はじめに
目的と対象読者
この章では、本記事の目的と想定する読者をやさしく説明します。対象は、年をとって体重が落ちたり食が細くなったりしている愛犬を介護中の方、あるいは今後に備えたい飼い主さんです。少量でエネルギーを補える高カロリーフードの選び方を、難しい言葉は使わずに丁寧に伝えます。
老犬の変化と食事の重要性
老犬は筋肉が落ちたり、歯や消化器の調子が変わったりして、これまでと同じ量や種類の食事では必要な栄養を取れなくなることがあります。体重減少や食欲低下は免疫力低下や筋力低下につながるため、食事でできる対策がとても大切です。少量で効率よくエネルギーを補給でき、消化にやさしいフードが役立ちます。
本記事での進め方
第2章から第5章で、必要となるケース、フード選びのポイント、具体的なフードのタイプ、与え方の注意点を順に解説します。まずは現在の愛犬の状態を確認し、次章で必要性の有無を判断する手助けにしてください。
老犬に高カロリーフードが必要なケース
はじめに
老犬は加齢で体の機能が変わり、今まで通りの量や種類のフードでは栄養が足りなくなることがあります。ここでは高カロリーフードが役立つ代表的なケースをやさしく説明します。
1. 体重が落ちてきたとき
肋骨が浮いて見える、抱っこすると軽く感じる、体重が徐々に減るときは要注意です。高カロリーの食事を少量ずつ与えることで、効率よくエネルギーを補えます。
2. 食欲が落ち一度にたくさん食べられないとき
食欲不振や満腹感の低下で一回の食事量が減る場合は、少量で高エネルギーなフードが便利です。嗜好性の高いものや温める工夫で食いつきがよくなります。
3. 咀嚼・嚥下が難しい介護期
歯が弱くなったり飲み込みにくくなった老犬には、ペースト状や流動食タイプの高カロリーフードが向きます。シリンジやスプーンで与えやすく、確実にカロリーを補給できます。
4. 病気や治療で体力が落ちているとき
手術後や慢性疾患、がん治療中などで消耗が激しい場合は、高カロリー・高たんぱくの補給が必要です。投薬との相互作用や消化状態は獣医師に相談してください。
与える前のチェックポイント
- 体重と体格(ボディコンディション)を記録する
- 歯や口の状態を確認する
- 嘔吐や下痢がある場合は避けるか獣医師に相談する
- 少量から試し、変化を観察する
これらのケースでは高カロリーフードが有効ですが、個々の状態に合わせて獣医師と相談して使ってください。
フード選びのポイント
まず押さえるべき目安
老犬には100gあたり380〜440kcal前後の高カロリードライや、栄養密度の高いウェットを目安に選びます。パッケージに「少量で高カロリー」「栄養補給」「介護食」などの表示があると分かりやすいです。
成分で確認すること
- たんぱく質:25〜30%以上を目安に。筋肉維持に重要です。
- 脂質:12〜20%程度。エネルギー源となり、嗜好性も上がります。
- ビタミン・ミネラル:表示に基礎的な配合があるか確認します。
表示の見方と選び方のコツ
- 「シニア」「ハイシニア」表記がある商品を優先します。2. 原材料は肉や魚が先に記載されているか確認します。3. 少量でカロリーが取れるか、成分表で計算します。
実際の選定手順(簡単)
- カロリーとたんぱく質・脂質の数値を確認。2. 嗜好性(匂い・形)を試食させる。3. 消化状態や体重の変化を1〜2週間で観察。問題があれば獣医に相談します。
小さな工夫
トッピングや温めで食いつきを良くできますが、塩分や糖分に注意してください。
具体的なタイプの例
高カロリードライフード
100gあたり約380〜440kcalのプレミアムタイプが多く、少量で効率よくエネルギーを補えます。肉や脂肪を中心に配合したレシピが一般的で、グレインフリー(穀物不使用)や消化吸収を助ける成分を含む商品もあります。使い方は普段のフードに少量ずつ混ぜるか、食欲が落ちたときに単独で与えるとよいです。注意点は肥満や膵炎の既往がある場合は与えすぎないこと、保存は湿気を避けて密封することです。
高カロリーペースト・流動食
スプーンやシリンジで与えられるペースト状または流動タイプは、噛む力や飲み込みが弱い老犬に向きます。味付きで嗜好性が高く、水分も同時に補給できるのが利点です。与えるときは少量ずつゆっくり与え、誤嚥を防ぐために犬の頭を高めに保つなど体位に注意してください。入院・術後・食欲不振の短期補助にも使いやすく、開封後は表記の保存期間を守ります。
シニア用の関節ケア・QOL配慮フード
グルコサミンやコンドロイチン、オメガ3脂肪酸(魚油)など、関節や筋肉の維持を助ける成分を含む高エネルギーのシニア用フードがあります。たんぱく質量を適切に確保しつつ、関節ケア成分を配合することで活動性の維持につながります。継続して与えることで効果が出やすいため、まずは数週間から数か月単位で様子を見てください。サプリや薬との重複がないかは獣医師に相談しましょう。
与え方の注意点
獣医師に相談する
腎臓や心臓など持病がある場合、高たんぱく・高脂肪食は負担になります。まずは獣医師に相談してから切り替えてください。薬や治療との兼ね合いも確認します。
移行はゆっくり行う
いきなり全部を変えず、現在のフードに新しい高カロリーフードを少しずつ混ぜます。目安は1〜2週間かけて徐々に割合を増やす方法です。急な切り替えは下痢や嘔吐の原因になります。
量と回数の調整
高カロリーは少量でエネルギーを補えます。与える量は体重と体型を見て調整します。体重が増えすぎると負担になるため、計量スプーンやキッチンスケールで正確に測ってください。回数は1回で多く与えるより、少量を複数回に分ける方が消化に優しいです。
便と体重のチェック
移行中は便の形や回数、体重をこまめに記録します。軟便、下痢、急激な体重変化があれば使用量を見直し、必要なら中止して獣医師に相談してください。
食べやすさと水分補給
硬さや粒の大きさ、温めて香りを出すなど工夫して食べやすくします。水分補給も大切です。缶詰やウェットフードを混ぜて水分量を増やすと安心です。
おやつやサプリとの兼ね合い
おやつや療法食、サプリのカロリーも合算して調整します。与えすぎは肥満や消化不良の原因になります。
トラブル時の対応
嘔吐、血便、著しい元気消失が見られたらすぐに獣医師へ連絡してください。食欲が戻らない場合も早めに受診をおすすめします。