は8〜12時間を目安にして、規則正しい生活リズムを作ります。
おやつの管理方法
おやつは1日の摂取カロリーの目安の中に入れます。目安として総カロリーの10%以内に抑えると太りにくいです。商品のカロリー表示を確認し、小さく切るか1個分のカロリーを把握してから与えます。
トレーニング用のおやつ
しつけでは小さくて低カロリーのものを使います。口切れしやすいフードや、小さく切った茹でた鶏胸肉などが便利です。成功したらすぐ報酬を与え、回数でなく量で調整します。
与え方のルールと注意点
- おやつの時間を食事時間と混同しない。
- 食欲が落ちたらおやつを減らしてまずは食事を優先する。
- 体重を週1回確認し、増えすぎたらおやつをさらに減らす。
具体例(成犬)
- 朝:フード(通常量)
- 昼:おやつ(トレーニングで数回、合計は1日の10%未満)
- 夕:フード(通常量)
体重管理と調整
体重変化は給餌回数よりも総カロリーで決まります。回数は生活リズムに合わせて調整し、カロリーの出入りを管理してください。
推奨されるフードの特性
小粒で食べやすい形状
マルチーズには直径1cm以下の小粒タイプをおすすめします。小さい粒は噛みやすく飲み込みやすいので、誤飲や喉詰まりのリスクを減らせます。具体例としては直径6〜8mm程度が目安です。
脂肪分とカロリーのバランス
脂肪分が控えめで、適切なカロリー設計のフードを選びます。体重管理がしやすく、肥満予防につながります。パッケージの成分表を確認し、脂質割合が過剰でないものを選んでください。
関節・免疫サポート成分
オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)やグルコサミンは関節ケアや免疫力の維持に役立ちます。これらを含むフードは運動量が多い犬や年齢を重ねた犬に向きます。
涙やけ・皮膚トラブル対策
涙やけが出やすい犬には、低アレルゲンや消化の良いタンパク源を使ったフードが効果的です。ビタミン・ミネラルやオメガ6/3のバランスも肌の健康に重要です。
原材料と添加物のチェック
主原料が明確で肉類が先に表記されているもの、人工着色料や過剰な保存料が少ないものを選びます。具体例として「鶏肉(第一主原料)」と明記された製品は分かりやすいです。
フードの種類と使い分け
ドライは歯のケア、ウェットは嗜好性向上に向きます。混ぜて与えることで栄養バランスと食いつきを両立できます。
切り替え方法
新しいフードは1〜2週間かけて徐々に切り替えます。最初は新旧を混ぜ、少しずつ比率を変えていくと消化不良を防げます。
給餌時の注意点
適量を守る
過剰な給餌は肥満や消化不良の原因になります。体重や年齢に合わせた目安量を守り、必要なら獣医と相談してください。例えば体重2.5kgの成犬なら、与える量をパッケージの目安と体重で調整します。
決まった時間と場所で与える
毎日同じ時間・静かな場所で給餌すると、食事リズムが整います。落ち着いて食べられる環境を用意してください。
残したときの対応
少量を残すなら無理に食べさせず、次回量を少し減らします。丸一日以上食べない、吐く、ぐったりする場合は速やかに動物病院へ連絡してください。
おやつの管理
おやつは1日の総カロリーの10%以内に抑えます。トレーニング用は小さく切り、回数を管理してください。
与えてはいけないもの
チョコレート、玉ねぎ、ぶどう、アルコールなどは中毒を起こします。人の食べ物を与えないでください。
水分補給
新鮮な水を常に用意します。食後や運動後の水分補給を忘れないでください。
体調変化の観察
便の回数や状態、体重の増減を定期的にチェックします。変化があれば早めに対応してください。