はじめに
本資料は大型犬の食事量に関する検索キーワード調査の結果をもとに、飼い主の方が実際に役立てられるように整理したガイドです。大型犬の定義や基本的な給餌量の考え方、犬種別の具体例、計算方法、年齢や活動量による調整、出産・授乳期の扱い方、給餌量を見直すための観察ポイント、おやつやトッピングを含めた考え方、そして市販フードのパッケージ表記の活用法までを網羅します。
目的
- 飼い主が自分の大型犬に適した給餌量を見つけられることを最優先にしています。
- 検索で多い疑問や誤解を分かりやすく解説します。
対象読者
- 初めて大型犬を飼う方、給餌量に不安がある方、獣医やトレーナーの基本知識を補いたい方などです。
読み方のポイント
- 各章は実践的な情報を優先します。まずは基本を押さえ、必要に応じて犬種別や年齢別の章を参照してください。
注意点
- 個体差が大きいため、本資料は目安としてお使いください。体重や体型、健康状態に応じて獣医師に相談することをおすすめします。
大型犬の定義と給餌量の基本
定義
大型犬とは一般的に体重25kg以上の犬を指します。特に30kg～60kgの範囲は給餌の目安が分かりやすいため、本章ではこの範囲を中心に説明します。
給餌量の基本目安
- 体重30kgの場合：ドライフード1日あたり約360g
- 体重60kgの場合：ドライフード1日あたり約780g
絶対量は小型犬より多くなりますが、体重1kgあたりの必要カロリーは大きい犬ほど低くなる傾向があります。つまり体重が増えても比例して給餌量を増やす必要はありません。
個体差を考慮するポイント
- 運動量：散歩や運動が多ければ増量を検討
- 体型や筋肉量：痩せているなら増やし、ふっくらなら減らす
- 年齢・健康状態：高齢や病気のときは調整が必要
- 妊娠・授乳期は別章参照
実践的な与え方
- 一日2回に分けて与えると消化に優しい
- 体重は月に1回程度計測し、変化に応じて10％前後ずつ調整
- 便の状態（硬さ・回数）を観察し、適宜増減する
フード選びの注意
大型犬用の粒サイズやカロリー密度を確認してください。無理に多く与えず、栄養バランスの良いフードを選ぶと管理が楽になります。
最後に
給餌量はあくまで目安です。体重や体調に不安があれば獣医師に相談してください。
犬種別の給餌量の具体例
以下は、成犬で標準的な活動量を持つ大型犬の1日あたりの給餌量の目安です。使用するのは一般的なドライフードを想定しており、パッケージのカロリーや個体差で変わります。
代表的な大型犬の給餌量目安
- ゴールデンレトリーバー：おおよそ750g前後／日（標準体格）
- シベリアンハスキー：おおよそ600g前後／日
- ラブラドール・レトリーバー：700〜800g／日
- ジャーマン・シェパード：650〜800g／日
- ロットワイラー：600〜900g／日（筋肉質な個体は多め）
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ：700〜1000g／日
- グレートデーン（大型〜超大型）：900〜1500g／日（個体差大）
注意すべき点と調整の考え方
- 上の数値はあくまで目安です。体重や体格（やせ気味・太り気味）、運動量で増減します。
- 若い成犬で活発な子は多めに、室内で静かな生活の子は少なめに調整します。
- 体重測定と体型のチェックを定期的に行い、必要なら獣医やブリーダーに相談してください。
給餌量の計算方法
以下では、給餌量を決める3つのステップをわかりやすく説明します。
ステップ1：RER（安静時エネルギー要求量）の計算
RERは基礎となる必要エネルギーです。計算式は次の通りです。
RER = 70 × （体重の0.75乗）
（説明）体重を0.75乗することで、体重に応じた基礎代謝が反映されます。小数点は気にせず、計算機で求めてください。
ステップ2：DER（1日のエネルギー要求量）の計算
RERに犬の活動レベルを示す係数を掛けます。一般的な目安は1.4～2.0です。
- 落ち着いた室内犬：1.4〜1.6
- 活発で運動する犬：1.6〜1.8
- 非常に活動的または作業犬：1.8〜2.0
DER = RER × 活動係数
ステップ3：給餌量（g）の算出
ドッグフードの100gあたりのカロリー（パッケージ記載）で割り、100を掛けます。
給餌量（g/日） = DER ÷ （100gあたりのkcal） × 100
具体例（30kgの大型犬、活動係数1.6、フード350kcal/100g）
1) RER = 70 × 30^0.75 ≒ 897 kcal
2) DER = 897 × 1.6 ≒ 1,436 kcal
3) 給餌量 = 1,436 ÷ 350 × 100 ≒ 410 g/日
小数点は四捨五入して、実際は410gを1日で分けて与えます。
計算時の注意点
- 体重は正確に測ってください。誤差が結果に影響します。
- トリーツやトッピングのカロリーも加算してください。目安としては総カロリーの10〜15%以内が安全です。
- 体重の増減や体型（やせすぎ・太りすぎ）で係数を調整します。気になる場合は獣医師に相談してください。
この3ステップで一度計算し、数週間ごとに体重と体型をチェックして微調整してください。
年齢による給餌量の調整
給餌頻度の目安
- 8～12週齢：1日3～4回。消化能力が未熟なので回数を多くして少量ずつ与えます。
- 3～6ヶ月：1日3回。成長が早い時期でエネルギーをこまめに補給します。
- 6～12ヶ月：1日2回に移行。歯や胃腸の発達に合わせます。
- 成犬（1～7歳）：1日2回が基本。安定した食事リズムを作ります。
栄養のポイント
子犬は成犬よりタンパク質、カルシウム、リンを多く必要とします。特に大型犬の子犬は骨の成長が速いため、過剰なカロリーやカルシウムの一時的な追加は成長障害を招くことがあります。成長期用フードを用いて、メーカーの推奨量を目安に与えてください。
シニア期は運動量が落ち、基礎代謝も低下します。低カロリーで良質なタンパク質、関節をサポートする成分（グルコサミン等）を含むフードへの切替えを検討してください。
切替えと調整の方法
フードの切替えは1～2週間かけて徐々に行います。体重や体格を月に一度チェックし、体型がふっくらし過ぎれば給餌量を減らします。目安として理想体重から10%程度のずれがある場合は再調整を検討してください。
観察ポイント
食欲、便の状態、体重の推移、動きやすさを観察します。異常があれば獣医師に相談してください。日々の観察で年齢に応じた適切な給餌量を維持できます。
出産・授乳中のメス犬の給餌
概要
出産後の雌犬は授乳で非常に多くのエネルギーを消費します。通常の給餌量に対して約50%増量しても問題ないことが多く、母犬と子犬の健康を守るために給餌量を増やすことが基本です。
給餌量の目安と具体例
- 目安：通常給餌量×1.5
- 具体例：普段400g/日なら600g/日、800g/日なら1,200g/日
個体差がありますので、上限や下限は体格や子犬の数で調整してください。
回数と食事の質
- 回数：1回で大量に与えるより、1日3〜6回に分けるか食べ放題にして小分けで食べさせる方法が安全です。
- 品質：高カロリー・高たんぱくの子犬用フードを混ぜると効率よく栄養を補えます。新鮮な水を常に用意してください。
注意点
- 急に倍増させず、数日かけて増やすと胃腸への負担が減ります。
- 体重が減る、乳房の熱や膿、食欲低下、脱水がある場合は速やかに獣医に相談してください。
- 離乳後は2〜3週かけて通常量へ徐々に戻します。
よくある質問
Q: 何週間増やすべき？
A: 授乳のピークは生後2〜4週。乳量と母犬の体調を見て調整します。
Q: おやつは？
A: 高カロリーな人用食品は避け、獣医と相談のうえ与えてください。
給餌量調整のための観察ポイント
給餌量を決めた後も、定期的に観察して微調整することが大切です。ここでは日常で見ておきたいポイントと、異常を感じたときの対処法を分かりやすく説明します。
1) 体重測定と頻度
- 週に1回、同じ時間帯・同じ体勢で体重を測ります。朝の散歩後や給餌前が安定します。
- 体重の増減は数週間の傾向で判断します。徐々に増えるなら給餌量を少し減らし、徐々に減るなら少し増やします（目安として5〜10％ずつの調整をおすすめします）。
2) 便の観察
- 理想：形があり、触れる程度のかたさでニオイも強すぎない。
- 便が柔らかく掴めない（下痢・粘性が強い）：食事量が多すぎるか脂肪や消化に負担のある成分が含まれている可能性があります。量を減らすかフードを見直します。24〜48時間で改善しない場合は受診を検討します。
- 便が硬い・乾燥している：水分不足か給餌量が少ないことがあります。新鮮な水を増やす、またはフード量をわずかに増やします。
3) 体型と触診（見た目と触り心地）
- 肋骨がうっすら触れる程度でウエストにくびれがあるのが理想です。
- 肋骨が全く触れないほど脂肪が付いているなら給餌量を減らします。逆に肋骨が浮き出して見える・触れるなら増やします。
4) 行動・被毛・体調の変化
- 食欲低下、元気がない、被毛がぱさつく場合は栄養不足や別の病気の可能性があります。
- 食欲が急に増えたり、異常に水を飲む場合も要注意です。長く続くなら獣医に相談します。
5) 記録をつける習慣
- 日付、給餌量、便の状態、体重、気になる変化を簡単に記録します。記録があると調整の判断が楽になります。
6) 調整のポイントと受診の目安
- 量の変更は一度に大きくせず、1回あたり5〜10％を目安にします。変更後は1〜2週間様子を見ます。
- 嘔吐や血便、急激な体重変化、2日以上続く下痢や元気消失があれば早めに獣医に相談してください。
おやつやトッピングの考慮
目安と理由
1日の摂取カロリーの約10%をおやつやトッピングに充てるのが目安です。主食の給餌量をそのままにしておやつを追加するとカロリー過多になり、肥満の原因になります。おやつも総摂取量に含むことを常に意識してください。
具体的な計算例
- 1日の必要カロリーが1500 kcalの犬なら、おやつは約150 kcalが目安です。
- 市販の小さなビスケットが1個30 kcalなら、5個までが目安になります。
選び方と注意点
- 低カロリーで栄養価のあるものを選びます（茹でたにんじんやりんごの薄切りなど）。
- 人間の食品は危険なものがあります（チョコレート、玉ねぎ、ぶどうなどは与えない）。
- 成分表示のカロリーを確認し、1日分に換算してください。
与え方の工夫
- 訓練用は小さく折るか薄く切り、回数で与えても総カロリーを守ります。
- トッピングは主食の一部を代替する形にするとバランスが保てます。
- 計量スプーンやキッチンスケールで正確に量ります。
特別な状況
- 肥満傾向の犬は5%程度に減らし、褒める・運動で代替します。
- 子犬・妊娠・授乳期は獣医と相談して増減を判断してください。
実践のポイント
- おやつのカロリーを記録し、週ごとに体重と照らし合わせます。
- 日々の観察で食欲や体型の変化に応じて調整してください。
パッケージ表記の活用
はじめに
与えているフードのパッケージ表記は、日常の給餌で最も実用的な目安です。製品ごとにカロリーや粒の大きさが違うため、表記を基準に調整します。
見るべきポイント
- 理想体重ごとの推奨量（例：体重20kgなら○g/日）
- ライフステージ表示（パピー、成犬、シニアなど）
- 活動レベルの目安（低〜高活動）
- 100gあたりのカロリー、1カップ当たりの重さ
- 計量カップの有無・基準
具体的な活用手順
- 犬の現在体重と理想体重を確認します。体型評価（やせ・適正・太り気味）も記録します。
- パッケージの該当欄（体重とライフステージ）を見て、推奨量を読み取ります。
- 1回分に換算して朝夕に分けるなど給餌回数を決めます。カップ表記がある場合は正確に測ります。
- 数週間観察し、体重や肋骨の触れ具合で増減（約10〜15%以内）を行います。
注意点
- おやつやトッピング分のカロリーも考慮してください。
- 同じブランドでも製品によって推奨量が違います。切替時は徐々に移行して様子を見ます。
- 獣医の指示がある場合はそれを優先します。