犬用フード・おやつ

老犬が吐いたあとに安心できる食事の与え方と注意点

はじめに

この記事の目的

この章では、老犬が嘔吐した後の食事管理について、まず全体の見通しをお伝えします。飼い主さんが落ち着いて対応できるよう、基本的な考え方と本記事の進め方を分かりやすく説明します。

対象となる犬

ここでいう「老犬」は、年齢や犬種で差はありますが、一般に体力や消化機能が若い頃より落ちてきた犬を指します。例えば中型犬で7歳以上、小型犬で8歳前後を目安にお考えください。個体差が大きい点に注意します。

なぜ特に注意が必要か

老犬は脱水や低血糖、持病の悪化などが起きやすく、嘔吐後の無理な食事再開が症状を悪化させることがあります。ゆっくり観察し、慎重に進めることが大切です。

本記事の構成

第2章で初期対応、第3章で食事再開のタイミングと与え方、第4章でおすすめの食事内容、第5章で避けるべきもの、第6章で食事以外の注意点を順に説明します。具体的な例や簡単な手順を多く示しますので、日常の判断に役立ててください。

老犬が吐いた後の基本的な対応

嘔吐直後の一般原則

嘔吐直後は胃腸を休ませることを優先します。一般的には半日〜1日の絶食・絶水を推奨しますが、老犬は体力が落ちているため個別に判断します。ぐったりしている場合や呼吸が荒い場合はすぐに動物病院へ連れて行ってください。

すぐに受診すべきサイン

  • 繰り返し嘔吐する
  • 嘔吐物に血が混じる、黒っぽい色がある
  • 意識が朦朧としている、立てない
  • 発熱・下痢を伴う
    これらがあるときは早めに受診します。

安静と絶食の目安(老犬向け)

老犬では絶食時間を短めに設定することが多いです。嘔吐が1回で元気があるなら4〜8時間の絶食で様子を見ます。嘔吐を繰り返す、元気がない場合は絶食時間を延ばさず獣医に相談してください。

水分補給の具体的方法

少量ずつ与えます。目安は小型犬で5〜10ml、成犬で10〜30ml、大型犬で30〜50mlを10〜15分ごとに与え、吐かないか確認します。市販の経口補水液を薄めて使うと吸収が良くなります。

観察ポイントと記録

嘔吐の時間・回数・内容(色・匂い・食べ物の有無)・普段と違う行動を記録します。これを獣医に伝えると診断が早くなります。

家での応急処置で避けること

人用の鎮痛薬・制吐薬を与えないでください。牛乳や油っこいものも避けます。無理に水を大量に与えると誤嚥や再嘔吐を招きます。

食事再開のタイミングと与え方

いつから与えるか

嘔吐が完全に止まり、落ち着いていることを確認してから再開します。普段の元気や呼吸、ぐったりしていないかを観察してください。老犬は体力が落ちやすいので、心配な場合は獣医に相談してから始めます。

最初の量と回数

初日は普段の約25%程度の少量を目安にします。1回量を少なくして、1日3〜4回に分けて与えます。胃に負担をかけないよう短時間に大量を与えないでください。

段階的に戻す方法

2〜3日目に様子が良ければ、1回ごとに少しずつ量を増やします。目安は1日ごとに全体量を20〜30%ずつ増やし、4〜5日目に通常食量に戻します。再び嘔吐や食欲不振、元気消失があれば速やかに中止し獣医に連絡してください。

水分の与え方

少量ずつ頻回に水を与えます。水を一度に大量に飲ませると嘔吐につながるため、こまめに少しずつ与えてください。必要なら電解質飲料(犬用)を獣医に相談して使います。

老犬特有の注意点

老犬は脱水や低血糖になりやすいので、絶食・絶水の長期化を避けます。食べられない様子が続く場合は点滴などの治療が必要です。普段の薬がある場合は獣医に指示を仰ぎ、勝手にやめないようにしてください。

吐いた後におすすめの食事内容

推奨する食材

  • 皮・骨を除いた茹で鶏むね肉(脂肪を取り除く)。皮があると消化に負担がかかります。
  • 白ごはん(やわらかく炊いたもの)。消化が良くエネルギー源になります。
  • 加熱したサツマイモ(つぶして与える)。繊維がやさしくお腹を助けます。
  • ふやかしたドッグフード(ぬるま湯で戻す)。普段のフードを急に変えない工夫です。
  • 獣医師処方の消化器用療法食(必要な場合)。症状が重いときに有効です。

手作り食の目安(比率と調理)

  • 炭水化物:タンパク質をおおよそ2:1の割合にします(例:ごはん120gに鶏むね肉60g程度)。
  • 味付けはしないでください。塩・油・調味料は与えないでください。
  • 食材は細かく刻むか、ペースト状にすると消化しやすくなります。

与え方のポイント

  • 最初は少量から、様子を見ながら数回に分けて与えます。急に大量に与えないでください。
  • 温度は人肌程度のぬるさが望ましいです。冷たすぎず熱すぎないようにします。
  • 水分を多めにしておくと吐き戻し後の脱水予防になります。

注意点(こんな時は与えない)

  • 血が混じる、元気がない、何度も吐く場合は直ちに獣医師に相談してください。症状が続くときは自己判断で長期間の手作り食は避けてください。

吐いた後に避けたい食べ物・注意点

避けたい食べ物

吐いた直後は消化に負担がかかるものを避けます。脂っこい料理(揚げ物、ベーコンなど)、味付けの濃い人間用の食品(塩分や香辛料の多いもの)は控えてください。乳製品(牛乳・チーズ)は下痢やさらに嘔吐を招くことがあります。チョコレート、ブドウ・レーズン、ネギ類、キシリトール含有の甘味料は犬に有害なので絶対に与えないでください。

急に元のフードに戻さない理由

急にいつものフードを与えると、胃腸に刺激を与えて再び吐く恐れがあります。消化器が落ち着くまでは消化に良いもので段階的に戻すことが大切です。

段階的な切り替えの例

1日目:絶食後、少量のぬるま湯で薄めた消化の良いフードや茹でた鶏胸肉と白ご飯などを少量ずつ(小型犬ならティースプーン1〜2杯から)。
2日目:回数は同じで量を少し増やす。
3日目以降:徐々に通常のフード比率を上げ、数日かけて完全に戻す。

与えるときの注意点

  • 温度は冷たすぎず熱すぎないようにします。ぬるめが安全です。
  • 食事は小分けにして回数を増やします。一度に多く与えないでください。
  • おやつや人間の食品は絶対に与えないでください。

症状が続く場合

吐き止まらない、元気がなく食事もとらない、血が混じるなどがあれば、自己判断せず早めに獣医師に相談してください。緊急を要する場合があります。

食事管理以外のポイント

空腹時間を短くする

老犬は長い空腹時間で胃液が逆流しやすく、吐き気を起こすことがあります。食事と食事の間に少量のおやつやごはんを与えて空腹をつくらないようにします。具体例としては、茹でた鶏胸肉の小片、白ごはん小さじ1〜2、消化にやさしい犬用のウェットフードを少量などです。量はいつもの1回分の半分以下を目安にします。

水分補給の工夫

一度に大量に飲ませると吐き戻すことがあるため、少量を頻回に与えます。器を数か所に置く、ぬるま湯にする、ウェットフードで水分を補うなど工夫します。脱水が疑われる場合は獣医に相談します。

環境管理とストレス軽減

静かで落ち着ける場所を用意し、過度な刺激を避けます。散歩は短めにし、無理に運動させないでください。体が冷えないようにブランケットなどで温めると楽になることがあります。

中毒や誤飲の予防

老犬は知らずに食べてしまうことがあります。ゴミ箱や薬、危険な植物へのアクセスを防ぎ、飲み込める小物を片付けます。誤飲が疑われる場合は内容物を確認し、すぐに獣医に連絡します。

観察と記録を習慣にする

嘔吐の回数、時間、吐いたものの色や匂い、同時の症状(下痢、ぐったり、発熱など)を記録しておくと診察時に役立ちます。食べたものと量もメモしておくと原因が絞りやすくなります。

受診の目安と日常ケア

吐き気が繰り返す、血が混ざる、飲み食いできない、元気が急に落ちる、体重が減るなどは早めに受診してください。人用の薬は与えないでください。療法食やサプリメントの導入は必ず獣医と相談します。歯のトラブルや慢性疾患が原因になることがあるため、定期検診で早めに対処しましょう。

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