はじめに
目的
この文書は、犬が下痢をしたときに飼い主さんが落ち着いて対応できるよう、消化に優しい食べ物や食事管理の基本をわかりやすくまとめたガイドです。家庭でできる対応と、獣医師に相談すべき目安を両方紹介します。
このガイドで学べること
- 下痢の原因になりやすい食品の理解
- 軽度の下痢時に与える安全な食事例
- 水分補給と療法食の役割
- 回復後の段階的な食事戻し方と再発予防のコツ
対象読者
成犬や子犬の飼い主さん、初めて下痢に対応する方を想定しています。専門的な治療が必要な場合は獣医師の指示に従ってください。
緊急時の目安(獣医師に相談してください)
- 血便や頻繁な嘔吐があるとき
- 元気がなくぐったりしているとき
- 高熱や水分を受け付けないとき
これらの場合は早めに受診してください。
読み方のおすすめ
まずは第2章で原因を理解し、第3章と第4章で具体的な食事と水分管理を確認すると実践しやすいです。
下痢の原因となる食べ物の理解
油っこい食べ物
揚げ物やベーコン、ソーセージ、脂身の多い肉などは脂肪分が高く、犬の消化器に負担をかけます。少量でも消化不良や下痢を起こすことがあるため与えない方が安全です。
乳製品
牛乳やヨーグルト、チーズなどは犬が乳糖を分解しにくい場合があり、下痢や軟便の原因になります。ヨーグルトの中には低乳糖のものもありますが、初めて与えるときは慎重に様子を見てください。
香辛料や刺激の強い料理
カレーや唐辛子、わさびなどの辛味や香辛料は胃腸を刺激して下痢を引き起こします。味付けされた人間の料理は塩分や調味料が多く、犬には合いません。
人間の調味料・食材で特に注意するもの
玉ねぎ・にんにくは少量でも赤血球に影響するため危険です。チョコレート、ぶどう・レーズン、キシリトール(甘味料)は中毒や重い症状を引き起こす可能性があり、下痢の原因にもなります。
食べ慣れないもの・急な食事変更
普段と違う食べ物や急にフードを変えることでも胃腸が混乱し、下痢を起こしやすくなります。新しい食事は少量から徐々に慣らしてください。
与えたときの注意点
少量でも異変が出たらすぐに与えるのをやめ、吐き気や血便、ぐったりした様子がある場合は獣医に相談してください。日常的に避けるべき食品を知っておくと、トラブルを未然に防げます。
下痢の時に与えるべき食事
基本の考え方
軽度の下痢では、普段の1/3〜1/2程度に食事量を減らし、消化に優しいものを少量ずつ与えます。完全に絶食する必要はほとんどありませんが、嘔吐やぐったりがあるときは獣医に相談してください。
食事量と回数
少量を回数多めに与えます(1回量を少なくして、1日に3〜4回)。急に量を戻すと再び下痢しやすいので、徐々に通常量へ戻します。
市販で推奨されるもの
- お湯でふやかしたドライフード:消化がよくなります。温めると食べやすくなります。
- 胃腸ケア用の療法食:獣医推奨の製品を使うと安心です。慢性やアレルギー疑いでは加水分解タンパクや低刺激の処方食が適します。
手作りのやさしい食事例
- おかゆ(ご飯1に水3〜4の割合で柔らかく煮る)
- 白身魚のゆで身(骨を取り、塩や調味料は使わない)
- ささみのゆでたもの(脂を取り、細かく裂く)
これらを単独で与すか、少量ずつ組み合わせます。冷ましてから与えてください。
慢性化や重症の場合の対応
慢性の下痢や腸疾患が疑われるときは、加水分解タンパクやアレルギー対応の療法食を獣医と相談の上で導入します。長引く下痢、血便、高熱、脱水が見られる場合は早めに受診してください。
与えてはいけないもの
乳製品、脂っこい食事、生肉や生魚、香辛料や味付けのある食品は避けます。人用の下痢止めは与えないでください。
回復への切り替え方
症状が落ち着いたら3〜5日かけて通常食に戻します。少量ずつ比率を増やして、様子を見ながら進めてください。
水分補給の重要性
なぜ水分補給が大切か
下痢で体から水分とミネラル(塩分、カリウムなど)が失われます。体内の水分が減ると、だるさやめまい、尿量減少などの脱水症状を招きます。特に子どもや高齢者は症状が急に悪化しやすいため、こまめな補給が重要です。
どの飲み物を選ぶか
- 新鮮な水:まずは常に用意しておき、少しずつ飲ませます。
- 経口補水液(ORS):脱水が疑われるときに最適です。市販品をそのまま使えます。
- スープ・味噌汁:塩分と水分を同時に補えます。薄めて温かくして与えると飲みやすいです。
- スポーツドリンク:薄める(1:1程度)と電解質バランスが良くなります。
- 避けるもの:カフェイン飲料、アルコール、糖分が多すぎるジュースは控えます。
飲ませ方のコツ
少量を頻回に与えると吸収しやすく、吐き気が出にくいです。子どもや吐き気がある場合はティースプーンやストローで数十mlずつ与えます。冷たすぎると刺激になるので常温〜ぬるま湯が適します。
飲めない・症状が重いときの対処
嘔吐が続く、意識がもうろうとする、極端に尿が出ない、顔色が悪い場合は早めに医療機関を受診してください。軽度でも不安があれば相談をおすすめします。
下痢が治った後の食事管理
序文
下痢が治まっても腸はまだ敏感です。数日かけて徐々に普段の食事に戻すと再発を防げます。元気でもおやつや人間の食べ物は控え、シンプルな食事を続けましょう。
段階的な戻し方(例)
- 24〜48時間は消化に良いフードを続けます(低脂肪で温かいもの)。
- その後3〜4日かけて通常のドライフードに1日ごとに10〜25%ずつ混ぜて増やします。急に全部替えないでください。
継続すべき食品
白米や茹でた鶏胸肉、かぼちゃのような繊維が穏やかな野菜、低脂肪のプレーンヨーグルト(少量)をおすすめします。水分補給も忘れずに。
避けるべき食品
油っぽいもの、香辛料、乳製品の多量摂取、生肉や未調理の食材、甘いおやつは避けてください。人間の食べ物は特に危険です。
フード変更のコツ
ラベルを見て成分が大きく変わらないものを選びます。切り替えは低ストレスで行い、食欲や便の状態を毎日観察してください。
注意点(受診の目安)
血便、嘔吐が続く、脱水や元気消失があれば早めに受診してください。改善が見られない場合も獣医に相談しましょう。
再発を防ぐための日常的な食事管理
日常の基本ルール
- 主原料が鶏肉や牛肉など動物性たんぱくの良質なフードを選んでください。消化に優れた穀物またはグレインフリー製品を用途に合わせて選びます。
シニア犬の配慮
- シニアは消化力が落ちます。低脂肪で消化吸収の良いフードを選び、必要なら獣医師と相談してカロリー調整します。
腸内環境を整える補助
- 乳酸菌やビフィズス菌、消化酵素、バイオジェニックス(発酵成分)を含むサプリが有効です。商品は成分表示を見て、少量から試してください。
フードの切り替え方法
- 切り替えは7〜10日かけて徐々に行います。割合を少しずつ変え、便の状態を観察してください。
日常の注意点
- テーブルの食べ物を与えない、急なおやつや新しいサプリは少量から始める、食べ過ぎを防ぐために決まった量と時間で与えることを習慣にしてください。保存はパッケージの指示に従い清潔に保ちます。
異変があれば
- 便に血が混じる、何日も下痢が続く、元気がない場合は早めに獣医師に相談してください。定期的な観察が再発防止に役立ちます。