目次
はじめに
犬の肝臓がんと向き合うために
「愛犬が肝臓がんと診断された」と聞くと、不安や戸惑いが大きいでしょう。本記事は、食事療法を中心に、日々のケアで気をつけたいポイントを分かりやすくまとめました。獣医師と相談しながら実践できる内容を目指しています。
この記事で分かること
・肝臓がんの犬に推奨される食事の基本的な考え方
・糖質やタンパク質、脂質のバランスについての具体的な指針
・オメガ3やBCAAなど有用な栄養素と、避けたい成分
・手作り食の注意点と市販療法食の選び方
・食事療法以外の生活管理ポイント
大切にしてほしいこと
食事は治療の一部です。体調や検査結果で適切な内容は変わります。自己判断で急に制限を始めず、まず獣医師と相談してください。小さな変化にも気づくことが、愛犬のQOL向上につながります。
読み進め方のアドバイス
各章は具体例を交えて説明します。まずは次章で基本方針を確認し、愛犬の状況に合わせて参考にしてください。
肝臓がんの犬に推奨される食事の基本方針
基本方針
肝臓がんの犬には糖質を控えた食事が基本です。がん細胞は糖(ブドウ糖)を使って増えるため、食事中の炭水化物を減らすことで進行を抑える効果が期待されます。同時に、体力維持のために適度な良質タンパク質と十分なエネルギーを確保します。
具体的な食べ方
- 炭水化物を減らす:白米やパン、パスタなどの量を減らし、代わりに低糖の野菜(葉物、ブロッコリー、カリフラワーなど)を増やします。
- タンパク質は適量を:鶏胸肉、白身魚、卵など消化しやすい良質タンパクを中心に与えます。肝機能が悪い場合は獣医師の指示で量を調整します。
- 脂質の工夫:中鎖脂肪酸(MCT)や良質なオメガ3脂肪酸はエネルギー源かつ炎症抑制に役立ちます。
- 給餌回数:1回に多く与えず、少量を複数回に分けて消化に負担をかけないようにします。
注意点
肝機能が著しく低下するとアンモニア増加のため低タンパク食が必要になる場合があります。人間用の味付け食品、糖分の多いおやつ、加工食品は避けてください。変更は必ず獣医師と相談して進めましょう。
推奨される栄養素と避けたい成分
肝臓がんの犬にとって、食事は体調維持と症状の悪化予防に大きく関わります。ここでは具体的に摂りたい栄養素と避けたい成分をわかりやすく説明します。
オメガ3脂肪酸(積極的に)
炎症を抑え、食欲や体重の維持に役立ちます。青魚由来のEPA・DHAを含む魚油や、少量の亜麻仁油などが例です。市販のサプリや療法食でも補えます。
BCAA(分岐鎖アミノ酸)
肝臓が弱ると必要量が増えます。BCAAはアンモニアの代謝を助け、肝性脳症の予防や筋肉の維持に有効です。療法食やサプリでの補充が現実的です。
塩分(場合により制限)
浮腫や腹水がある場合は塩分を控えます。症状がなければ厳格な制限は不要ですが、加工食品や市販おやつの塩分は注意してください。
銅と亜鉛の管理
銅の過剰は肝臓に負担をかけます。銅を多く含む食品やサプリは医師と相談してください。亜鉛は銅の吸収を抑える働きがあり、補給が推奨される場合があります。
避けたい添加物・質の悪い油
人工添加物や酸化した油(古い植物油や揚げ物)は避けます。保存が悪い食材は肝臓に負担をかけやすいです。新鮮で加工の少ない食材を心がけましょう。
日々の食事は主治医と相談して、必要な栄養を無理なく補うことが大切です。
犬の肝臓がんと食事療法の具体例
具体的な献立例(小型〜中型犬向け)
- 朝:ささみ(茹で)30–50g、かぼちゃの裏ごし30g、白米または雑穀ごはん20–30g
- 昼:白身魚(蒸し)30–50g、豆腐30g、にんじんのすりおろし15g
- 夜:卵の温泉卵1個(全卵か黄身中心)、青菜少量(煮て刻む)、少量のオリーブ油または亜麻仁油小さじ1/4
※体重や検査値に合わせて獣医師と量は調整してください。
簡単レシピ例
1) ささみとかぼちゃのペースト:ささみを茹で、かぼちゃを柔らかく蒸す。両方を混ぜて温かいうちにつぶす。消化が良く食べやすいです。
2) 白身魚と豆腐のあんかけ:白身魚を蒸してほぐし、絹ごし豆腐を短時間温める。野菜のすりおろし(にんじん、りんご)でとろみをつけます。
脂と油の使い方
肝臓に負担をかけないため脂肪は控えめにしますが、オメガ3は重要です。サーモンやイワシを週1回ほど取り入れるか、亜麻仁油・エゴマ油を冷ました料理に少量(小さじ1/4〜1/2)加えると良いです。加熱で効果が落ちるため、仕上げに混ぜます。
水溶性食物繊維の取り入れ方
かぼちゃ、にんじん、リンゴなどは水溶性食物繊維が多く、腸でのアンモニア吸収を抑えます。生ではなく煮たり蒸して柔らかくし、小さく刻んだり裏ごしして与えてください。
与え方のポイント
- 一度に大量に与えず、少量を回数多めに分けると消化が楽です。
- 生食は避け、しっかり加熱して細菌リスクを減らしてください。
- 栄養バランスや投薬との相互作用は獣医師と確認します。
手作り食の注意点と療法食の選び方
手作り食は愛犬に合った食事を作れる利点がありますが、肝臓がんや重い肝機能障害では栄養バランスの崩れが体調悪化につながることがあります。必ず獣医師やペット栄養士と相談してから開始してください。
- 手作り食の注意点
- タンパク質は『質』を重視します。消化の良い鶏むね肉や白身魚(加熱する)などを選び、獣医の指示で量を調整します。肝臓(レバー)や魚介類の多量摂取は銅過剰につながるため避けます。
- ビタミンやミネラル不足を防ぐため、獣医推奨のサプリを使用してください。特にビタミンB群やE、必要ならSAMeなどが検討されます。
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衛生面に注意し、生肉は避けて十分に加熱。保存は小分けで冷蔵・冷凍管理します。
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療法食の選び方
- パッケージで「肝臓サポート」「低銅」「低ナトリウム」などの表示を確認し、添加物が少ない信頼できるメーカーを選びます。
- 療法食にも種類があるため、血液検査や症状に合わせて獣医と相談しながら最適な製品を選んでください。
移行は徐々に行い、体重・食欲・便の状態をこまめに観察しましょう。異変があればすぐに獣医に連絡してください。
食事療法以外の管理ポイント
水分管理
新鮮な水をいつでも飲めるように置いてください。脱水は元気低下や治療効果の悪化につながります。ウェットフードやぬるま湯でふやかしたフードを取り入れると水分摂取が増えます。
体重と体調のチェック
体重は週に1回同じ条件で測ると変化に気づきやすくなります。急激な増減(目安としては体重の5〜10%程度)は獣医に相談してください。体型を見て触ることで筋肉量の低下や脂肪の増減も確認します。
投薬・通院の遵守
処方された薬は決められた時間に与えてください。副作用や飲まない場合は自己判断で中断せず、必ず獣医と相談します。定期検査は計画通り受け、血液検査や画像検査の結果をもとに治療方針を調整します。
日常ケアと環境
無理のない範囲で軽い散歩や遊びを続け、ストレスがかからない静かな場所を用意します。口腔ケアや被毛の手入れも免疫や食欲維持に役立ちます。
観察すべきサイン
食欲低下、嘔吐、下痢、黄疸(歯茎や皮膚の黄ばみ)、過度の疲労、呼吸困難などがあれば早めに受診してください。
記録とコミュニケーション
食事量・水分量・排便・嘔吐・行動の変化を記録して獣医と共有すると、最適なケアにつながります。サプリや人用の薬は自己判断で与えず、必ず獣医に相談してください。