犬用フード・おやつ

老犬の食事量と回数を見直して健康管理する方法

はじめに

本ガイドは高齢犬(老犬)の食事量と回数に関する実用的な情報を分かりやすくまとめたものです。年をとると基礎代謝や運動量が減り、消化機能も変化します。これらに配慮した食事管理は、健康寿命を伸ばし快適な毎日を支える大切な要素です。

このガイドの目的

老犬の飼い主さんが「何を」「どれだけ」「どのように」与えればよいか判断しやすくすることを目的としています。専門的な用語は最小限にし、具体例や計算の手順を使って説明します。日々の食事管理にすぐ役立つ内容を目指します。

この章で触れる内容の流れ

  • 第2章:老犬の食事量を決める基本的な考え方(代謝や活動量の変化)
  • 第3章:食事回数の目安とその理由(消化への配慮や食べやすさ)
  • 第4章:食事量の計算方法(簡単な計算式と例)
  • 第5章:食事内容・質への配慮(栄養バランスや食材選び)
  • 第6章:調整のタイミングと注意点(体重変化や食欲低下への対応)
  • 第7章:専門家や獣医師への相談の重要性(いつ相談するかの目安)
  • 第8章:まとめ(日常の管理ポイント)

読み方のポイント

まずは今の愛犬の体重や食欲、排泄の様子を記録しておくと、後の章で紹介する計算や調整が行いやすくなります。体重の変化や水を飲む量、便の状態が日々の判断材料になります。疑問や気になる症状があれば、早めに獣医師へ相談してください。

以降の章で、具体的な計算や注意点、食事の工夫を順を追ってお伝えします。どうぞ無理なく進めてください。

老犬の食事量の基本的な考え方

加齢による体の変化

老犬は運動量と基礎代謝が落ちます。その結果、若い頃と同じ量を与えると太りやすくなります。筋肉量の低下でカロリー消費が減る点を意識してください。

一般的な目安

成犬期の食事量を「8〜9割」に減らすのが目安です。年齢や個体差で調整が必要ですが、参考として以下を挙げます。
- 小型犬(約5kg):1日約200〜300kcal
- 中型犬(約10〜15kg):1日約400〜600kcal
- 大型犬(約25〜30kg):1日約800〜1000kcal

個体差に応じた調整ポイント

体重、年齢、運動量、持病で必要量は大きく変わります。たとえば、散歩が好きでよく動く老犬は少し多めに、心臓や腎臓に問題がある場合は獣医師の指示に従って控えめにします。

日常のチェック方法

体重は週に1回同じ条件で量ります。触って肋骨がわかるか、腰のくびれがあるかを確認する「ボディコンディション」を使うと調整しやすいです。

調整のコツと注意点

食事は徐々に変え、急な増減を避けます。おやつや人の食べ物のカロリーも忘れずに計算してください。水分補給をしっかり行い、変化や食欲低下が続く場合は早めに獣医師へ相談しましょう。

食事回数の目安とその理由

食事回数の目安

  • 7〜10歳頃:1日3〜4回を目安にします。朝・昼・夕の基本に、必要なら夜間に軽い1回を加えます。
  • 11歳以上:1日4〜5回が目安です。消化に負担をかけないよう、1回量を少なく回数を増やします。

回数を増やす理由

高齢になると消化機能が落ち、一度に多く食べると胃腸に負担がかかります。回数を分けると一回あたりの量が減り、消化吸収が安定します。血糖の急降下を防ぎ、エネルギーを一定に保てます。歯やあごの弱りで咀嚼が難しい犬にも向きます。

時間帯の例

  • 7〜10歳:朝7時・昼12時・夕6時(+必要なら夜9時に軽食)
  • 11歳以上:朝6:30・午前10:30・午後2:30・夕6時・夜9時(量は均等か、朝を少し多めに)

切り替えのコツと注意点

新しい回数にする時は5〜7日かけて少しずつ切り替えてください。便の状態や体重、疲れやすさを観察し、食欲不振・下痢・嘔吐が続くときは獣医師に相談します。薬を飲ませる必要がある場合は、食事回数と時間を合わせて調整します。

食事量の計算方法

基本の考え方

老犬の一日に必要なエネルギー量は2段階で求めます。まず安静時の必要量(RER)を算出し、それに生活や年齢に応じた係数を掛けて一日の必要量(DER)を出します。

計算式

  • RER=体重(kg)×30+70(kcal/日)
  • DER=RER×係数(老犬は目安1.1〜1.4)

係数は運動量や代謝、病気の有無で変わります。動きが少ない場合は低め、活動的なら高めに設定します。

給餌量(g)への換算方法

フードのエネルギー(ME)はパッケージに「100g当たりのkcal」で記載されています。計算は次の通りです。
1) DER(kcal/日)を求める
2) 給餌量(g)=DER ÷ ME(kcal/100g)×100

例:体重8kg、係数1.2、フードME=350kcal/100g
RER=8×30+70=310kcal
DER=310×1.2=372kcal
給餌量=372÷350×100=約106g/日

調整のポイント

体重や体調を週単位で確認し、増減があれば係数や給餌量を少しずつ調整します。体重計や軽量カップで正確に量り、分割して与えると消化に優しいです。病気や薬の影響がある場合は獣医師と相談してください。

食事内容・質への配慮

老犬に求められる基本

老犬は消化力が落ちるため、消化しやすく栄養が密な食事が大切です。食べムラが出やすいので、嗜好性も考慮すると良いです。

タンパク質と脂肪のバランス

筋肉量を維持するために良質なタンパク質を十分に確保します。鶏肉や魚、卵など消化の良い動物性タンパクを中心にし、脂肪はエネルギー源として適量を与えます。肥満傾向があれば脂肪を抑えてカロリー管理します。

関節や皮膚のサポート成分

グルコサミンやコンドロイチン、オメガ‑3脂肪酸は関節や被毛のケアに有効です。サプリメントや成分配合のフードを利用すると負担が減ります。

腎臓に配慮したリン管理

腎臓への負担を避けるため、リンの含有量に注意します。目安としてAAFCO基準では100gあたり0.4~1.6%が示されています。腎機能が低下している場合は獣医と相談し、低リン食を検討してください。

食材と調理の工夫

野菜は柔らかく煮て消化しやすくし、塩や香辛料は控えます。手作りする場合は栄養バランスに気をつけ、単品に偏らないようにします。

市販フードの選び方と与え方のコツ

高齢犬向けの表示があるフードや、成分表でタンパク質・脂質・リンを確認して選びます。少量を回数分けして与えると消化に優しく食べやすくなります。体重や体調の変化があれば早めに内容を見直してください。

食事量・回数を調整するタイミングと注意点

調整が必要なタイミング

  • 体重が明らかに減った・増えたとき(短期間で5%以上の変動は注意)が目安です。
  • 食欲が落ちていつもの量を残す、食べる量が日に日に減る場合。
  • 嘔吐・下痢が続く、便の様子が変わるとき。
  • 歯や口の痛み、咀嚼(そしゃく)が苦手になった様子が見られる場合。
  • 持病(腎臓病・心臓病・糖尿病など)があり投薬や治療で食事管理が必要なとき。

具体的な調整方法

  • 回数を増やす:一度に食べられないなら、朝晩2回を朝昼晩3回、さらに4回に分けます。例:1日の総量を等分して少しずつ与えます。
  • 食べやすくする:ドライフードをぬるま湯でふやかす、フードを細かく砕く、柔らかい缶詰やトッピングを少量加える。
  • 温める・香りを出す:少し温めると香りが立ち食欲が出やすくなります。
  • 少量ずつ手から与える:安心感で食べることがあります。
  • パッケージの給餌量はあくまで目安:理想体型や体重変化を見て微調整してください。

注意点・観察ポイント

  • 無理に食べさせない:嫌がるのに押しつけるとストレスになります。
  • 急な変更は避ける:急に量や内容を大きく変えると消化不良を招きます。段階的に行いましょう。
  • おやつの量に注意:カロリー過多になりやすいので総摂取量に含めて計算します。
  • 口内の異常や痛みが疑われる場合は柔らかくし、早めに診てもらってください。

受診の目安

  • 48時間以上ほとんど食べない、続けて嘔吐や血便が出る、ぐったりしている場合は早めに獣医師へ相談してください。

日々の体重と食欲を記録すると変化に気づきやすくなります。家族で観察点を共有し、無理のない調整を心がけてください。

専門家や獣医師への相談の重要性

なぜ相談が大切か

老犬は体力や代謝が変わり、食事での対応が微妙に変わります。自己判断で急に量を増やしたり減らしたりすると、体調悪化や栄養不足につながる可能性があります。専門家の診察や栄養アドバイスを受けることで、安全に最適化できます。

相談が必要なタイミング

  • 食欲が急に落ちた、または著しく増えたとき
  • 体重が短期間で増減したとき(例:1〜2週間で5%以上)
  • 嘔吐・下痢・便の異常が続くとき
  • 持病(腎臓病、糖尿病、心疾患など)があるとき
  • 新しい薬を始める・フードを切り替えるとき
    これらは早めの受診が望ましいサインです。

相談で確認しておきたいこと

  • 適切な1日の摂取カロリーと回数
  • 注意すべき食品やおやつの量・頻度
  • 持病に合わせた食事の選び方(具体的な商品例を示してもらうと安心です)
  • 体重管理の目標と測定頻度
  • 必要な検査(血液検査・尿検査など)とその理由

診察時の準備(持参するとスムーズです)

  • 現在食べているフード名と1回ごとの量・回数
  • おやつやトッピングの内容と量
  • 直近の体重と体重変化のメモ
  • 便の状態や嘔吐の頻度、写真があると説明しやすい
  • 服薬中の薬の名前と投薬状況

専門家の種類と役割

  • かかりつけ獣医師:全体的な健康チェックと治療計画を立てます。まず相談する窓口です。
  • ペット栄養管理士(または動物栄養学の専門家):食事の具体的な組み立てや療法食の提案をします。獣医師と連携することが多いです。
  • 獣医内科医や歯科医:持病や咀嚼・歯の問題がある場合に詳しい診断と対応をします。

相談後のフォローの仕方

受診後は指示された食事・回数を続け、1〜2週間は食事記録をつけます。変化が見られたら早めに報告し、勝手な判断で急に戻したりしないでください。小さな調整は獣医と相談しながら行うと安全です。

まとめ・老犬の食事管理のポイント

はじめに

老犬の食事は量だけでなく回数や質を合わせて整えることが大切です。ここでは毎日の実践に役立つポイントをわかりやすくまとめます。

基本の目安

  • 食事量:成犬期の8〜9割を目安に、体重や体調に応じて減らしたり戻したりします。
  • 回数:1日3〜5回に分けて消化負担を軽くします。
  • 量配分:1回量を少なめにし、回数で総量を補うと消化が安定します。

日々のチェックポイント

  • 体重:週に1回同じ条件で測ります。
  • 排せつ:便の硬さや回数を観察します。
  • 食欲・元気:急な変化があれば記録しておきます。

与え方と工夫

  • 柔らかくする、少し温めると食べやすくなります。
  • 小さく刻む・ふやかすことで誤飲や消化不良を防ぎます。
  • 静かな場所で決まった時間に与えると安心します。

食事内容の注意点

  • 消化に良いタンパク質を中心に、脂肪は控えめに。
  • 必要なビタミン・ミネラルはバランス良く。
  • サプリや特別食は獣医師と相談して使います。

調整と相談の目安

  • 体重が大きく変わる、食欲が24〜48時間で戻らない、嘔吐・下痢が続く場合は早めに獣医師へご相談ください。

最後に、無理をせず愛犬の様子を優先して調整してください。小さな変化に気づくことが、健康長寿につながります。

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