犬用フード・おやつ

老犬の腎臓病に効く食事と手作り食のポイント

はじめに

本稿の目的

本稿は、老犬の腎臓病に配慮した手作りごはんのポイントと実例を分かりやすくまとめたガイドです。低たんぱく・低リン・低ナトリウムといった基本方針や、食欲が落ちた高齢犬に向けた消化の良い食材選び、実際に作れるレシピ例、注意点までを網羅します。

誰に向けているか

腎臓病と診断された老犬を飼っている方、介護にあたり食事でできることを探している方に向けています。獣医師や看護スタッフと相談しながら読み進めてください。

使い方の目安

第2章で基本を学び、第3・4章で材料とレシピを確認します。第5章の注意点は必ず目を通してください。食事は個体差が大きいので、試す際は少量から始め、体重・排泄・元気の様子をよく観察してください。

大切なお願い

食事の変更や栄養調整は獣医師の指示を優先してください。急な切り替えは避け、必要な検査を受けながら対応してください。

腎臓病と老犬の食事管理の基本

腎臓病の犬に必要な食事のポイント

腎臓の働きが落ちると、老犬は老廃物の排出が難しくなります。基本は「低タンパク・低リン・低ナトリウム」です。タンパク質は量を控えめにし、良質なものを少量与えます。リンやナトリウムを抑えると腎臓への負担が減ります。

カロリーと消化性の確保

老犬は食欲が落ちやすいので、カロリーはしっかり確保します。消化しやすい炭水化物(ごはん、さつまいも)や良質な脂肪(少量の植物油や魚油)を使うと効率よくエネルギーを取れます。小さく刻む、柔らかく煮るなど調理で食べやすくしてください。

水分補給を重視する

腎臓病では脱水を防ぐことが大切です。水をよく飲ませる習慣をつけ、スープや煮込みで水分を多く摂らせます。缶詰や水で薄めたスープは飲水量を増やしやすいです。

ミネラル管理と補助

リン・ナトリウム・マグネシウムは控えめに。既製の腎臓病用フードを参考にし、手作りでは原材料の量を調整します。サプリは獣医と相談のうえ導入してください。

具体的な与え方と観察

1日量を数回に分けて与え、残食や嘔吐、元気の有無を観察します。体重、飲水量、尿の回数・色を記録すると変化に気づきやすいです。疑問や症状悪化があれば早めに獣医に相談してください。

腎臓病の老犬向け手作り食材例

推奨食材

  • 鶏むね肉(皮付き、ミンチ): 消化が良くたんぱく質源になります。脂肪や量は獣医と相談してください。
  • ブロッコリー・小松菜・にんじん: ビタミンや食物繊維が豊富です。柔らかく煮て刻むと食べやすくなります。
  • じゃがいも・さつまいも: エネルギー源になり、比較的リンが低めです。加熱してから与えます。
  • 小豆・ヒジキ・シイタケ: ミネラルや食物繊維を補います。量は控えめにします。
  • チアシード・雑穀類: 食感や栄養の補助に。水で戻してから使います。
  • 乾燥牡蠣・鰹節粉: 風味づけとミネラル補給に少量で効果的です。

避ける食材

  • 加工食品(ハム、ソーセージなど)や塩分・添加物の多いもの: ナトリウムや保存料が腎臓に負担をかけます。
  • 高リンの食品(例: レバー、大量の乳製品)や味付けされたスナック類

調理のポイント

  • 塩は使わず、素材の風味で調整します。短時間のゆでこぼしでカリウムを減らせます。
  • 柔らかく煮て刻む、ペーストにするなど老犬でも飲み込みやすくします。
  • 新しい食材は少量から始め、体調を観察します。定期的に獣医と栄養について相談してください。

腎臓病ケアの手作りごはんレシピ例

モデルレシピ(目安・100gあたりの栄養に合わせ調整)

材料(作りやすい分量の例)
- 鶏むね肉(皮なし)100g
- ブロッコリー 50g
- 小松菜 30g
- にんじん 30g
- じゃがいも 50g
- さつまいも 30g
- 乾燥牡蠣(粉末)小さじ1
- 鰹節粉 小さじ1
- 水 適量
栄養の目安(100gあたり):水分72.1%、たんぱく質6.6%、脂質4.3%、カルシウム16mg、リン51mg、ナトリウム105mg、マグネシウム13mg

作り方
1. 鶏肉は茹でて細かくほぐします。茹で汁は一部を残してスープにすると水分補給に役立ちます。
2. じゃがいも・さつまいもは皮をむき、やわらかくなるまで蒸すか煮ます。でんぷん質が消化を助けます。
3. 野菜は軟らかく蒸すか短時間茹で、細かく刻むかペーストにします。ブロッコリーは小房に分けて茹でてから刻むと消化しやすいです。
4. 全材料を混ぜ、乾燥牡蠣と鰹節粉で風味をつけます。塩は使わず、低ナトリウムを心がけます。

その他の簡単レシピ例
- ヘルシーパスタ:低たんぱく小麦パスタ少量+茹で鶏+野菜の細切りを和える。オリーブ油少量で消化を助けます。
- 簡単手作りご飯:鶏とじゃがいも・にんじんを柔らかく煮て、米少量と混ぜる。水分多めが食べやすいです。
- 小豆・かぼちゃごはん:小豆はよく煮て薄めにし、かぼちゃを加えて柔らかく炊く。リンを抑えるため豆は十分に水で戻し、煮汁を調整します。

調理の工夫(消化・リン・ナトリウム対策)
- 野菜は柔らかく加熱し刻むかすり潰して消化を助けます。
- リンを減らす目的では、豆類は十分に浸水・煮こぼしを行うと良いです。
- 塩の代わりに鰹節粉や乾燥牡蠣でうま味を出し、ナトリウム摂取を抑えます。

栄養補強のヒント
- 必要に応じて獣医と相談のうえ、オメガ-3(魚油)や腎臓用サプリを加えます。
- 食べムラがある場合は水分多めのペースト状にして嗜好性を高めます。

老犬・腎臓病の手作り食で注意すべき点

1) 専門家との連携を続ける

定期的に獣医師や栄養管理士に相談してください。血液検査(BUN、クレアチニン、電解質)や体重の変化を見ながら、食事の調整を行います。食欲や尿量が変わったらすぐ報告しましょう。

2) 特に注意する栄養素

  • タンパク質:質の良いものを適量与えます。量は病期により変わるため指示に従ってください。例:鶏ささみや白身魚の少量。
  • リン:制限が重要です。内臓や乳製品、卵黄はリンが高めです。
  • ナトリウム(塩分):高血圧を防ぐため控えめにします。加工食品や味付けは避けます。
  • カリウム:血中値によって補充や制限が必要です。検査で判断します。
  • 水分とカロリー:脱水と体重減少を防ぐため、風味を付けたり頻回給餌で摂取を促します。

3) 食材・調理の注意点

  • 与えてはいけない食品:玉ねぎ、ニンニク、チョコレート、ブドウ・レーズン、キシリトール入りは厳禁です。
  • 調理法:薄味でシンプルに。煮汁は風味付けに使えますが、塩や香辛料を加えないでください。食材は細かく刻むかすりつぶすと高齢犬が食べやすくなります。

4) 給餌管理と記録

毎回の量を計量し、食べた量・体重・排尿の記録を残してください。変化を早く把握できます。急に食事を大幅に変えず、少しずつ移行します。

5) 投薬やサプリとの兼ね合い

薬と手作り食の相互作用があります。サプリは獣医師の指示で使用してください。市販の腎臓用サプリも勝手に追加しないでください。

6) 緊急時のサイン

食欲の急激な低下、嘔吐、下痢、ぐったり、尿が出ない・少ない場合は早めに受診してください。

日々の観察と専門家の助言を組み合わせることで、安全で続けやすい手作り食を作れます。

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